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【第3部】最強転生者はもふもふスローライフにしがみつく!

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【第3部】最強転生者はもふもふスローライフにしがみつく!

24 - 【第2章】3-18. 丁寧で穏やかだが何を考えているか分からない(2/3)

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2023年10月01日

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場が一瞬にして凍る。ムツキは驚いた顔をしながら、ほかの猫や犬たちとともに猫のもとへと駆け寄る。ニドは表情を変えていないが、舌をチロチロと出して、少しばかり高みの見物といったところだ。


「フシャ! フシューッ!」


 猫に踏まれた毒蛇は一度猫から離れた後に声を上げながら、鎌首をもたげて威嚇を始める。


「ニャッ!」

「バウッ!」


 ほかの猫や犬が鳴いて、威嚇に応戦すると、ほかの毒蛇たちまでも一斉に鎌首を持ち上げ、四方八方からムツキたちを取り囲むように集まってくる。


 猫や犬たちも応戦体勢に入ったが、無数の毒蛇たち相手では分が悪いと気付いていた。


「シャアーッ」

「シャアーッ」


 威嚇する毒蛇たちの牙から毒が滴り落ちる。この毒は触れるだけでも危険で、その牙で噛まれてしまえば、猫や犬などはひとたまりもない。


「待て!」

「やめるのだ! 同胞たち!」


 ムツキが猫や犬を止める言葉を発すると同時に、ニドは頃合いと見たか、全く同じタイミングで毒蛇たちに停止命令を出す。


「ニャッ……」

「くぅーん……」

「フシュ……」


 ムツキとニドが同時に諫めたことで、周りの猫、犬や毒蛇たちは一斉に体勢を普通にして臨戦態勢を解いた。


「おっと……うっかり、大きな声が出てしまった。私たちの同胞は多いから、うっかり、声を張り上げてしまう。そう、うっかり、とね」


 洞窟いっぱいに響いたムツキとニドの声はおそらく洞窟内にいるケット、クー、アル、そのほかの妖精たちにも聞こえているだろう。そうなると、彼らが急ぎ気味に駆けてくることが予想される。


「すまなかった!」


 ムツキは彼らに迷惑を掛けるわけにはいかないと思い、事態の収拾を図る。


「本当にすまない。大事な仲間を傷付けられて怒るのは当たり前だと思う」


 ニドはそのムツキの言葉に首をゆっくりと横に振った。


「……心優しい同胞たちよ……ケガをした同胞のためを思っているのだろうが、死んだならともかく、ケガなら多少の我慢は必要だ、そう思わないか? 何故なら、ムツキ様に逆らえば、我らなぞ、その得意げに見せつけている毒牙など無意味に、ただただ皆殺しになるだけだぞ……おぉ……怖い怖い……。私はしぶといから皆殺しの最後の方まで生きているだろう。その間に、同胞たちが殴打され、切り裂かれ、引き千切られ、潰され、弄ばれ、踏み躙られ、悪態や暴言を吐かれ、そうやって死にゆく姿なぞ、私は見たくない……」


 ニドの回りくどくも露骨なまでの非難の言葉にさすがに思うところがあったようで、ムツキはニドを真っ直ぐに見つめて、口を開いた。


「ちょっと待ってくれ! その言い方はひどくないか? 俺はそんなことはしないぞ!」


「それは、それは……ムツキ様に失礼なことを申し上げました。どうも……嫌われ者の悲観というものが拭えぬようでしてねえ……いやはや、困ったもので……」


 ムツキの感情の発露に、ニドは特に興味がない。ニドはただ淡々と謝り、同情を誘うわけでもない無感情のような雰囲気で言葉を繋げる。


 ムツキにはそのニドの無感情な物言いの奥底に何が隠れているのかが読めなかった。


「そんなに自分たちを蔑むことはない。みんなも俺にとって大事な仲間だ。それと、今回は俺がきちんと彼らを見てやれていなかったから、俺の監督不行き届きだ。たしか君だったな、大丈夫か、【ヒーリング】。悪かった」


「ふしゅ……」


「おやおや、よかった、よかった。同胞のケガはすっかり治ったようだ。ありがとうございます、ムツキ様」


 ニドは元気そうに岩の陰へと消えていく毒蛇を見て、そのような言葉を吐いた。


「ほかに何かしてやれることはないか?」


「もしや、罪滅ぼし……のつもりですかねえ」


 ニドは嬉しそうな笑顔を見せる。しかし、その笑顔でさえ、どこか表面にそれを貼り付けただけの違和感がある。


「そういう類のものだ。もちろん、何でもとは言わないけどな。常識の範囲内で頼む」


「非常識な力を持っているムツキ様が常識と言うのは中々に面白いですねえ」


「……なんでそんなことを言うんだ。そんなに煽らないでくれ、悲しくなってしまう」


 ニドは少し考えた後に、ムツキに予想外の言葉を放つ。


「失礼、失礼。……それでは最近、面白かったことや悲しかったこと、ムツキ様の身の回りで起きたことをお聞かせください」


「へ? そんなことでいいのか?」


「良いですとも、良いですとも……。我ら、特に、この私めは外に出るのも憚れる存在。外の情報源はお喋りリスのラタくらいしかおりませんからな」


 その言葉にムツキは少し肩透かしを食らいつつも肯いて、口を開いて声を出し始めた。

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