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注意書き
完全捏造
kid視点
kgmとkidのみ
fw、knmcは最後ら辺に名前のみ出ます
以下伏字無し
「やってられるか!」
その日桜魔皇国国立研究所にそんな叫び声が響き渡った。
その声の持ち主は、 研究所の首席研究者、甲斐田晴。
いったいこの細身のどこからこの声量が出てるんだ!?!?と目を見開いた研究員も数人いたけれど、この研究所で研究者の発狂なんて、砂場をアリが歩いている以上の日常茶飯事である。激務、先の見えない研究内容、現場をかえりみない上からの指示。叫びでもしないとやってられない。
だから、どすんどすんと足音を立てて研究室を飛び出た甲斐田を見ても誰も止めることはなかった。どうせすぐ戻ってくるだろうと踏んで。
だからこそ、甲斐田はくぐることが出来たのだ。
「甲斐田様?!」
まさかそこには行くまい、と周りに思われていた場所に。
「おい、甲斐田様が!____異世界に行かれたぞ!」
この広い皇国でもたった三人にしか自由渡航が認められていない異世界、バーチャル日本へ向かうゲートを。
ゲートを潜り抜けてたどり着いた事務所で甲斐田晴周囲をきょろきょろ見回す。
そうしながら廊下を気持ち早足で歩いていると、すれ違ったライバーやスタッフがぎょっとしたような顔をする。
そうして、目的の部屋を見つけて。ばん!とドアを開いた甲斐田は、そのまま部屋の中にいる相手を引きずり出す。
そんなことをすれば、もちろん相手も抵抗するわけで。
「甲斐田さん!?!?」
今回の被害者、加賀美ハヤトも、残念ながらその例に漏れなかった。とはいえそうしながらも、ある程度大人しく甲斐田に引っ張られるままにしているのは温情か_
加賀美であれば、本気で抵抗すれば甲斐田なんて一発でのせるはずなので。
黙って加賀美の手を引いて歩く甲斐田の顔色はひどい。それを心配したのか、加賀美はされるがままになりながら、甲斐田の顔を覗き込む。
「どうしたんですか、甲斐田さん。……顔色、ひどいですよ」
「社長こそ。コンシーラーで隠してるの、バレてます」
目の下にデカデカとクマをこしらえた様子をとがめれば、カウンターが返ってくる。なんで気づいたんだ、と目を見開く加賀美に、甲斐田はバレバレだとひと言返す。
どうしてクマが出来ているのか、ということはあえて聞かない。加賀美も立派 な大人、責任ある立場なのはわかっている。多少睡眠を削ってでも無理しなけれ ばならない場面というのはどうしてもあるのだろう。
__そんな人を、自分の都合で連れ回していいのか、と。
先ほどからずっと衝動だけで動き続けていた甲斐田の心に迷いが生まれる。
だから、加賀美の手を引いてたどり着いた先__事務所の駐車場に止めてある
自分の車のところまでたどり着いたとき。甲斐田はそこで、加賀美の手を離した
「…..甲斐田さん?」
「社長。……一日だけ、僕と逃げませんか」
うつむき加減に、無理だろうなあ、とも思いながら。それでも一縷の希望を抱いて。
___こんな唐突にやってきて、相手の都合もかえりみずに連れ回して、これ 以上を求めるなんて。
__いや、長い間、仕事とはいえ苦楽を共にした仲間なんだから、あるいは、なんて。
うつむく甲斐田の視界の中で、加賀美の影がゆらりと揺れる。
そうして、車のドアが開く音が聞こえたかと思えば。
「ほら、いつまでそこに突っ立ってるんです?」
「………..え?」
言葉ではなく、行動で。
いかにも当たり前かのような顔で、彼は甲斐田の車に乗り込んでいる。
「は、はい!」
その言葉に後押しされるような形で、少しばかり救われながら、彼とは反対側のドアを開ける。ハンドルを握れば、自然と背筋が伸びる心地がする。
「ありがとう、ございます」
「いえ。__私も、少々逃げたい気分だったので」
加賀美のそれが社交辞令なのか、それとも本音なのかはわからない。
けれど、いずれにせよそれを甲斐田に語ったのは彼の気遣いゆえだろう。こくんと頷いて、カーナビに手を伸ばす。
そこに、甲斐田がバーチャル日本に逃げて来てまで行きたかった場所の名前を
入力しようとすれば、加賀美にやんわり制される。
「ねえ、甲斐田さん」
「はい?」
「せっかくなら、お二人も呼びませんか?」
我々、四人でチームでしょう、と。
柔らかく微笑む加賀美に目を丸くする。
こんな平日の真っ昼間だ。メンバーの残り二人のうち、不破はともかく、剣持なんて学校生活の真っ最中だろう。
それを思いつかない加賀美でもあるまいに。
首を傾げれば、少々気まずそうにしながら、それでも加賀美は言う。
「いえ。…..最近、お二人ともどこかお疲れのようでしたので。せっかくなら、と思いまして。」
もちろん、断られればそれまでですが。そう笑う彼に、本当によく見てるなこの人、と感心する。いつかどこかで、彼のことをろふまおのリーダーと称したけれど、本当にそうなんだよな、なんて思いながら。
「不破さんってこの時間、家っすよね?」
「たぶん?」
「昨日も夜遅くまで……..うん、配信してるわ」
「じゃあ寝てるな、これは」
スマホを取り出して確認する。そうして二人顔を見合わせて頷いて、カーナビに不破の住所を打ち込んで。無機質な機械音声に案内されながら、車をゆっくり滑り出させる。
他愛もない話をしながら街を走る。
___1日限りの逃避行は、こうして始まった。
少しばかり長くなる予定です,早ければ本日の24時にでも続編載せる予定、ですがまあ、分かりません。
どうぞよろしくお願い致します。