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#憑依
成瀬りん
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#主人公最強
かませ犬S
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#転生
歯磨き粉
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第18話、読み終えました!リゼの記憶が戻ってなかった部分とか、レクトの「深化」のリスクとか、憑依周りの設定がしっかり深掘りされててすごく良かったです。特にリゼが「安らぎを感じた」って言ったところ、ああいう優しい繋がり方もあるんだなってグッときました。ラストのリンドブルム召喚は可愛くて笑っちゃったけど、戦闘時の強さを考えると確かに怖い…。次が気になります!
レクトが憑依していた間、リゼの記憶は無くなっていた。
厳密には、レクトが心象世界でリンドブルムと戦っていた辺りから――
……レクトが憑依を解除するときまで。
リゼはほとんど眠っていたとはいえ、今日起きてからのことくらいは覚えているはずだった。
エステルとセシリアは憑依されたことがあるため、どうしてもそこが気になってしまう。
――ただ、レクトだけは察しが付いていた。
今回途中から違っていたのは、憑依の次の段階……深化を行った点だ。
ひとまずレクトは、リゼにこれまでの経緯を話していった。
ディアナから依頼を受けて、しばらく見守っていたこと。
街から離れた山に付いていき、崖から落ちるのを助けたこと。
――その際、憑依スキルを使用したこと。
「……憑依、ですか……?」
「ああ。俺は他人の身体に憑依することができる。
積極的に使うことはしないが――」
エステルを少しだけ気にしながら、レクトは続ける。
「――俺が憑依している間は、その身体の持ち主は意識が無くなる。
ただ、憑依が終われば……記憶は残るはずなんだ」
「わたしは……はい。崖から落ちた記憶も、レクト先輩に助けられた記憶も……あります。
……あのとき、わたしは……憑依されていたんですか……? わたしが、考えて動いたわけじゃない……?」
リゼは考えるように俯いた。
ただ、すぐに頭を上げる。
「わたしは、それを……信じられます。
だってわたし、崖から落ちて……体をねじって、木の方に落ちるなんて、できませんし……」
「さすがに私も、そんな真似はできなさそう……」
「何を言ってるんだ。剣聖になるなら、それくらいはできないと」
「……改めて、遠い目標だなぁ……」
将来を悲観するエステルを横に、レクトは言葉を続ける。
「それで、憑依をしたあと――リゼの頭に響く叫び声のことを知ったんだ。
つらかっただろう? 俺も、つらかった!」
「あはは……」
リゼがようやく、少しだけ笑った。
ただ、その中には申し訳なさも滲んでいる。
「それで、リゼの中でいろいろあったんだが……。問題を解決するために、憑依の深化を――
……何て言ったらいいのかな。憑依の度合いを増やして、叫び声の元凶を叩きのめしたんだ」
「説明が急に、適当になってない?」
「その辺りは、感覚的な話なのでしょう。
レクトさんも、説明しづらいのではないでしょうか」
「全部話しても、ややこしくなるからな……。必要であれば、改めて話すよ」
レクトの言葉に、エステルも頷く。
「ただ……その深化ってやつ? それのおかげで、レクトは自分を見失ったんでしょ?
……本当に、怖かったんだから」
「それについては、本当にすまん……。
深化したあと、リゼの中でそのまま気を失っていたからな……」
「すぐに解除すれば問題は無い。
ただ、続けていくほど――憑依した人間に近付いていく、ということですか……」
セシリアは今回の現象と問題を軽くまとめた。
今まで見てきた憑依より、格段に危険な存在。
ただ、危険なのは本人と憑依された人間だけで……逆に言えば、それ以外は無害と言えるかもしれない。
仮に、今回の件で最悪のケースを考えてみると――
レクトの魂は、自身の身体に戻ることができず……魂の抜けたやる気のないレクトが、レクトの人生を歩み続けることになる。
リゼの身体にはレクトとリゼの魂が共存し、最終的には元々のリゼと同じ状態になる。
……後者は、外部からでは完全に見分けがつかない。
加えて、レクトの魂の所在が分からなくなったエステルは――
……そんなことを考えると、セシリアの胸は痛くなった。
エステルだけではない。今ではセシリア自身も、かなりの想いを寄せてしまっているのだ。
「――とにかく、だ。今回は緊急ということもあって、勝手に憑依させてもらった。
気持ち悪いと思うだろうが、この通りだ。許してくれ」
「それに、危険なことをしちゃったのもね。
……レクト。深化っていうのは、もう禁止だよ」
「ふふっ。レクトさんは、エステル様にしっかり管理されてますわね♪
でも、それにはわたくしも賛成です」
「うぅ……。本当にすまなかった……。
リゼも、どうか許してくれ……」
レクトはリゼに、何度も頭を下げていく。
「あ、謝らないでください……。そもそもわたしが、その……やってはいけないことを、したんです。
だからレクト先輩は、悪いことなんて無いです。他にもいろいろ、助けてもらって……」
リゼは真っすぐ、レクトの目を見た。
「――それに、深化……ですか? 途中で、とっても安らぎを感じたんです……。
凍える中、誰かが隣で……温めてくれるような。
きっと、その……わたしの中で、レクト先輩が寄り添ってくれていたんですよね……?」
そこまで言うと、リゼは……顔を赤くして、それを両手で隠した。
「……魂を寄せ合う仲……。うーん、想像が付きませんわね?」
「ど、どうして私を見るんですか! 想像なんて、しませんよ!!」
「あらあら♪」
「……あ、あの。ところで――」
リゼが指の隙間から、エステルとセシリアを見る。
「もしかして、エステル先輩とセシリア様も……。レクト先輩から、憑依をされて……?」
「ま、まぁね……。でも、私はもう許さないから!」
「わたくしは、自由にして頂いて構わないんですけど……♪」
三者三様の表情を浮かべる中、レクトが話を続ける。
「気軽に憑依することは無いから、安心してくれ。
あとは今さらだが……このことは秘密にしたいんだ。誰にも喋らないで欲しい」
「も、もちろんです……。
……その代わりと言ってはなんですが、お願いがありまして……」
「う、うん。何かな?」
「これから、先輩たちと仲良くさせてもらっても……いいですか?
……その、これっきりなんて……寂しいから……」
リゼは指をもじもじとさせながら、3人に言った。
そのいじらしい仕草に、全員が癒されてしまう。
「ああ、喜んで。気軽にいつでも、声を掛けてくれ」
「そういうことでしたら、リゼ様もわたくしたちのパーティにお誘いしませんか?」
「まぁ、それが手っ取り早いですか……」
「あ、ありがとうございます! とっても……嬉しいです!」
リゼはそう言うと、3人とそれぞれ握手を交わしていった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――翌日。
レクトとエステル、セシリアがパーティ活動室にいると、ノックの音が聞こえてきた。
扉を開けると、そこにはリゼが立っている。
「あの……。早速来ちゃいましたが、よろしいでしょうか……」
「ええ、いらっしゃい。もちろんよ!」
「お好きなところに、座ってくださいまし」
座るところは何箇所かあるが、リゼはトコトコと……レクトの横に座った。
「――あら、迷いがありませんわね♪」
「だから、何でこっちを見るんですか!」
そんなやり取りを見ながら、リゼは顔を赤らめていた。
少しずつ座り直して、徐々にレクトとの距離を近付けていく。
「……ところで、レクト先輩。相談があるのですが……」
「え? 俺で良いの?」
「はい、あの……わたし、召喚できるようになった気がするんです」
「何だって!?」
レクトは思い切り慌てた。
リゼが召喚するものといえば、心象世界で戦ったリンドブルムに違いない。
「昨日、頭の中で囁かれたような気がして……」
「そ、そうなんだ? き、きっと、すごく強インダロウナー?」
「それじゃ、召喚してみますね!」
「え、ちょっと――」
止める間もなく、リゼは小さく詠唱をした。
ごく短い呟きが終わると、パァ……っと手元が輝き、そして何かが召喚される。
「――うむ。呼んだか、我が娘よ」
「レクト先輩、成功しました!」
「……いやいや。これは――」
……見れば、心象世界で出会ったリンドブルム――が、デフォルメ化したような姿がそこにあった。
エステルとセシリアは可愛いとは思いつつ、その存在には気を許さない。
「――お前は、リンドブルム……?」
「おう、数日振りであるな!」
リンドブルムはリゼの腕に抱かれながら、機嫌よくレクトに返事をした。
「あのさぁ……。
あんなに俺を殺そうとしたのに、こんなにノコノコ現れるのか……?」
「せ、先輩!? 落ち着いてください……!?」
「はっはっはっ。
そうだぞ、我が娘の言う通り。お主も落ち着くが良い」
「……お前が言う?」
そんなやり取りに、エステルが口を挟んでくる。
「ねぇ、その竜って……?」
「ああ。心象世界で、俺と戦った竜だ。
リゼ……こいつがあの、例の叫びの元凶だったんだぞ?」
「そ、そうなんですよね……?
……あ、あの。何でそんなことをしたの……?」
「我のせいではないぞ?
召喚契約の儀式のせいだから、気にすることは無い」
「そ、そうなんだ?」
「ああ……。あっさりと信じちゃってる……」
「なぁに。結果として、お主らは納得いく結果になったから良いではないか」
リンドブルムの口元が、少し緩んだ気がした。
「……それは一体、どういう意味だ?」
「我はお主の攻撃によって、魂が少し小さくなったのだ。
それによって、リゼの――頭の中の叫び、というのも無くなったであろう?」
「うん。……でも、あなたは傷を負ったんだね。大丈夫?」
「それも仕方あるまい。
それで……あー、お主の名前はなんだったか? まぁいい、それで婿殿はだな――」
「……婿殿?」
「おう。婿殿は、我の魂と一時的に繋がったであろう?
そのときに、我の魔力をある程度受け継いだはずだ」
「魔力……だと?
そうすると、俺は魔法を使える……ということなのか?」
「魔法の道に進めば、それも可能だろうな。まぁ、どの道に進むかはお主次第よ」
その言葉を聞いて、レクトが視線を送ったのは――セシリアだった。
「もしかして、俺は自分で……右足のために、身体強化の魔法を使えるかもしれない……?」
「とんでもない朗報ですわね!」
今までは自分で魔法を使えなかったため、どうすべきかは分からなかったものの――
……魔力を獲得できたというなら、進むべき道は自ずと決まってくる。
「――ところで、さっき……婿殿、って聞こえたけど? あれは何?」
レクトとセシリアの間に、エステルが割り込んで来た。
「お、俺は知らないぞ……!?」
「くくくっ。我が娘はお主を好いているようでな。それに、心象世界で我とあれだけ戦ったのだ。
認めてやろうではないか。お主こそ、リゼのつがいにふさわしい……ッ!!」
「ちょ、ちょっと……!?」
リゼは慌てて、エステルとセシリアの顔を見た。
彼女たちも、リゼのことを真っすぐに見つめている。
「あ、あの……。わたし、エステル先輩も、セシリア様も素敵だな、って思ってて……。
だから、あの……レクト先輩のことは、その――……なんですけど、わたしは、そうじゃなくて……」
「ううん? お主は何を言っているのだ? 特別な関係になりたいのではないのか?」
「とととっ、特別な関係だなんて――」
リゼはレクトの顔を一度見上げて、そのまま顔を伏せた。
「――……でも、わたしに恋愛はまだ、早いですから……。
だから、その……。わたしは、お兄ちゃん……って、呼ばせてもらっても……いいですか……?」
「あらあら♪ それは別の意味で、特別な関係になってしまいますわね……♪」
「良かったわねぇ。こんなに可愛い妹ができちゃって……ッ!!」
3つの方向から、それぞれ違う圧力を受けるレクト。
「……俺、別に悪いことはしてないよな……?」
「くっくっくっ。モテるというのは、男としての実力よ」
「お前は黙ってろ」
思わずツッコミを入れたリンドブルムの皮膚は厚く、レクトは逆にダメージを受けてしまった。
――……そういえば。
この小さなリンドブルムを呼んだとき、リゼはごく短い詠唱で終わらせていたっけ。
それなら……もしもリンドブルムを長い詠唱で呼んだとき、その姿や強さはどうなるのだろうか。
平穏の中に潜む、強大な力――
……レクトはそれを思うと、どうにも恐ろしくなってしまった。