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「工藤。」
声をかけられて、私は振り返った。
そこに立っていたのは、山根沙綾先輩と白根梨里杏先輩。
(ああ、また何か言いたいんだ…)
私は少し身構えて、軽くため息をついた。
「なんですか…?」
沙綾先輩はにやっと笑みを浮かべながら、ゆっくりと歩み寄ってきた。
「お前な、付き合ってる噂流れて浮かれてんじゃねえよ。」
その言葉に、私は胸の奥で何かがざわつくのを感じた。
(噂が…広まっちゃったんだ…)
「それって、あなたたちに何か関係が…?」
私は冷静を保とうと必死に言った。
梨里杏先輩が不快そうに口を開く。
「ないけど。苛立っただけ。」
「……」
どうしてこんなことを言われなきゃいけないんだろう。
そのとき、後ろから低い声が響いた。
「なにしてんの。」
広瀬先輩の声だ。
(え、先輩!?)
振り向くと、広瀬先輩が私のすぐ後ろに立っていた。その表情はいつもと変わらずクールだったけれど、目の奥には何か強い意志が感じられた。
沙綾先輩と梨里杏先輩は、広瀬先輩を見て少し引き気味に立ち止まった。
「広瀬…」
梨里杏先輩が少し怖がるように呟く。
広瀬先輩は、私の前に一歩出て、二人に向き直った。
「噂が流れたら俺等は仲良くしちゃだめなわけ?」
その一言に、私は心臓が跳ねるのを感じた。
(先輩、私を守ってくれてる…)
沙綾先輩は少し考え込み、口を開く。
「そんなことないよ。」
「じゃあな。これ以上なんも言うなよ。」
広瀬先輩は、冷たく言い放ち、私の方をちらっと見てから、再び沙綾先輩と梨里杏先輩を無視するように歩き出した。
その背中には、何か強い力が宿っていた。
(広瀬先輩、すごい…)
私は、心の中で先輩に感謝しながら、ほっと胸をなでおろした。
「……ハイィ…」
梨里杏先輩がようやく口を閉じると、二人は何も言わずにその場を去っていった。
私は広瀬先輩に目を向けると、少し照れくさそうに目をそらした。
「良かった……ε-(´∀`*)ホッ」
先輩はあっけらかんとした顔で、私の方を見て言った。
「まあな。」
そして、ほんの少しだけ微笑むと、再び歩き始めた。
「行こうか。」
その声に、私は軽く頷いて、一緒に歩き始めた。
(先輩が守ってくれた…)
その気持ちが胸の中でどんどん大きくなって、私の顔が思わずほころんだ。
これが、私の守られた時間。
そして、先輩との絆がもっと深まった瞬間だった。