💛さんのポトフがあまりに美味しそうだったので…ちゃんとキノコ入れてるのが愛おしい
「ふぅ……」
今日のイベントの熱気が、まだ身体の芯に残ってる。俺がMCを務めてる番組の、初イベントは大成功だったと思う。
ただ進行役っていうのは演奏するのとはまた違う緊張感があるんだよな。ステージでの熱狂と、やりきった解放感と、ちょっとした疲労感。いろんな感情がごちゃ混ぜになったまま、俺は自宅のドアを開けた。
ガチャリ、と鍵を開けると同時に、ふわりと温かくて優しい匂いに包まれた。コンソメと、何か甘い野菜の匂い。
「おかえり、若井」
キッチンの明かりの下、エプロン姿の涼ちゃんが振り返った。その顔には、いつものふんわりした笑顔が咲いてる。
「ただいま、涼ちゃん。何、これ、めちゃくちゃいい匂いじゃん!?」
バッグをソファに放り出してキッチンに駆け寄ると、涼ちゃんは大きな鍋の蓋をそっと開けた。湯気の中から現れたのは、コトコトと煮込まれたポトフだ。
「ポトフだよ。若井、進行役でたくさん喋って、動いて、疲れたでしょ?あったかいものが一番だと思って」
俺は涼ちゃんの腰に手を回し、背中からぎゅっと抱きついた。
「涼ちゃん……ありがとう。泣きそうなくらい嬉しい。涼ちゃんの手料理が今日の俺の最高のご褒美だよ」
「もう、急に甘えん坊になるんだから」
涼ちゃんは笑いながらも、嬉しそうに俺の頭をポンポンと撫でてくれた。
「でもね、実はちょっと手こずっちゃってさ」
涼ちゃんは小さくため息をつき、鍋の中を指さした。
「この人参、中々ずっと人参しちゃってて。芯が強いから煮えてくれないんだよね。他の野菜はもうとろけてるのに、この子だけ頑固なの」
涼ちゃんが真剣な顔で人参について語るのがかわいくて、俺は思わず笑う。
「はは、涼ちゃんらしいな。人参と会話してるみたい」
「あ、でも、もうあとひと押しってところかな。ね、若井。ポトフもう少しでできるから、その間にお風呂入っておいでよ」
俺は涼ちゃんの顔を覗き込んだ。俺を慈しむような優しい瞳。涼ちゃんが俺の身体を一番に気遣ってくれているのが伝わってくる。
「んー、ポトフができるのをここで見てたいんだけどな」
「だめです〜、しっかり温まってきて。若井が戻ってくる頃には、この子もきっとおいしくなってるはずだから、ね?」
涼ちゃんはそう言って、俺の背中を優しく押し、バスルームへと促した。
「わかった。じゃあ、お言葉に甘えて。涼ちゃんのポトフ楽しみにしてるね」
シャワーを浴びてリビングに戻る頃、甘い匂いは一層濃くなっていた。
「よし!出来た!」
涼ちゃんが歓声をあげ、ポトフがテーブルに運ばれてきた。
深く透き通ったスープの中には人参や白菜、シメジにブロッコリーと色とりどりの野菜が優しいコントラストを作っている。
「どうぞ」と促されスプーンで人参をすくって口に運ぶ。
涼ちゃんは、自分の分には手をつけずに、まるで試験の結果を待つ生徒のように、不安げな表情で俺のことを見つめている。
俺はにっこり笑って見せ、人参とスープをたっぷりとスプーンに乗せ、口に運んだ。
「……あま。うわ、めちゃくちゃ甘い!」
俺が目を大きく見開いたのを見て、涼ちゃんは張り詰めていたものが切れたように、ふにゃりと笑った。
「よかったぁ!もう、煮えないかと思ってヒヤヒヤしたけど。でも、愛情込めて見守り続けた甲斐があったなぁ」
涼ちゃんが嬉しそうに笑う。
「最高だよ、涼ちゃん!人参も、芯までホロホロで甘いし、スープの優しい味が染み込んでて……これ、完璧だよ」
俺はポトフを食べ進めながら、ふと思い出したように言った。
「そういえば、元貴と見に来てくれたんだよね?ステージから見えたよ。マジで最高のサプライズだった。ステージで涼ちゃんと元貴見つけた時、びっくりしすぎて一瞬固まったんだからね。でも、涼ちゃんがずっとこっち見てるのわかってたから、いつも以上に頑張った」
「うん、だって、若井の進行役、絶対に見逃したくなかったから」
涼ちゃんは嬉しそうにポトフを一口食べた。
俺はポトフをもう一口食べ、涼ちゃんの手を取る。
「涼ちゃんの愛情、隅から隅まで染み込んでるよ。今日のイベントの成功も、俺が頑張れたことも、全部涼ちゃんのおかげだ」
ポトフの温かさと、涼ちゃんの温かさ。疲れていたはずなのに、満たされていく心臓の音だけが、やけに大きく聞こえた。
「ね、涼ちゃん。愛してるよ」
「……僕も」
涼ちゃんは照れながら、俺の指をぎゅっと握り返した。
繋いだ手はそのままに、俺は立ち上がって涼ちゃんの髪にキスを落とし、耳元で囁いた。
「ねえ、涼ちゃん。俺のダンス、かっこよかった?」
涼ちゃんは頬をピンクに染めて、すぐに頷いた。
「うん!誰よりもかっこよかったよ。リズムがすごく安定してて、観ててすごく気持ちよかった。芯がブレてないって感じ。かっこよすぎて僕泣いちゃたもん」
「本当?そっか。よかった…うれしいな」
涼ちゃんの飾らない素直な言葉が、ファンのどんな歓声よりも心に響く。もちろんファンの声援もものすごく力になるけど、やっぱり好きな人の言葉は格別だ。
ポトフを二人で平らげた後、体も心も満たされて、俺は思わず大きなため息をついた。
「はぁ〜、ごちそうさまでした。涼ちゃん、本当に美味しかった。もう、世界一のポトフだよ」
俺がソファに深々と体を沈めると、涼ちゃんは使った食器をさっと片付けて、マグカップを二つ持ってきた。
「お粗末様でした。はい、温かいハーブティー。これでゆっくりして」
涼ちゃんは俺の隣にちょこんと座り、マグカップを俺の手に渡す。その手のひらが少し冷たくて、俺は自分のマグカップを置いて、涼ちゃんの手を両手で包み込んだ。
「ありがと。ねえ、改めて思ったけどさ……」
涼ちゃんが小首をかしげて俺を見上げる。
「今日のイベント、俺は進行役として精一杯頑張ったけど、一番頑張ったのは頑固な人参を煮込んでくれた涼ちゃんだよ。だって、俺がシャワー浴びてる間もずっと、愛情込めて作ってくれてたんでしょ?」
涼ちゃんはくすくす笑って、肩に頭を預けてきた。
「えへへ。うん、精一杯の愛情を込めました!だって若井においしいもの食べて、癒やされて欲しかったもん」
涼ちゃんの声が、いつもより一段と甘く、優しく聞こえる。
「ね、涼ちゃん」
「んー?」
「涼ちゃんが作ってくれたポトフみたいにさ、俺たちの関係も、じっくり時間をかけて、愛情込めて、もっともっと温かいものになっていくんだね」
涼ちゃんは顔を上げ、俺の目を見て、ふわりと微笑んだ。その笑顔は、優しくて、とろけてしまいそうに甘い。
「うん。きっと、そうだね」
そして涼ちゃんは俺に寄り添い、二人で静かにハーブティーの温かさを分かち合った。
ご挨拶
フォロワー様が100人を突破しました。
いつも読んでくださっている皆さま、本当にありがとうございます✨
評価、コメント大変励みになっております。
実は私💛さんの沼に落ちてまだ日が浅く、他の書き手さんのように解像度が高くないので、読んでくださる方がいるか不安でした。まさか100人以上の方にフォローしていただけるなんて、本当に夢のようです。
いつも勢いだけで書いているのですが、♥️さんが出てくると重すぎるし、💙さんだとライトすぎるし。バランスのよいストーリーが書ける想像力と文章力が欲しいです😔
あと💛さん右固定は譲れないとして、お相手は♥️と💙どちらが人気なのかも分かってません(^_^;)ちなみに私は💙×💛派なのでそちらのストーリーが多くなると思います。♥️さんのも書きますけど、あまり甘い感じにはならないかな…できるだけ努力はしますが。
どこまで続くか分かりませんが、これからもお付き合いいただけると幸いです。
2025.10.20 まろん
コメント
2件
フォロワー100人、おめでとうございます🎉 このお話のおかげで、明日の晩御飯は人参入りポトフに決まりました🤭💕 私も💛ちゃん愛されの沼にハマってるので、♥️も💙もどちらでも嬉しいです❣️ また素敵なお話、楽しみにしています✨