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kimi
緑青🌱凪
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仁人side
「仁ちゃん何見てんのー?」
「っ」
休憩中、舜太が俺にくっついてきた。その瞬間ビクリと体が跳ね上がる。
そんな様子に俺に舜太がいつもと違う微笑みを向ける。むっとして睨みつけると何もなかったように雑談を続けた。
「ほんまにこの人の動画好きやなぁ」
「1人で見てんだから邪魔すんな」
「隣にいるだけならええやろ?」
「……ん…」
スマホを覗き込むのをやめて笑顔で俺を見る。顔が熱い。見ている動画の内容が頭に入らなくなる。
ソファの上で舜太が体重をかけるように手を置く。その振動とギシっとなる音にパッと立ち上がった。
「…ちょっとトイレ行くわ」
「うん、いってらっしゃーい」
もちろんトイレに行きたかった訳ではない。俺はちょっと、おかしくなっている。
舜太に”そういうこと”をすることについて話した夜から。
幸い仕事の場所では目の前のことで手いっぱいな事もあり影響はない。そういう時に舜太がくっついてきても、話をするのも普通にできる。
でも気をぬいてる時に舜太が隣に来ると思い出してしまうのだ。あのことを。
蛇に睨まれる蛙のような、そんな気持ちになる。前は舜太のことを子供のように思っていたのに。
舜太の手に触れられるとあの時反応した自分の体の感覚が蘇ってしまう。
結局あの後は舜太が言った通り何も手は出されなかった。でも、隣にいるだけでドキドキしてたまらなかった。
考えをぐるぐると回しながら俺は少女漫画のヒロインか?なんてツッコミを入れたくなる。
「よっしー大丈夫?」
「おわ!…あ、柔太郎か…」
いつの間にか廊下で立ち止まっていたようで、ちょうど歩いていた柔太郎が声をかけてくれたらしい。
柔太郎は俺の顔をじっと見た後にふっと笑う。
「…んだよ」
「舜太のこと考えてる?」
「…っな、何で……」
突然出てきた名前に思わず取り繕うこともできず言葉が漏れてしまう。
こいつとは仲がいい分、素が出てしまうのが良くない。特にこういう時は…。
「ずーっと舜太といる時だけ変じゃん。何か進展した?」
「は!?」
思わず大声が出る。
「あ、別に舜太からよっしーの名前聞いた訳じゃないよ。でも話聞いてるとバレバレだからさ」
「…あいつ、マジで………」
「いや、舜太が最近やたらと嬉しそうだから俺が聞いただけだし。ごめんね?」
舜太が嘘をつけないタイプなのも柔太郎がやたらと鋭いことも知っている。
でもまさかこんな事がバレるなんて…。思わずうなだれる俺の肩をぽんぽんと柔太郎が叩く。
「上手くいってない訳じゃないんでしょ?」
「…何でそう思うんだよ」
「だってよっしーも舜太もお互いの事大好きじゃん」
「…あ〜マジでだるい……」
聞かなければよかった。否定できない自分が悔しい。
「まあよっしーがポジション?的に悩むのは分からなくもないけどさ」
「お前それ舜太から…」
「いや、見てれば分かるし」
その言葉に余計落ち込む。そうなのか?俺ってそんなにそっち側に見えるのか?
いや、俺の反応が悪いのか?だからあんな風に主導権を握られてしまうんだろうか…。
「舜太の性格的に戸惑うのは分かるけどさー年上としてちゃんと受け止めてあげないと」
「…そんな余裕ない……」
「へーそんなにベタ惚れなんだ」
ニヤニヤとする柔太郎に頭を叩こうとするが空振りで終わる。
「そうやってもじもじしてるよりちゃんと向き合ったら?」
それは、先に進めって意味なのか?なんて柔太郎に言う事はできなかった。
柔太朗は返事のできない俺の肩を抱いて楽屋に向かった。
舜太 side
仁ちゃんを待ちながらスマホを見てると隣にどかっと衝撃がくる。そこにははやちゃんが神妙な顔で座っていた。
「…舜太、お前仁人になんかした?」
「ん?何で〜?」
「いや、なんか、舜太といる時だけ仁人がおかしいっていうか……お、怯えてね?」
言葉を選ぶようにはやちゃんが難しそうな顔で言う。あれって、そんなに周りにも分かるもんなんや。でも怯えてるは言い過ぎやない?
「大丈夫やよ、仲良し!仁ちゃんもちゃんと俺のこと大好きだから安心してや〜」
「……お前が言うのってなんか、不安なんだよなぁ…」
はやちゃんを安心させるために笑顔で答えたのに逆にうなだれられてしまう。
まあちょっとあの時は仁ちゃんにいじわるしすぎたかな?でもそうでもしないと分かってもらえへんかったし…。
でもこうやって俺にビクビクしてる仁ちゃんを楽しんでるのはちょっと性格悪いかもなぁ。
あの様子がかわええんやけど…。
そんなことを考えてると楽屋のドアが開く。目を向けると仁ちゃんと肩を組んで楽しそうに話す柔が居た。
一瞬、心が凍るような感覚がした。多分その時の俺はいつもと違う表情だったと思う。
仁ちゃんと目が合った時少し驚いたような顔をしていた。でもじゅうは余裕の笑みで。
それを見てあ、俺ってこんな事したい訳じゃなかったんや、って気づいた感じがした。
最近こういう仁ちゃんの顔、自分といる時に見ていなかった気がする。
動揺を抑え込んでいつもの笑顔で2人に歩み寄る。
「なんの話してんのー?」
さりげなくじゅうから離すように仁ちゃんの腕をひく。きゅるきゅるとした怯えたような目で仁ちゃんが俺を見つめてくる。
はやちゃんの言葉を思い出してしまった。
「あ、いや……」
「舜太の話」
「…俺?」
柔からその言葉が出た途端、仁ちゃんが柔を睨みつける。耳打ちしてなにか話してるけど聞こえない。
何で俺の話?柔に至近距離で話す仁ちゃんを見てドクンと心臓が鼓動した。トキメキとかそういうのじゃなくて嫌なやつ。
「何それー聞かせてや!」
必死に笑顔を取り繕って二人の間に割って入る。
「それは本人からどうぞ」
「っ……お前、ほんと…」
頭をわしゃわしゃとかく仁ちゃんと意味深な笑みの柔を見てさらに心がザワザワした。
仁人 side
「あ、仁ちゃん一緒におりまーす」
「え?」
車が舜太の家に着いた時、そんな声が急に聞こえた。
今日は約束はしていない。舜太は明日が早いと話していたはずだ。
何で、と言いたくなるが舜太は俺の目を見もしない。俺の言葉を聞くがないと分かる。
口々に「お疲れー」と言うメンバーに助けを求める訳にもいかず、柔太朗にはグッドサインを出されて意味不明だった。
強引に降ろされた俺は舜太に手を握られる。少しビクリとする俺にまた笑みでも浮かべるかと思ったが、舜太は思った通りの顔ではなかった。
少し寂しそうな、顔。いつもと違う。
俺の手を引っ張る舜太はいつも荒々しくて、いつも他のそうに話しながら向かうエレベーターや廊下を無言で進んだ。
「入って?」
「お、おう…」
なんとなく圧を感じる。いつもは先に部屋に入れさせることなんてないのに。
リビングで飲み物を注ぐ舜太が抑揚のない声で俺に言葉を投げかけてきた。
「柔と何話してたん?」
1番聞かれたくないことを聞かれて言葉につまる。舜太のことで悩んでるなんて、しかもそれがこんなくだらない内容なんて話せる訳ない。
すると舜太の顔が明らかに曇った。
「……俺に話せへんような話だったん?」
不機嫌とか、そういうものではない。今まで見たことのない舜太の表情に驚くと共に心配になる。
悲しみと怒りが入り交じったような顔。
「くだらない話だから言う必要ないだけだって。お前、なんかあった?大丈夫か?」
舜太の隣に行って顔を覗き込む。すると舜太は俺を抱きしめてきた。少し体が硬直する。
「俺の事そんなに怖い?」
「そんな訳じゃなくて、えーっと……」
あの時のことを思い出してドキドキしてるだけなんて言えるわけがない。恥ずかしすぎる。
ただでさえ今日は柔太朗に恥をかかされたのに…。
舜太の俺を抱きしめる力が弱まる。無言の時間。何を言えばいいのか分からず動けない。
どうしようと考えていると舜太が少し泣きそうな声で言った。
「…優しい、柔の方が、好きなん?」
「………は?」
「俺がいじわるしたから嫌いになってもうたん?」
「ま、待て待て待て。話が見えないって…」
思わず舜太を引き剥がして顔を見ると涙を目にためていた。
「俺じゃ、ダメだったん?」
俺の手を弱々しく握る舜太に動揺する。
”こういう時は、劇薬ぐらいがちょうどいいんだよ”
あの時柔太朗に耳打ちされた言葉が頭をよぎる。
そういう事か。いや、それにしてもこれは、効きすぎじゃないか?
というか、そんなに、俺が好きなのか。こいつは…。
そう思うと同時に目の前にいる舜太への愛おしさを強く感じる。
ああやって俺をリードしていても何も変わらないんだこいつは。やっぱり年下でガキっぽくて明るいけど泣き虫で可愛いやつ。
舜太の手を強く握ると不安そうな顔をする。俺は少し背伸びをしてそんな舜太に口付けた。
「…そんな訳、ないだろ」
驚いた顔の舜太の目からたまっていた涙が流れる。
「あーもう!泣くなって」
近くにあったティッシュで舜太の涙をふいてやる。
こうやってまっすぐ目を合わせるのも何だか久しぶりな気がする。俺がずっと避けるような態度をしていたから…。
「ごめんな、不安にさせて」
「仁ちゃん……」
舜太がもう一度俺に抱きついてくる。泣いてる子供が母親に縋り付くようで、何だか笑えてしまった。
背中をポンポンと叩くと顔を擦り寄せるようにくっついてくる。
「柔太朗と話してたのはその……お前が触れてくると、あの時の…事を思い出して………あの……」
説明しようとするがしどろもどろになってしまう。
「ごめんな、俺仁ちゃんが可愛いから調子乗ってもうて…」
また泣き出しそうな声になる舜太に焦り頭を撫でる。
「いやお前が悪いんじゃなくて!俺が、勝手にドキドキしてるのが悪く、て…」
「嫌じゃ、なかったん?」
俺から体を離した舜太が俺の目を見て言う。
「嫌なら、別れてる。…そうじゃないから、こう、なってるだけで……」
ああ、恥ずかしい。こんな泣き虫の年下相手に逃げ回っていたなんて情けない。これでリードする側だと思っていたなんてバカだ。
「仁ちゃん……」
さっきまで泣き顔だった舜太が笑顔になっていて安心する。…と共に最近のことを思い出してイラッとする。
「でもあの後楽しんでたのはお前も悪いからな?」
「う、ごめん…」
しゅん…と効果音でも付きそうな、分かりやすい落ち込み方が犬みたいで吹き出してしまう。
「何?なんで笑うん?」
「あーもういいわ!この話終わりな」
あの時のいつもと違う舜太のことばかり考えていたが、舜太は舜太だ。何も変わらない。ああいう面を見せた舜太も俺が好きになった舜太だ。
何で?何で?と言ってくる舜太をいなしてソファに座ると舜太も俺の隣に座る。
あの時と同じシチュエーション。
”劇薬”という言葉が俺の頭をよぎった。
「……舜太」
「ん?なにー?」
さっきまで泣いていたと思えないほどニコニコで俺を見つめてくる舜太に、覚悟を決めて言葉を発する。
「あの時のつづき、するか…?」
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書きためてるのここまでなので次は時間かかるかもです!最後まではしないので期待薄でお待ちください🥹