テラーノベル
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こんばんは。
リクエストが残っておりますが、旧国のヤンデレが書きたくなったので書きます。
最初のみ全年齢、その後、R18、R18G(?)、R18Gとなります。
3話目からは殺人(国?)描写があるのでそこだけご注意ください。
『別れましょう、〇〇さん』
【ソ連】
「……もう一度言え」
地を這うような低い声。
聞き返しただけ。
なのに、日本の背筋がピシリと凍る。
「ですから、僕は――」
言い終わる前だった。
視界がぐらりと揺れる。
背中に走る強い衝撃に、息が詰まる。
「っ、ソ連さ──」
起き上がろうとした腕が動かない。
両手首は頭上でまとめられ、大きな手に押さえ込まれている。
身体のどこを向けても逃げ道がない。
まるで巨大な壁に囲まれたようだった。
「……何故だ」
見上げた先。
そこにいたのは、知らない男。
いつも穏やかに笑う人ではない。
安心する温もりを与えてくれる人でもない。
金の瞳がただ静かに、こちらを見下ろしている。
「何故、そんな考えになった」
「待ってください、話を──」
「話は聞いている」
遮る声は酷く落ち着いていた。
怒鳴られるよりずっと、怖い。
「俺はずっと、お前が安心して生きられる場所を作ってきた」
「お前が望むものを与えた」
「守って、大事にした」
大きな手が頬に触れる。
ひんやりとした体温が、今は恐ろしくて仕方がない。
「なのに何故、外へ出ようとする」
「俺から離れようとする選択がある」
その瞬間。
手首を押さえる力が強くなった。
ギリギリと骨が軋む。
「ソ連さん……ッ」
思わず名前を呼ぶ。
助けを求めるように。
すると彼は少しだけ目を細めた。
その穏やかさに、”いつもの彼”の姿が重なった。
「寒くないか」と大きすぎる軍服を掛けてくれた温もり。
「俺の後ろにいろ」と危険から守ってくれた背中。
「大丈夫だ」と落ち込んだ時頭を撫でてくれた大きな手。
どれも温かかった。優しかった。嬉しかった。
だから、信じていた。
この人は自分を大切にしてくれているのだと。
そのはずだった。なのに。
「やっと分かった」
ソ連の静かな呟きに、現実に引き戻される。
「俺の教育不足だったんだな」
「……え」
「居場所を教えたつもりだった」
大きな手が頭を撫でる。
いつもと同じ仕草、同じ優しさ。
なのに、もう何も同じには思えない。
「逃げたいと思わないように」
ゆっくりと抱き寄せられる。
胸へ押し付けられた身体は、指先一つ自由に動かせず、埋もれた視界は完全に塞がれた。
天井も、部屋も、世界も、何も見えない。
ソ連の声だけが聞こえ、ソ連の体温だけを感じる。
まるで存在そのものを包囲されたようだ。
「それでも足りなかった」
哀を孕んでぽつりと落ちる声。
「なら、もう一度教えてやる」
子供をあやすように背を撫でられながら。
「お前の居場所はここだ」
逃げ道のない腕の中で。
日本はようやく理解した。
あの優しさも愛情も本物だった。
けれどそれは、逃がさないための楔でもあった。
【イタ王】
「え?」
赤緑の眼が大きく見開いたかと思うと、漏れる笑い声。
「急にどうしたの?」
でも、日本の目は真っ直ぐで。
本気なのだと、嫌でも気づく。
「……あ」
「そっか」
笑みが薄れ俯く顔
「僕、頑張ったんだけどな」
影掛かって見えない表情は全て声に滲み出ている。
その頼りない響きが小さな棘となって、日本の心へ刺さる。
「たくさん”大好き”って伝えたし、幸せにするためになんでもしたし」
「……なんでだろう」
余韻を最後に、黙り込んだ彼。
二人の存在以外の有象無象が全て消えたような、不自然なほどの無音。
何時間にも思える静止の中で、空気が揺らぐ。
顔を上げた彼は、笑っていた。
眉を下げて、優しく目を細めて。
「ごめんね」
「そんなこと言わせちゃって」
慣れた動きで背を撫で抱き寄せる大きな手。
宥めるようなそれに、日本の思考が一瞬止まる。
「完全に思い上がってたなぁ」
なにか、違う。
僅かなズレに、意識が持っていかれる。
「僕の愛が伝わってなかったんだよね」
…違う。
日本の首筋に冷や汗が伝う。
愛されてるのはよく分かってる。
彼の料理に喜ぶ僕を見つめる柔い視線も。
ちょっと苦しい力強いハグも。
軽く触れるだけの優しいキスも。
心をじんわり温める熱があった。
それが僕には不似合いだと思っていたのに。
それ以上を求めるほど、強欲ではない。
「安心して」
何を。
何故か震える声は、視線に掻き消された。
息が詰まるほど強くなる腕の力。
深く淀んだ瞳に灯る輝きは、太陽のように眩しい。
「今度は失敗しないから」
気づけばもう、逃げ道なんてものは無かった。
冷たい地下牢で、無機質な機械音と号哭のような悲鳴だけが響く。
涙と汗と、何かも分からなくなったものを垂れ流す日本は、未だ彼の腕の中。
拷問じみた過剰な快楽が脳を焼き、精神を狂わせていた。
「最初からこうすればよかったんだ」
「僕なしじゃ眠れなくなるくらい」
「僕なしじゃ笑えなくなるくらい」
「僕なしじゃ生きれなくなるくらい」
「たくさん愛してあげればよかった」
何か言っている気がするが、何も分からない。
身体は彼だけを盲目に求めている。
自分が自分で無くなるような感覚。
それを自我は、幸せだと信じ込んでいる。
「…ああ、可愛い。大好きだよ、日本」
絡めた舌から唾液を焚べ、指先で腹の皮を這う。
それだけで甘い声が零れ、黒い瞳が輪郭を失っていく。
「身体の芯まで僕の毒を馴染ませてあげる」
「ずっと僕の腕の中で、蕩けていようね」
『あいしてる』
耳元から流し込まれる、蜜のような五音。
最大限の幸福を込めたそれがべっとり絡みついて、混濁の中心へと染みていった。
【ナチス】
「……は?」
数秒の沈黙。そして。
「そうか」
「そうか、そうか」
彼は笑いだした。
けれど、すぐに笑みは鳴りを潜め、凍えが襲う。
「俺を捨てるのか」
静かな声には隠し切れない怒りの色。
しなやかな指がゆっくりと日本の顎を掴む。
「俺が何をした」
「何が不満だった」
「何が足りなかった」
「……違うな」
彼の指に力が入る。
「何故そんな発想になった」
「誰が君を唆した」
赤黒い衝動が視界を奪う。
けれど、日本の意志は固かった。
「違います。これは、自分の意思です」
恐怖心を噛み殺し伝えた真っ直ぐな想い。
瞳の奥を広げた彼の顔から完全に表情が消えた。
「嘘をつくな」
「君がそんなことを望むはずがない」
「君は俺を愛していて、俺も君を愛している」
「それで完璧だっただろう」
言葉が止んで、訪れた完全な無。
その後で、大きな音を立てた彼の拳が、隣の壁を破壊していた。
「何故壊そうとした!!」
荒げた声で剥き出しになる激情。
だが次の瞬間には、何事も無かったように静寂が場を包む。
「……ああ」
最初に響いたのは、全てを理解したような嘲笑。
「俺が悪かったんだ」
「自由を与えすぎた」
彼はしばらく日本を眺めていた。
怒りも憎しみも消えたような穏やかさで。
まるで芸術品を鑑賞するように。
「……本当に綺麗だ」
指先で頬をなぞる。
瞳を覗き込む。
愛おしそうに。
惜しむように。
「俺はずっと勘違いしていた」
「生きている方が幸せだと」
「自由でいる方が美しいと」
「それが間違いだった」
その声には後悔すら滲んでいる。
「自由は君を遠ざけた」
「時間は君を変えてしまった」
「世界は君を穢そうとする」
広げた腕は僕を包み、世界を閉じた。
「……もう十分だ」
彼の腕に力が入る。
逃がさないように。
壊さないように。
矛盾した優しさで。
「君の時間を止めてやろう」
彼の手が懐へ伸びる。
その隙間から見えた、一対の電極。
ヒュッ、と呼吸が嫌な音を立てる。
「……なに、を」
「怖がらなくていい。苦しみも、傷も与えるつもりはない」
輝きを取り戻した瞳には迷いがない。
脅しでも、衝動でも、狂乱でもない。
長い思考の末に辿り着いた結論。
だから、微笑む。
心から愛おしそうに。
「もう二度と、君を穢させない。裏切らせない」
「最高に美しいまま、永遠に」
「俺だけを映してくれ」
【日帝】
「……そうか」
日本が言葉を続けようとする。
だが彼には何一つ届いていない。
昏く赤い虚ろな目で、ただじっと、床を見つめている。
「またか」
「また守れなかった」
日本が首を振る。
「違ッ…そういう意味じゃ…!!」
だが、やはり届かない。
「俺は何のためにいた」
決壊した感情が雪崩のように溢れ出す。
「何のために戦った」
「何のために耐えた」
「何のために、お前の傍に居続けた」
段々と掠れ、震える声。
「結局、何一つ守れなかったじゃないか」
握り締めた拳から、紅が一滴、ポトリと垂れる。
「どうしてだ」
「どうして俺は」
「どうして愛する我が子一人すら守れない」
畳の溝に染み込み、瞬く間に広がる赤の大地。
鉄臭い香りが、かの”後悔”を呼び起こす。
「また奪われるのか」
焦土に崩れ落ちる兵士の背が、そこにはあった。
ぴたりと止まる波。場を包む沈黙。
胸を抑えた日本が口を開く、その時。
「……ああ、そうか」
ゆらり上を向く彼の視線が、日本と交わる。
瞬間、麻痺し崩れた身体を駆け巡る悪寒。
「簡単な話だったな」
異様な雰囲気を纏う彼は、酷く穏やかだった。
「誰かがいるから奪われる」
笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がる。
「世界があるから傷付けられる」
刀の柄に手を添え、引き抜く。
「なら」
そして、しゃがみこんで抱き寄せる。
日本の左胸と、彼の左胸。
向かい合って重なる延長線に突き立てられた、恐ろしい気配。
逃げろと叫ぶ頭が捉えたのは、確かな幸福の音だった。
「誰もいない場所へ、共に逝こう」
…ああ、これが、”死”か。
優しくも力強い、逃げ場のない終を目の前に、冷えていく思考。
それでようやく、日本は自分の鼓動が暴れていることに気付く。
どくどくと。
耳障りなほど大きく。
はちきれそうなほど強く。
だが。
重なった胸の向こうから聞こえてくる鼓動は違った。
静かだった。
まるで、眠る前のような穏やかさで。
一定のリズムを刻んでいる。
「大丈夫だ」
震える背をゆっくりと撫でられる。
服に赤く広がり残る熱が、体温を奪って震えを増す。
「安心しろ」
決して一致することのない二つ。
ただ一拍、鼓動が重なったその時。
「なんの脅威もない平和な世界で」
「永遠に護ってやる」
突き抜ける衝撃。
激しく暴れていた鼓動が止まる。
穏やかに鳴っていた鼓動も止まる。
ようやく二つは、同じ時を刻んだ。
コメント
11件
おお、不穏系…、良い(吐血)
あぁ、素晴らしい。 私の望んだ世界がここにある… 最高でした…ありがとうございます!
コメント失礼します🙇♀ 執筆お疲れ様です! 旧国の皆様の歪んだ愛をこんなに美しくそして妖しく表現してくださり満足感があります✨ 特にソ連さんの愛情表現が解釈一致で凄く満たされました!
#テラーノベルは愚痴や病み投稿をする場所じゃないって愚痴事くらい知ってます。