テラーノベル
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そのうち手早く洗い終わったギデオンが、先に湯に浸かる。そしてリオがアンの濡れた毛を撫でつけている様子を見てくすりと笑う。
「アンはリオには何をされても怒らないな」
「そうかな?俺が無茶すると怒るけど」
「それはおまえを心配してるからだ。俺もおまえが無茶をすると腹が立つ。アンと同じだ」
「そうなの?」
「そうだ。アン、リオのことが好きか?」
「アン!」
アンが答えて、|三度《みたび》ブルルと身体を振る。
「おいっ、だから水滴を飛ばすなよっ」
「あははっ」
アンが全身の水を飛ばし、それをまともに受けて焦るリオを見て、ギデオンが声を出して笑う。
リオは、ギデオンが声を出して笑っても、もう驚かない。本当は感情が、表情が豊かだと知っているから。
二人と一匹は楽しくのんびりと湯に浸かった結果、アンを除く二人はのぼせてしまった。いつまでも小屋から戻らない二人を心配して見に来たアトラスに手伝ってもらい、何とか部屋に戻ってベッドに倒れ込んだ。
ちなみに、当然二人は同部屋だ。リオが隣にいないとギデオンが眠れないから。その理由を知っているのはゲイルだけ。だから理由を知らない皆は、密かにリオはギデオンの愛人だと思っている。
ぐったりとした二人を尻目に、アンは風呂上がりの水を|美味《うま》そうに飲んでいる。
アトラスが「自分の限界を知ってくださいよ」と|呆《あき》れながら冷たい水を机に置く。そしてそそくさと出ていく。今から夕餉の支度を手伝うらしい。できたら呼びに来るとも言っていた。
リオは口の中で「ありがとう」と呟くと、熱い息を吐き出して目を閉じる。冷たい水を飲みたいけど起き上がれない。頭がクラクラとする。もう少しこのままで…と思っていると、「リオ」と声がして頭が持ち上げられる。口にグラスが当てられ、唇に触れる冷たい水をゴクゴクと飲む。驚いて目を開けると、ギデオンがベッドの横に立って水を飲ませてくれている。
十分に|喉《のど》が潤い、リオは大きく息を吐いた。
「ありがとう…。ギデオンは大丈夫なの?」
「ああ。水を飲んで楽になった。だがアトラスが呼びに来るまでは、ゆっくりと休んでいよう」
「うん」
リオにもう一度横になるように言って、ギデオンは窓辺に行き窓を少し開ける。暖炉の火で十分に暖められた部屋に、冷たい空気が入ってきて心地よい。冷気にあたりながら外を眺めるギデオンの横顔を、リオは黙って見つめていた。
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