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女女の25時

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女女の25時

63 - 第63話 脱がされたワンピース

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2024年08月12日

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これはどういう状況だ。

先ほどの綾瀬の言葉―――。

(そういうこと?だよね?)

気づかれないように軽く息をついた。

30も過ぎて、生娘みたいに抵抗するのもかっこ悪いだろうか。

だいぶご無沙汰なだけで初めて、というわけでもないし。

男と二人で出かける時点で、そういう展開も、全く予想してなかったわけじゃないし、ワンピースこそ着てこなかったが、一応下着は上下ペアの可愛いものを選んで、ムダ毛も処理してはあるけれど。

でもまさか、本当にそうなるとは―――。


「まあ、まず直近の問題として」

運転席に座った綾瀬がエンジンをかける。

「その服、どうにかしないとレストランにも入れないですね」

言いながら起動したナビを弄っている。

「適当なところで、服調達しますか?濡らしてしまったお詫びに一着プレゼントしますよ」

「適当なところって」

「あ、いえ、適当ってどうでもいいってわけじゃないですよ。どこかちょうどいいところでって意味ですよ」

(そんな簡単にちょうどいいサイズがないんだよ)

眞美は、どこのどんな服でも入るのであろう男を睨んだ。

だからと言って、

「じゃあ、大きいサイズ専門店、検索してくれる?」

なんて言えるわけもない。

「………あ」

思わず声が出た。

後部座席を振り返る。

間違えて持ってきてしまった紙袋。

タグも取ってなかったので、返品しようと準備だけしていたワンピースが入っている。

でも、黒のカーディガンは持ってきていない。

あれを単独で着るとなると、どうだろう―――。

「あ。近くにモールがありますよ。行ってみますか」

綾瀬がこちらを見る。

「ーーーいや、いい」

「え?」

「持ってきてる。一着だけ」

眞美の視線につられるように綾瀬が後ろを振り返る。

「先にチェックインできる?」

その視線が眞美に戻る。

「ホテルで、着替える」

「……もちろん!」

はっきりと“ホテル”と発した眞美に微笑むと、綾瀬はギアをドライブに入れた。


部屋に入ると、綾瀬は大きなバックをベッド脇に下ろした。

一泊するだけなのに、男にしてはものすごい荷物の量だ。

何が入っているのか少し気にならないわけでもないが。

綾瀬は首にかけていたネックレスを、テーブルの上に置き、軽くため息をついた。


男と二人でホテルの部屋にいる。

ダブルじゃなくて少しだけほっとしたが、それでもツインのベッドの隙間は1メートルもない。

そもそも、このベッドに一人ずつ寝て終わる、なんてことはないような気がする。

綾瀬が軽く首を回す。

同僚ではない。同期でもない。後輩でもない。

どんなに華奢でも、どんなに美しくても、男、だ。

「栗山さん、着替えないんですか?」

言葉を発してから綾瀬が振り返る。

「洗面所、覗かないから使ってください。ここで着替えても、俺は別にいいですけど」

慌てて眞美は紙袋を抱きしめながら、洗面所に入っていった。

濡れたチュニックは少し生臭い気がした。ただ厚手で出来ているため、キャミソールやブラジャーまではしみ込んでいなかった。

それを脱ぐと、紙袋からワンピースを取り出す。

チャックを下ろし、上から被る。

袖を通しウエストを合わせ、ヒダを整える。

チャックを上げると、数日前、鏡で見たままの女性がいた。

今日はメイクもしているから、さらに女らしく、大人っぽく見える。

大丈夫。

大丈夫だ。

鏡の中の自分に言い聞かせる。

今から自分は、男と夕食を食べて、ホテルに戻ってきて、この部屋で――――。

その後の二人の関係がどうなるかなんて、わからない。

ーーーでも。

30歳の秋。

乙女ゲーに暮れる夜よりはずっといい。


ドアを開ける。

綾瀬の姿がない。

軽く見回すと、窓際のベットに仰向けに寝転がっていた。

長時間の運転で疲れたのだろうか。目を閉じている。

予約の時間が何時かはわからないが、まだ夕方だ。少しぐらい休ませてもいいだろう。

眞美はテレビのリモコンを探した。

目を閉じ、軽く口を開けて寝息を立てている綾瀬の顔の隣にそれはあった。

手を伸ばしてそれを取り、ボタンを押そうとしたところで、ぐいと腕を引かれた。

驚いて振り返ると、綾瀬が上体を起こしてこちらを見上げている。


「そんな素敵な服持ってるなんて、反則ですよ」


そのまま強い力でベッドに押し倒される。

「せっかく着たところ、申し訳ないんですけど……」

さっぱり申し訳なさそうじゃない顔で見下ろされる。

「脱がせていいですか?」


眞美の後ろに、綾瀬が足を開いて座っている。

その手が優しく肩を触る。

その感触に身体が勝手にビクッと反応する。

「緊張してる?」

綾瀬が軽く吹き出す。

「大丈夫。そっとするから。リラックスしてて」

言いながら首にかかった眞美の髪の毛を優しく左右に分ける。

そして中心にあるチャックに指をかけると、摘まんでツーっと下ろし始める。

アンダーバストを支えていたハイウエストのゴムから解放され、上半身が心もとなくなる。

そのまま、ウエスト、腹部の順で少しずつ開いていくワンピースを見下ろす。

腰まで下げた時、ふわっと襟元が大きく開き、眞美のキャミソールと、透ける下着まで、一気に露わになる。

「やっぱり。すごい可愛い」

後ろから綾瀬のうっとりしたような声が聞こえてくる。

(こんなだらしのない身体を、可愛いなんていえるの、どうかしてる…)

顔が熱くなるのを見られないように俯いていると、肩から優しくワンピースを抜き取られた。

後ろから伸びてきた手が、眞美の手を掴むと、優しく袖を抜き取る。

まず、右側。

続いて、左側。

とうとう上半身は、ブラジャーとキャミソールだけになってしまった。

すると綾瀬は眞美を優しく押し倒しながら足元に回り、腰からワンピースを下げていく。

それに合わせて軽くお尻を上げると、

「いいこ」

と微笑んだ。

その目つきが妙に色っぽくて、眞美は片手で顔を覆った。


スルスルと滑らかな裏地が太腿、膝、脹脛を滑っていく。

(まさか。お母さん、脱がせやすさまで考えていた…?…わけないか)

自分の思考に呆れているすきに足首からそれが抜き取られた。

途端に肌寒さを感じる。

下着だけになった自分の体がひどく心細く感じる。


(早く、来てほしい)

早く身体を重ねて、体温を移してほしい。

顔を包んでキスしながら、体に触れて、かき分けて、入って、一つになって――――。

数分後に訪れるであろう情事を想像して、堪らなくなり、眞美は両手で顔を覆った。


「栗山さん………」

視界を遮った眞美の耳に、綾瀬の声が響く。


「いいですか?」


(何をいまさら………)


「これ、着てみても」


(いいに決まってる)


(いいに――――)


(———————)


「はあ?!!」

眞美は思わず起き上がった。


とっくにベッドから立ち上がっていた綾瀬は、ワンピースを広げて目を輝かせていた。


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