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夜。
リビングの電気はついているのに、やけに暗く感じる時間帯。
ソファに沈み込んだほとけは、ぽつりと声を落とす。
💎「……今日さ」
返事はない。
みんなそれぞれの作業をしている。
ないちゃんはスマホを見て、いふくんはパソコンに目を落とす。
アニキはキッチンでコップを洗っている音だけが響く。
💎「僕、なんでこんなに疲れてるんだろ」
自分でも理由が分からないまま、僕は天井を見た。
💎「別に、なんかあったわけでもないのにさ……ずっと胸の奥がザワザワする」
その声を聞いたないちゃんが、そっと顔を上げる。
🍣「比べた?」
——言葉が、胸に刺さる。
💎「……え」
🍣「今日、他の人見てさ、
“すごいな”とか、“自分はまだだな”とか、思ったやろ」
見透かされすぎていて、逆に笑いそうになる。
💎「……まあ、うん」
僕はゆっくり体を起こす。
💎「SNS見てたらさ、
同じ時期に始めた人が、もう次のステージ行ってて……」
🐱「あるあるやな」
いふくんが目を上げずに言う。
🐱「自分が止まってる気になるやつ」
💎「そう、それ」
僕は頷く。
💎「別に、その人が悪いわけじゃないし、むしろすごいと思う。
応援したい気持ちもある」
🍣「でも?」
ないちゃんが続ける。
💎「……でも、比べちゃう」
声が少し小さくなる。
💎「“自分は何してんだろ”って」
その瞬間、キッチンの水音が止まった。
アニキがタオルで手を拭きながら戻ってくる。
🦁「それさ」
アニキは、僕の前の床に座り込む。
🦁「“頑張ってない”って思っとるん?」
僕は首を振る。
💎「頑張ってないわけじゃない。むしろ、ちゃんとやってる」
🦁「じゃあなんで苦しいん?」
少し考えてから、僕は答える。
💎「……結果が見えないから」
空気が、すとんと落ちる。
💎「ちゃんとしてるのに、
誰かと並べたときに、数字とか反応とかで負けてる気がして」
🐱「“気がして”な」
いふくんが静かに言う。
🐱「実際に負けてるわけやない」
💎「わかってる」
僕はちょっと笑った。
💎「頭では、めっちゃわかってる」
でも、少し間を置いて口を開く。
💎「……正直さ、比べてた相手、知らん人だけじゃないんだよね」
ないちゃんが、すっと顔を上げる。
🍣「……誰?」
💎「りうちゃん」
空気が、ぴたりと止まる。
💎「りうちゃんはさ」
僕は膝の上で指を絡める。
💎「素直で、まっすぐで、
“好き”とか“楽しい”をそのまま外に出せるから」
💎「それがちゃんと届いてる感じもして……」
🐱「うん」
いふくんが静かに相槌を打つ。
💎「僕はさ」
声が少し震える。
💎「考えすぎるし、遠回りするし、
“これでいいのかな”って、いつも止まる」
💎「同じ場所にいるはずなのに、
隣見たら、りうちゃんの方が前に進んでる気がして」
🦁「それ、一番しんどいやつやな」
アニキがゆっくり息を吐く。
💎「りうちゃんが悪いわけじゃない。
むしろ、すごいと思ってるし、尊敬もしてる」
💎「でも、身近だからこそ、
“なんで自分はできないんだろ”って思っちゃう」
💎「知らない人より知ってる人の方が、もっともっと……辛いッ」
アニキが目を細める。
🦁「近い存在と比べるのは、
“追いつきたい”って気持ちがある証拠や」
🦁「嫉妬って言葉で片付けられがちやけど、
本当は“置いていかれたくない”だけやろ」
僕の喉が鳴る。
💎「……うん」
小さく、でも確かに頷く。
🍣「りうらは、りうらの進み方。
ほとけは、ほとけの進み方」
ないちゃんが、いつもの少し強い口調で言う。
🍣「比べたら、どっちかが苦しくなるだけじゃん。
でも、比べてしまった自分もちゃんといるでしょ」
🍣「それ、悪いことじゃないじゃん」
僕は目を伏せる。
💎「……でも、羨ましいって思った自分が、嫌で」
🦁「嫌になるほど、真面目なんやって」
アニキが笑う。
🦁「ほんまにどうでもよかったら、比べへん」
その言葉に、胸の奥が少し緩む。
💎「比べて、落ち込んで、
それでもまた明日も頑張るのって、しんどくない?」
静かだけど、正直な声。
ないちゃんが立ち上がって言う。
🍣「しんどいよ」
「すっごく」
「だから」
ないちゃんは僕を見る。
🍣「一人でやらなくていい」
その言葉に、胸の奥がじんわり熱くなる。
🍣「比べて苦しくなったら、
“今しんどい”って言っていいんだよ」
ほとけは、小さく息を吐いた。
「……そっか」
「そや」
「比べてしまった自分を、否定せんでええ。
そのまま、ここに持ってきたらええ」
時計を見ると、もう遅い時間。
立ち上がりながら、ほとけは思う。
――比べてしまう夜があってもいい。
――苦しくなる自分がいてもいい。
まだ答えは出ないけど、少なくとも今は一人じゃない。
第7話
「“ちゃんとしなきゃ”って、誰のため?」
――無意識に背負っていた役割が、少しずつ息を苦しくする。