テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「死にたい」
理由もなく口から出た言葉
「えっ、どうしたの?大丈夫?なんかあった?」
心配してくれる親友、なんだか申し訳ない気持ちになる
「ううん…何もない」
「心配してくれてありがとう」
「……そうか…何かあったら俺に相談しろよな」
「うん」
なんで死にたいなんて言葉が口からでてきたのかは分からない、だって今の俺は死にたいだなんて思っていない
…………はず
──────────
思えばずっとおかしかった
いつもより濃い隈、隙間から見える手首の傷、首に巻かれた包帯
「ううん…何もない」
こんな状態で何もない訳がないだろ、そう言いそうになったがグッと堪えた
「……そうか…何かあったら相談しろよな」
何かあったら相談しろとは言ったけどあの様子じゃきっと相談せずにずっと1人で抱え込むだろうな
もっと俺を頼ってくれよ…
──────────
「ただいま」
俺以外誰も居ない家
両親は出張でしばらくない
「……」
無言で棚からカッターを取り出す
そしてそれを………
ピンポーン
「?」
突然インターホンが鳴った
出るか迷ったが切るのは出た後でもいいので
出ることにした
「はい」
「宅配便でーす」
「…今開けます」
ガチャ
「ここにサインお願いします」
「はい」
どうやら母宛の荷物だったようだ
出張から帰って来たら渡さないとな
「……ふぅ」
これでようやく切れる
カチカチ
カッターの刃を手首に当ててスライドさせる
切った所からプツプツと血が出てくる、この瞬間が好きだ
「ふふ…」
気分が上がってきて何回も何回もスライドさせた
「痛…」
深かったようでいつもより痛かったし血がたくさん出てきた、止まりそうにない
でも俺はそんな事はお構い無しに別の所を切り始めた
別に死にたくてこんな事してるわけじゃない、こうでもしないと生きてると実感できないからだ
こうして血が流れているのを見ると、ああ、俺って生きているんだなと思うがそれと同時になんで俺は生きているんだろうとも思う。
何回も言うが別に俺は死にたいわけじゃない
「あちゃー…」
「流石に切りすぎたかな」
気づいたら俺の腕は真っ赤に染まっていた
「うーん…とりあえず水で軽く流して、その後は深いところだけ包帯巻いてればいっか」
立ち上がって洗面台に行こうとしたその時、俺はバランスを崩して倒れた
「あは…貧血かな…」
「うーん…困ったな、起き上がれないや」
このままだと血が乾いて落としづらくなると焦った俺はなんとか起き上がろうとするがやっぱり無理だった
「まあ…たまにはこんな日があってもいい……か…」
俺はそのまま意識を失った
──────────
あの後心配になった俺は「大丈夫か?」とLINEした
だが10分経っても30分経っても返信が来ることはなかった
いつもなら分以内には何かしら返信が帰って来るのに…
「まあ…そんな日もあるよな、忙しいだけなのかもしれない」
そうは思ったが心のどこかで胸騒ぎがしていた
「…後30分経っても返信が来なかったら家に行こう」
何事もなければいいが…そう思いながら俺は時間が過ぎるのを待った
30分後、返事は返ってこなかった
電話をかけても出ない
俺は家へ向かうことにした
道中何度もメッセージを送ったし電話もした
でも返事が帰って来ることも電話に出ることもなかった
そうこうしてる間に家に着いた
「はぁ…はぁ…」
走ってきたから息が荒い
ピンポーン
「………」
ピンポーン
インターホンを押しても誰もでてこない
「…」
なんとなくドアノブに手をかけてみた
「あれ…開いてる?」
嫌な予感がした俺はドアを開けることにした
──────────
目が覚めるとそこはベッドの上だった
なんでここにいるんだろう…確か俺は倒れてそのまま…
「よかった…!やっと目覚ました…!」
「亮太…?」
どうやら俺をベッドまで運んでくれたのは俺の親友らしい
「心配になってLINEしても電話しても出なかったから家まで来ちゃった」
「そしたら家の鍵開いてるんだからびっくりしたよ」
「鍵…?」
宅配便が帰った後俺は鍵を閉めるのを忘れていたらしい
「全く…開けたのが俺じゃなかったら今頃警察呼ばれてたんじゃない?」
「一瞬事故現場かと思った…」
「うっ…ごめん」
「まあ…今こうして生きてて俺と話してくれてるんだから許してあげる」
「うん…ありがとう」
あーあー…汚いもの見せちゃったな
「汚いもの見せてごめんな」
「大丈夫?トラウマになったりしてない?」
「悠斗の血は汚くないから大丈夫だよ、トラウマにもなってないから、安心してね」
「ならいいんだけどさ…」
トラウマになってないのか…よかった
「ところでさ、聞きたいことがあるんだけど…」
「いいかな?」
「いいよ」
「あのね、なんで自分を傷つけちゃったのかが聞きたくて」
「貧血になるくらい深く切ってさ…」
「うーん…」
そのうちこの質問されるとは思ってたけどいざされるとなんか気まずいな
「生きてるって実感する為…かな?」
「…ほんとに?ほんとにそれだけなの?」
「うん」
「少なくとも死にたくてこんな事してるわけじゃないからさ、安心してよ」
「でも朝死にたいって…言ってたよね」
「あれは…勝手に口から出ただけだから大丈夫だよ」
「それは大丈夫って言わないんだよ」
「…悠斗」
「…?わっ」
突然抱きしめられた
「辛かったね…大丈夫だよ、これからは俺が守ってあげるからね」
そう言われたとき、辛くないはずなのに勝手に涙が溢れてきた
「この家には俺と悠斗しかいないんだからいっぱい泣いていいんだよ」
辛くない…辛くないはずなのに泣きつかれて寝てしまう程涙が止まらなかった