テラーノベル
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廃屋に入ると中はやけに寒気がしていた。床の木材は腐っている箇所があり、部屋の隅には蜘蛛の巣がこれでもかというほど作られて、生活していたであろう面影こそあるけど机も朽ちていて、カーペットは薄汚れており明らかに年季の入った廃屋というのが見てわかった。
「なるほど…これは……。そうねぇ大分汚いわねぇ……。」
「まぁ廃屋って言っててきれいな感じだったらそれはそれでちょっと怖いだろ?」
「とは言ってもねぇ?汚いのはともかく木も腐ってるのはちょっと怖くない?」
「足元に注意しながら先に進もうか。」
「それにこの空気感……。皆も何となく察してるだろうが怨霊系統の魔物が住み着いてるだろう。」
「対処方法はちょっと面倒だからどうしたものか……。」
「実態はあるから斬撃、打撃、刺突これらすべて通るから問題ない。が、楽に倒したいならフェニックスの尾があるならそれを使えば楽に倒せるだろう。」
「結構貴重品よあれ?」
「最悪の場合はそれを使って倒そうっていう感じか。」
「あくまでも私たちの目的はリカルカ様を助けに行くということは忘れるでないぞ?」
マーカスにそう念押しされみな頷きランタンを片手に先に進む。元の所有者は恐らくそれなりの地位を持っていた貴族らしく、見た目以上に広々とした空間が広がっていた。
使用人らの部屋がいくつもあったり、キッチンもそれなりのサイズ感をしており、リビングと思わしき箇所は大人数で食事ができるようになっているため、もはや食堂と言っても差し支えないほどだ。内部構造が分からないため迷いながらも何とか2階にはたどり着けた。
二階の造りも似たような形になってるが、どうやら2階は元所持者の家族たちが使うような空間が広がっており、子供部屋のような場所やその両親の寝室に趣味の書斎部屋と思わしき場所と、かなりプライベートな空間が広がっていたが、何故こんな暮らしをしていた人物がここを手放すことになったのか、それまでは探索をしてる訳では無いので分からないが、いずれにしてもこの家を手放した、もしくは所有者が居なくなったのにはそれ相応の背景があるに違いない。一般人には縁遠い話であるため想像もつかないが…。
「この辺で止まれ。」
マーカスが待機の指示を出しその後とある場所に指を指す。その先にはリカルカの他に大柄の男と白を基調とした女が立っていた。
「ここから先は私一人で進んでいく。例の作戦通り動いてくれ。争いになるかもしれないが私らがリカルカ様を救出し、ハルモニアに戻ればこちらの勝ちだ。」
「分かった。それじゃあ頼みましたマーカスさん。」
「……望みの品を持ってきた。」
「へぇ?ちゃんと来たんだな爺さん?」
「マーカス!」
「この通り風のクリスタルを持ってきた。」
そういいクリスタルを見せる。黄緑色の輝きを放つそれは、素人目から見ても高価な宝石よりも価値あるものだと分かるだけでなく、そのクリスタルから溢れ出る魔法エネルギー『魔素』がそれを本物と言わしめる。
「確かに本物のようね。それじゃあそれを渡しなさい。そうしたらこの娘を解放してあげる。」
「いや、先にリカルカ様をこちらに渡すのが先じゃ。」
「おいおい…立場わかってねぇな?王女様の命はこちらの手にあるんだぞ?従うのは当たり前だろ?」
「申し訳ないがお主らのような人物が物を渡して素直に従うとは思えない。事実私は似たような場面に出くわしたことがあるが、人質を取っていた輩は要求品を受け取るや否や、その人質を見せしめのためにその場で切り伏せた。故にお主らもそうじゃないかと勘ぐるのは当たり前。」
「…こちらとしてはそれを渡してくれれば彼女の無事は保証すると言ってるのに信用がないと?」
「街の子供を人質にするような奴らに信用も何もない。」
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「けど、仮に俺らがこの女を先に渡したとてあんたが風のクリスタルを渡すとも思えねぇのもまた事実だ。」
「このままでは事態は変わらず平行線を辿ります。早く折れてこちらの要求を飲みなさい。」
「…やはりそう上手くは行かぬか。リカルカ様ご準備を!この屋敷に太陽の輝きを!」
その合図とともに懐に隠した衝光石をベルトに強く当て、その後その石を空に投げる。軽く投げたその石が最高地点に達した時強く光を放ち、リカルカを攫った2人組の目眩しに成功。すぐさまヴェルド達がやってきてリカルカを保護してそのまま屋敷を立ち去ろうとする。
「こっちだ!」
「貴方は…!?」
「仮を返すタイミングを得たから返しに来た。」
「あ、ありがとうございます!それとほかのおふたりは……。」
「まぁ付き添いというか成り行きで来た人って認識でいいわよ。」
「旅は道連れ世は情けとな?」
「すいませんありがとうございます。」
来た道を戻ろうとした時、その道から増援がやって来た。
「なに!?」
「うごぁぁぁぁ……目がァ…目がぁぁぁ……。」
「狼狽えないのバル。こうなることを読んで仲間を配置したんでしょ?」
「うがぁぁぁ……。そ、そうだな『ビスター』俺の頭じゃ足りねぇところを補ってくれる良い奴だ。」
「おだてても何も出ないっての。」
「これも予想通りというか作戦のうちみたいだったらしいけどどうする?」
「やむを得ん。事を構えたくないが相手がやる気ならこちらもやらねば死んでしまう。背後は私が請け負う。お主らはあの二人を!」
「わかった!」
「とっとと蹴散らしてやるわよ!」
「さぁ!構えろ若者達よ!」
「……皆さん、私も戦います!」
「リカルカ!?アンタやるのか?」
「王とは部屋でふんぞり返ってるだけでは民はついてきません。自らが先導しその姿を見たものが認めてくれ信頼を勝ち取り、いずれ王と言われるのです。全てを失った私はその道を辿らないといけない、むしろもっと過酷な道を辿るのです。戦えなくてどうするのでしょうか?」
「王女様とっても強気で素敵よ!女だからって下に見ちゃダメよヴェルド?」
「下に見た訳じゃないが…まぁ、それはそうだな!なら、この場を切り抜けるぞリカルカ!」
「えぇ、お力を貸してください皆さん!」
その呼応に風のクリスタルが反応し。ヴェルド一人にのみ聞こえる声で問いかける。
ー汝に問いかける。貴様はこの先役目を全うする為だけに生きるか?それとも緩やかな死を待つか?ー
ここは…精神世界的な場所?夜空のような空間に目の前にあるのは2メートル以上もあるクリスタルの塊……。そして今聞こえてるこの声は俺が目を覚ますきっかけとなった声か?
ー苦しむ道を選ぶかこの世界でゆっくりと意識を手放し楽となるか?さぁ、選択せよー
なるほど…今一度俺にその選択をさせるわけか。だが、俺の道はもう決まってる。一度は手放したこの命。クリスタルの声が望むのは『役目』を全うすることだろ?死んだ俺にもう人権もクソもない。ならば、苦しむ道だろうと俺はそちらを選ぶ。
ーそうか。それもまた選択だ。では我の後ろの光の先にと進め。それがイバラの道の片道切符だ。ー
当たり前だ。どんな道だろうと俺は進む。あの嵐の中でさえ漁にでた船乗りだ。どんな荒れた世界でも歩むことはやめねぇよ。
「ヴェルド?ヴェルド!ボーッとしてる暇はないよ!」
「あっ?あ、あぁ……。やってやるぞ!」
「待ってください!風のクリスタルが輝きを増して……。」
「俺の前にクリスタルが?」
「あの光…そして彼の前にそのクリスタルがあるということは……。」
「なんかよくわかんねぇけど力が湧いてくる。負ける気がしないは言い過ぎだが、そう変な自信を付けさせてくるくらいには戦えそうだ。」
「間違いない。お主はクリスタルに選ばれた『光の戦士』だ!」
コメント
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人質交換の緊迫感がすごく伝わってきました。特に衝光石で目眩まし→救出、からの増援出現という流れがテンポ良くて。リカルカの「王は民が認めて初めて王」という覚悟も素敵だし、クリスタルに選択を迫られてイバラの道を選ぶヴェルドの姿に胸が熱くなりました。「光の戦士」の誕生、続きが気になります!