「空!!」
パイモンに案内されて、随分と遠い天穹の谷までやってきた。目に入ったのは、跪き、倒れゆく血まみれの空と、満足そうに笑む蛍術師。
「っ…!!」
魈の額に血管がうきだし、体全体に覇気を纏う。パイモンは慌てて離れた。
そうしないと、パイモンまでもが殺される気がしたから。
そんな殺気に満ち溢れた魈に蛍術師が気づかないわけがない。蛍術師は魈に気づくや否や、恐怖で動けなくなった。自慢のスピードも、魈を前にすると全く役に立たない。
「な…なんで…噂の仙人がここに…?あいつの口はちゃんと切ったはず…」
「なんだと?」
その発言はまさに火に油を注ぐようだった。魈がさらに殺気を増幅させる。
空の口を切った?我を呼ばせないために?
「お前、そのようなことをして、覚悟はできているのだろうな?」
「ぁ…あぁ……」
そこからは速かった。消えろ、魈のその一言。瞬きをしたあとにはもう、魈の槍が蛍術師の体を貫通していた。
「あいにくだが、我はすぐに空を治療できる場所まで運ばねばならぬ。お前に構う時間などない。」
魈は蛍術師に槍を突き刺したまま放置した。
苦しませて殺すようだ。
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