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私の頬が触れると、今度は彼の方が一瞬ビクッと肩を震わせた。
「……。……さっきは私のかっこうに驚いていたのに、君は急に大胆にもなるんだな……」
言いながら彼が身体を反転させると、目の前に胸先が迫り、
「きゃっ」
不意討ちの衝撃に、ついまた同じように声を上げ、目を瞑った。
「あー……っと、悪い。私は、またしても君を困らせたのか……」
消沈した様子で、彼がにわかに顔をうつむかせる。
「あ、いえ、ち、違うんです! 本当に!」
表情を曇らせる彼に、慌てて首を振って、
「突然に振り向かれたから、面食らってしまっただけでして……」
ちらちらと視界に入る、意外に厚みのある彼の胸筋に目を泳がせつつ、はにかんで訳を話すと、
「君がいるかもしれないと、私も身なりにもっと配慮すべきだった……すまないな」
小さく頭を下げて返された。
「あ、そんな……! 突然に来たのは私の方なんですし、貴仁さんが謝ることなんかなくて……!」
まして大慌てで首を何度も振る私に、
「……いいのか、服を着ないでも?」
誘っているのかいないのか、ただ耳を撫でるように低く艷めいても聴こえる声で、そう問われて、
「いい……。着ない、で……」
まるで催眠にでもかけられたかのように、無自覚に口を開いて答えた。
「なら……」
と、彼の両手の平が私の頬に当てがわれる。
「こちらを……私を、見てくれないか。彩花」
つと目を上げると、しばらく無言で互いに見つめ合った。
「っ……、」
じりじりと灼けつくような空気感に、何か喋らなければと開きかけた唇を、彼の指先が塞いで止める。
「いい……黙って、目を閉じてくれないか」
促されるままに瞼を下ろすと、触れていた指の上から、チュッとだけ口づけられた。
直に触れられない、もどかしげなキスに、さらに求めたくなる気持ちが湧き上がり、
私の唇に添えられた彼の人差し指を、片手でキュッと握ると、
「……ねぇ、キスして、もっと……」
恥じらいを抱えつつ、伏せられた睫毛の陰で幽かに潤んでも映る瞳を、上目に捕らえてねだった。