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sy side
まだほんのりと寒さの残る、三月の終わり。
春の気配は確かに近づいているはずなのに、頬を撫でる風はどこか冷たくて、指先にわずかな震えを残していく。
公園のベンチへと腰を下ろし、俺はただぼんやりと前を見つめていた。
視界に広がる景色を認識しているようで、どこか現実感が薄く、思考はふわふわと浮いたままだ。
隣には、愛しの旦那が座っている。
その綺麗なエメラルドグリーンの瞳が、柔らかな陽の光を受けて、きらきらと宝石のように煌めいていた。
けれど――その視線はどこか遠くを見つめているようで、今この瞬間にいながらも、別の何かを見ているように思えた。
――彼は、無心に前を見つめている。
その彼の視線の先には、はしゃぎ回る子どもたちと、その様子を愛おしそうに見守る親の姿があった。
遊具の周りでは、甲高い笑い声が弾けていて、転びそうになればすぐに駆け寄る親の姿がある。
そんな当たり前で、でもかけがえのない光景が、そこには広がっていた。
仲睦まじい親子が、公園の遊具で楽しそうに遊んでいる。
それを見つめる彼の瞳は――ほんの少しだけ、羨ましそうに揺れていた。
その目を見ていると、親子の楽しそうな声や無邪気な姿が、まるで鋭い棘のように俺の心へと突き刺さる。
俺は、母親になれる自信がない__。
産まれたその子を、自分自身よりも大切だと思える自信がない。
何よりも、その存在を心の底から愛おしいと思える自信が――ないのだ。
sy『fu………』
小さな声で囁きながら、自身より少し高い肩に頭を預ける。
fu『ん?…どうした?』
柔らかい声が降りてくる。
彼は拒むことなく、頭を預けたままにしてくれる。
fu『珍しいね』
ベンチに置いていた手に優しく触れられる。
自身より一回り大きくその男らしく骨ばった手が、甲をさする。
二人の時間が心地良い。
sy『甘えたくなった…』
嘘じゃない。
俺はいつでもこの大好きな彼に甘えたい。
――けれど同時に、その甘えん坊な自分の性格が、母親になる自信を少しずつ削っていくのも分かっていた。
fu『か~わい…』
くすっと笑いながら、背中に腕を回される。
そのまま引き寄せられて、まるで壊れ物でも扱うかのように優しく、けれど存分に甘やかされる。
そんなことをされながら、俺はゆっくりと視線を前へと戻した。
sy(子ども…か、、)
俺がこんなに子どものことを意識し始めたのはほんの最近の話だった。
――そのきっかけは、
kzとrmの間に第一子が誕生したこと。
昔から俺たちはとても仲が良く、 保育園から高校まで、ずっと一緒だった。
だからこそ、恋に発展するのにもそう時間はかからなかった。
――約1年前
kzrmからの妊娠報告を受けた時、心底驚いたことを覚えている。
でも、それ以上に嬉しかった。
その時点ではまだ、俺もfuも子どものことを意識していなかった。
――kzとrmの赤ちゃんを見に家へ行った日。
玄関を通って、リビングに行くと大層なベビーベッドが置いてあった。
その中には、小さくkzとrmによく似た可愛らしい赤ちゃんが眠っていた。
fu『かわよ…めっちゃお前らに似てんじゃん』
kz『まあ、俺たちの子だからなw』
fuは、その赤ちゃんを心底羨ましそうな目で見つめる。
エメラルドグリーンの瞳が揺れる。
ばぶ『ふぇ…ッ、、え…』
rm『あ、fuが泣かした〜』
いたずらっ子のような笑顔で、rmがそうfuをからかう。
fu『えぇ?!w』
からかわれた彼は、申し訳なさそうな…驚いたような表情で笑う。
rm『そろそろ、ミルクかな。fuあげてみる?』
fu『え!…いいの?!』
ぱっと満面の笑顔が咲き、やる気満々に腕を腹辺まで持ち上げる。
rmがベビーベッドから出すように赤ちゃんを優しく抱き上げる。
そのrmの顔は、しっかりと母親の顔をしていた。
rm『落とすなよ?…fu』
そう言いながら、ソファに腰を下ろしたfuに赤ちゃんを受け渡す。
fu『落とさねーよ』
いつものおちゃらけフェイスではなく、真剣な大人の男の表情。
そんな表情に胸が少しドキッとする。
ふにゃふにゃとfuの腕で動く小さな赤ちゃん。
fuは、片手でしっかりと抑えながらもう片方の手で赤ちゃんの小さな手に優しく触れる。
fu『やべぇ…かわいい。指握ってきた…っ』
人差し指を握る小さな手。
fuは愛おしそうに、また羨ましそうな目を向け微笑む。
rm『うおー、パパみたいじゃん』
真剣にfuを見つめながら、そう言う。
kz『パパは俺ね?』
すると、kzが不貞腐れたような表情で後ろからrmを抱き締める。
仲睦まじい夫夫とその間に産まれた天使。
俺は「いいな」と思えなかった。
そこにあったのは、大きな不安と怖さだった。
俺は母親にはなれない。
――そんな思考が巡る
――その日の夜。
fu『ねえ、sy?』
ソファでふたり。
甘く暖かい時間を過ごしていると、横から優しい声が流れてくる。
sy『ん…?』
fuの温かさと、疲労で少しぼんやりしながら短い言葉を返す。
fu『syは…、赤ちゃんどう…?』
胸がドキリとする質問。
けれど、今日のfuを見ていたら少し察していた部分もある。
sy『どう…って?』
少し意地悪に言葉を返す。
fu『………赤ちゃん…欲しい?』
一拍の沈黙__。
その後に予想していた答えが返ってくる。
sy『fuは欲しいの?』
我ながら意地悪な言葉の返し方だと思う。
fuの困惑した声が薄らと聞こえる。
fu『syとの赤ちゃんだったら、欲しいって思うよ…』
sy『俺は……』
〃『母親になれる自信がない…』
自分自身の心に収めていた本音を吐露する。
今日kzとrmの赤ちゃんを見て、fuとの子どもについて考えてみたこと。
考えてみたからこそ感じた、不安と怖さ。
fuは、優しく頷きながら最後まで聞いてくれた。
最後まで話終わる頃には、fuへの申し訳なさと自分の不甲斐なさで涙が溢れて止まらなかった。
sy『ッ…っ、fuッ…っ、…ごめんッ…っッひ…ぅっ、ッ』
fu『妊娠も出産もsyだから、syが決めていいんだよ。俺に申し訳ないとかいらないよ…』
〃『ごめんね、sy』
優しくて甘い果実のような落ち着く匂いに包まれる。
背中に腕を回されて、とんとん…とあやすようにしながら、優しく優しく声をかけてくれる。
fu『大好きだよ、愛してるよsy…。』
sy『俺も…ぐすッ…っ』
その日は、fuの腕の中で揺られていつの間にか眠っていた。
――これが約一か月前の話
――あの話が出てから約一ヶ月。
俺たちは何も変わらず過ごしている。
あれ以来、子どもについての話は出ていない。
もちろんこの一ヶ月で、まだ育休の取れていないkzの為に、俺たちがワンオペをしているrmの手伝いに行くことはあった。
それでも、俺はkzとrmの赤ちゃんを抱くことは出来なかった。
sy『おじゃましまーす』
kzrm宅の玄関の扉を開け、その扉を閉めながら言葉を発する。
しかし、その言葉への返答はなく。
――静けさだけが目立っていた。
ほんの少しの心配を胸に廊下を進み、リビングへと足を踏み入れる。
sy『あ…w』
リビングに入り、一番最初にでてきた目に入ったものは__。
授乳枕に赤ちゃんを乗せ、優しく抱きとめながら眠りこけるrmの姿だった。
sy『rmおはよ』
しっかり抱きとめながらも、少し脱力したrmの腕を支えながら、肩を優しく揺する。
rm『んぅ…sy、ぉ…?来てくれた…ぁ?』
sy『うん、来たよ。ソファで座りながら寝るのは危ないからせめて横になろ?』
少ししゃがみ目線を合わせるようにrmの顔を覗き込みそう促す。
rm『ん、もう大丈夫。……それよりさ』
〃『syなんか悩んでる…?』
自身の思っていたものとは全く違う言葉が返ってきて困惑する。
sy『そんな…ことない、よ…』
rm『嘘だ。いまsyどんな顔してる か分かってる?』
sy『え、?』
そんなrmの発言に困惑し、間抜けな声が漏れる。
rm『なにがあったの?』
sy『rmは鋭いね…』
そう真剣に見つめ、問いかけられる。
そんな姿に参って俺は、ぽつぽつと事の経緯を話し始めた。
sy『kzとrmの赤ちゃんに初めて会った日の夜fuに赤ちゃん欲しいって言われてさ…』
〃『でも、俺母親になれる自信なくて…そんな俺が不甲斐なくて、fuに申し訳なくて』
話し始めると、俺の口から出る言葉は止まることを知らなかった。
sy『ちゃんと母親になれてるrmが羨ましくて…ごめん。こんな話して…』
こんな話を疲れたrmと産まれたばかりの赤ちゃんの前で話したことが申し訳なくて、涙で視界が滲む。
rm『俺も、最初から母親になれてたわけじゃないよ。妊娠して、はじめて俺のお腹にkzとの子がいるんだ…って、、』
〃『今もちゃんと母親出来てるか分かんないけど、大好きな人との子って大変でもめちゃくちゃ可愛いよ。俺はね…』
綺麗なオッドアイの瞳が俺を捕らえる。
優しい言葉が連ねられて、目から零れる涙は、止められなくなってしまった。
sy『そっ…かぁ、ッ…ぐすッ…っ、』
rm『俺たちの子抱っこしてみる?』
涙で濡れた頬を優しくさすられる。
rmの言葉に不安を抱いた。
――でも、その言葉に甘えてもみたかった。
rm『どう?怖くない…?』
腕の中で動く小さな存在。
――それは可愛らしくて、守りたくなる。
そして、不安でいっぱいだった心が和らぐ存在だった。
sy『大丈夫…かわいいね。』
rm『まあ、俺たちの子だからね!』
両手を腰に添え、得意げな顔で言う。
rm『子ども作るも作らないもfuとsyの問題だから、もしまだしんどかったらfuに言ってみな。』
〃『あいつなら真剣に聞いてくれる』
俺はrmのその言葉に安心する。
sy『なんかありがとうね…』
――その日の夜
sy『fu…』
fu『ん、?どうした?』
お風呂上がりで、髪から水が滴り落ちていてほんのり顔も赤いfu。
いつもは意識しないお風呂上がりのfuの姿。
でも、今日は意識してしまって腹の奥がきゅんきゅんと拍動する。
sy『ん…』
ソファに座るfuの上に跨り、唇を少し尖らせる。
それを見たfuの目が一気に男の目になった気がする。
fu『今日珍しく積極的だね。』
sy『うん…ベッド連れてって』
そう言いながら、fuの胸をひとなでする。
それと同時に、俺とfuの間に甘ったるい空気が流れる。
寝室までの道。
fuに姫抱きされて、連行される。fuの甘い匂いに包まれて幸せな気持ちになる。
sy『んわッ…っ、』
寝室に入り、ベッド付近まで近づいた所でそのまま放り投げられる。
fu『流石に可愛すぎるよ。sy』
そう言うとfuは俺に覆いかぶさってきて、そのまま柔いキスを落とされる。
sy『んッ…♡』
そして、無理やり舌をねじ込まれ、
――深く蕩けるキスをされる。
fu『はぁッ…♡、か~わいい…、っ』
fuの唇が離れていき、まともに呼吸ができるようになる。
そして、fuは自然な流れでベッド横の引き出しを開ける。
sy『待ってっ、ゴム付けないで…』
その言葉を発した途端、fuは困惑の表情を見せる。
fu『赤ちゃんできちゃうよ…』
sy『fuとの赤ちゃんなら欲しい…っ』
fu『ッ…///』
⋆˳˙ ୨୧…………………………………୨୧˙˳⋆
お久しぶりです! どうしてもまともに学校はじまると投稿できなくて…😭
僕19時を目安に投稿してるんですけど、
帰ったらもう19時で書く時間が…🫠ᩚ
この作品は一応ここで完結です^^
もしかしたら、番外編書くかもです。
僕の書きたいもの優先なのでご理解の程を…🥲︎💦
良ければ感想ください💬
いつもくれる方𝑳𝑶𝑽𝑬_です🫰🏻💕
.:° 🌾🌾╰(ˇωˇ )╯🌾🌾;。:*
湊斗@投稿頻度低下中
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コメント
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めっちゃすこ((( 続き欲しいです🥺
投稿ありがとうございます! かざねさんとりもさんとの間に産まれた可愛い天使、幸せそうで…🥹でもその裏のしゅうとさんは心の中で苦しさも感じてしまってて💦なんとも切ない気持ちにもなりましたが、ふうはやさんのしゅうとさんへの変わらぬ愛もステキでした🥹とても素敵な物語をありがとうございます!! 時間がない中物語を作って投稿して、とても大変だと思いますが本当にありがとうございます!どうか無理なさらずに!
あぁッッ、、、待って、、、最高ッッ、、、いんくの二次創作で赤ちゃんの話をあんまり見たことなかったのでなんかリアルでめっちゃ尊かったですッ✨かざねさんとりもさんの赤ちゃん絶対可愛いしッしゅうとさんとふうはやさんの赤ちゃんも見たいッッ✨私も抱っこしたいッ!って言いたいとこですね(^^)また新しい話を楽しみにしてます!頑張ってください!!