「スズカ、君はどうやって記憶を取り戻したの?」
なんだ急に、と言わんばかりに俺をぽかんと見つめる
それもそうだろう、いきなり自分が話した記憶もないことを聞かれたのだから
「…元貴か、何を吹き込まれたの?」
そう聞かれ、そのまま元貴と話したことをそっくりそのままスズカに伝えた
するとスズカは難しそうな顔をし、ため息混じりに声を漏らした
「うーん、僕は秘密主義だから、教えられないな」
スズカの口癖だ
知られたくない事を聞かれたり、返答に困った時の口癖
そう言われてしまえば深くは聞けないし、聞こうとするのも気が引ける
でも、そう言いながらくすぐったそうに笑うスズカを見ると、そんな考えがふっとんでしまう気がした
「…ねえ、ヒロト」
「ヒロトに見せたいものがあって…」
そう言い手を引かれ連れられたのは、今まで踏んでいたふわふわとした白い雲の地面ではなく、青々しい草や
青い花、白い花、赤い花や黄色い花といった暖色の植物や、反対に寒色の植物が広がる花畑だった
「…綺麗、こんな所あったんだ」
「綺麗でしょ?ヒロトにだけ見せたかったんだ〜」
「ここの場所知ってるの、神様と僕と、ヒロトだけ」
みんな知らないんだよ、そういって凛と咲く一輪の花のような笑顔を見せる君に、不意に心をつかれたような、そんな気がしたのは気のせいだろうか
さりげなく目線を下に逸らすと、ひとつの青い花が目につき、しゃがんで茎を引っ張り手に取ってまじまじと
見てみた
「…あお」
「それね、”ブルーデージー”って言うんだって」
「へぇ、スズカ物知りだね、花言葉は?」
「花言葉は…」
そう時間を忘れるほどに花のことを話したり聞いたり、時にはかけっこをしたり寝そべったり
スズカといると、陽の光とはまた別に、どこかがぽかぽかと温まる気がした
「おれね、前世は楽器が扱えたんだ」
「ピアノもできたし、ギターもちょこっとだけ弾けた、フルートは大得意だったんだ〜」
「で、いつか俺のフルートで、誰かを笑顔にさせたかった」
そう寝そべりながら太陽に手を伸ばし、届くはずもないのに太陽を握りしめた
スズカのはじけるような笑顔を見ると、本当に太陽なんか捕まえてしまいそうな瞳で、指と指の隙間から差し込む日差しが、スズカを優しく照らして、美という言葉では足りないほどうつくしかった
「…綺麗だ」
不意に目が合った途端、ぽつりといてしまった
目を丸くして、ほんのり頬を赤く染めながら震えた唇を動かす
「あ、あぁ、ブルーデージーね、綺麗だよね」
そうそっとブルーデージーを撫でる
耳が真っ赤なのが丸見えだ
いつになったら”君が一番綺麗だよ”と言えるのだろう
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☆+☆)/サイッコー