ばにらんど×音鳴ミックス
前編
自衛お願いします
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「それ恋じゃん」
「え?」
タコから出てきた言葉が余りにも簡潔すぎて一周まわって分からなくなる
「だーかーら、それ恋じゃんって言ってる⤴︎」
「いや、え、だって…恋ってあの恋?」
「その恋以外何がある?え、ピュアボーイ?」
少しむっとしながらも自分の中にかかった霧のようなものが少し晴れたことで本当に恋なのかもしれないと思う。
生まれてこの方犯罪と車にしか興味が無かったのに。本当に恋なのだろうか。よく分からない。
「ランドさん。とりあえず会ってみたらどうですか?何かわかるかもしれませんよ。」
会話を聞いていたケインが無機質な声で言う
このロボットは人間よりも人への思いやりがあるんじゃないかと考えながらタコをちらりと見る
「そう…だね。1回会ってみようかな。」
とは言ったものの別に毎日会っているし、なんならもうすぐ帰ってくるだろう。
しかし何故だろう。ただ会うだけなのに少し怖くなった。
恋、か。
ケインに礼を言って外に出る。タコが騒いでたけどほっとけば良いだろう。
外に出ると白い息が夜の空に溶けていく。 12月も始まってから少し経ち、外は随分と寒い。
ポケットの中にある箱から1本取り出して煙を吐きながら一息つく。
“プリズン今出た〜帰るわー”
ノイズ混じりの無線が入り少し強く鼓動が鳴る
思い当たる節はあったのかもしれない。
少し高い声や大袈裟な笑い方、たまに拗ねてるとことか……
自分でも気付かずに目で追っていたのだろう。
……かわいい……愛おしい……?
普通の同僚だったはずだ。一緒に警察を辞めて、一緒にこの町に違法入国してきた仲間の1人。特に特別な感情は無いが強いもので結ばれている関係。
…けれど恋だと言って納得するような感情が自分の中から湧き出てきて思い知らされる。
本格的にこれは恋なのかもしれない。
深く溜め息を吐きながら手の甲を額に当て天を仰ぐ。
俺は音鳴が好きだ。
いっその事音鳴に正直に伝えてしまおうか
吐き出してしまえば少し楽になるかもしれない
ほんのり暖かく少し胸が痛いこの気持ちを
音鳴はどんな反応をするだろうか
もう一度夜空に白い息を吐き出した。
いや〜ほんまこの街の警官は真面目だなぁ!
ちょーっと銀行からお小遣い頂戴しようとしただけやろ
反省の余地がないからってプリズンまで送るか?
はぁ〜
今日はついてない!
“プリズン今出た〜帰るわー”
適当に無線を入れて豪邸に車を走らせる
しっかし本当に寒いな
流石にコタツの季節だろう。帰ったらケインにお願いするかー。
こったつこったつと口ずさみながら豪邸前のガレージに車を止める。
玄関に向かう途中にあるベンチでばにが一服しているのが見えた。
「ばに〜ただいま〜」
「おかえり音鳴。プリズンお疲れ様」
「ほんっと疲れたわ〜。あ、火頂戴?」
ポケットから最後の1本を取り出し、箱を潰しながら口で咥えてばにに近づける。
ばにはビクッとなったかと思ったら咥えていた煙草を落としてしまった。
え、どうした?寒くて凍えたか?
「あ、ごめん…」
「……いや、大丈夫」
そう言ってばには落ちた煙草を踏んで火を消した。
……ちょい気まずいか
仕方なく自分の持ち物の中からライターを引っ張り出して火をつけると、一日の疲れを煙に乗せてめいっぱい吐き出す。
何とも穏やかな夜である。
真っ黒な空に散りばめられた星を静かに眺めているとばにがぽつりと 呟いた。
「ねぇ…音鳴」
「ん?なーに?」
「……好きだ」
「……へ?」
貴重な1本が空いた口からぽとりと落ちる
口が開けっ放しのままばにの方を見るとばにも此方を見ていた。
「俺、音鳴が好きだよ。友達としてはもちろんだけど、恋愛としての意味で」
「え?、……え?」
ばには少し震えがかった柔らかい声で言い、見つめてきた。
思考が停止し状況が理解出来ない。
何とか何か返そうと思い口を開く。
「えーっと、、、、Love?likeじゃなくて?」
「…Loveの方」
何を聞いてるんだ俺は
まじですか
ばにさん
まじ、ですか、えぇ?
動揺しすぎて頭の整理がつかない。
「ちょ、ちょっとたんま!!!」
叫ぶと同時に走り出していた。
ばにが俺を呼ぶ声を無視して、 真夜中の街に向かって俺は無我夢中で走り続けた。
「はっ、はぁっ、はあっ、…ッはぁ〜〜」
流石に体力の限界を感じ道路の脇にしゃがみこむ
まじか、いやまじで?
Love?lagでもroughでも無くLove??
俺の聞き間違いとかじゃない??
………一旦落ち着くか、、
…いや落ち着いてられるかぁ!
あのばにが、俺を好きだって言ってるんやぞ?
全然気づかんかったな…
俺が鈍感なのか?
別に、嫌とかじゃないけどむしろ嬉しいけど、
……いやそう言う問題じゃなくて!!
色んな考えがぽんぽん出てきて頭の中をぐるぐると駆け巡る。処理がしきれずに1人で悶えて頭を抱える
んな”ぁ〜〜〜!!!考えても分からんてぇ…
腹減ったな…
このまま考えてても埒が明かない
とりあえず何か食べよう
そう思って自分の持ち物の中を確認すると、前にレダーがくれた特製ホットドッグとやらが目に入った
具体的にどこが特製なのかは教えてくれなかったが“疲れた時に食べてみー“とだけ言われていた。
まあ、これでいいか。
取り出したホットドッグに大きく口を開けてかぶりつくとソーセージがパリッとしていてケチャップとマスタードの酸味がよく合う。
咀嚼する度に口いっぱいに肉の旨味と小麦の香りが広がり思わず目をつむる。
これ程シンプルな料理なのにこんだけ美味いのはレダーの腕だろう。
さて、これからどうするか…
ホットドッグをぺろりと平らげるとまた現実に引き戻される
今、帰ったところでばにとえぐい気まずくなる
無理!それは絶対無理!
車…はないし第一ここが何処なのかわからん
そもそも帰れるのか?
……まぁ何とかなるだろ
とりあえずめっちゃ眠い。もう外でいいから寝てしまおう。
少し見渡して見つけたベンチに横になる。
心做しか身体がポカポカするし寝れそうだ。
全ての思考を放棄して俺はベンチで丸くなった
夢を見た
なんかめっちゃ暑っつい夢
なんだここ、サウナか?
汗が溢れ出てきて止まらない
心臓もドクドクしているような気がする
息が…苦しい…?
はっ……はっ…はっ、はぁっ、はあっ
はっ
ゆ、夢か…
……………?
なんかおかしい
喋れない、喋ろうとしても唸り声のようなものが出るだけである。
困惑しながら喉に手を当ててみて、驚愕する。
首を掴もうとした手にはあったはずの指がなく代わりに茶色っぽいぶにっとしたものがついていた。
そう、猫の肉球そのものだ。
は?
わけも分からず立ち上がろうとするがよろけて上手く立てなかった。
まあ二本足で歩く猫など到底いないわけで至極同然のことである。
まて、待て待て待て
ど、どうなっとるんこれ?
え、俺猫なん?
長い溜息を吐き出した。
もう考えるのをやめよう。色んなことが一気に起こりすぎて思考がバグるわ。
とりあえず……むっっっちゃ寒い
そりゃそうだ。今の俺裸同然だもんなぁ…
一先ず暖を取れる場所を探しに行こう。
俺はベンチを飛び降りて、慣れない4本足で街に続いているであろう道を駆け抜けた。
暫く街の中心部に向かって走り続けてやっとのことでレギオンに辿り着いた。 いつものように人が集まっており賑わっている。
その人影の中に見慣れたホットドッグ屋を見つけた。
レダーだ!!!
俺は一目散に駆け寄っていく
「はーいまいど〜………って何だこの猫。」
接客を終えたであろうレダーと目が合う。
レダー!!助けてくれ!寒すぎて死にそうなんよ。
言いたいこととは裏腹に俺の口からは“んな〜”
という何とも情けない声が出る
「えぇ?……なぉーん…」
いや、ちゃうねん。共鳴しろとは言うとらん。
だから、助けてって言ってんの!!
“んな”〜〜”と声が濁る。
「なーに?…お腹すいてんの?」
駄目だ。伝わらん。
えぇいこうなったら強行突破だ
レギオンの塀に上り狙いを澄ましてレダーの肩に飛び乗る。そしてレダーのアメリカンドッグ柄のパーカーの中にするする潜り込んでいく。
「え、ちょっと、何してんの?……はぁ、一旦店閉めるか。猫の毛入ったら嫌だし。」
逃げ込んだパーカーの中は想像以上に暖かく、喉からゴロゴロという音が漏れ出る。
レダーはパーカーの中を少し覗き、何も言わずに車に乗り込んでエンジンをかけた。
一先ずの安心に気が抜けたのか人の体温を感じながら静かに眠りにつく。
起きた時車は見慣れた場所で止まっていた。
レダーと共に豪邸の中に入るとリビングの方から声が聞こえる。
ぐち逸とケインが会話している横のソファで
ばにがぼーっと虚空を眺めている。明らかに元気がない。
…気まずい。
俺はパーカーのファスナーから少し出していた顔を引っ込めた。
「ねぇ、この中で猫預かれる人いる?」
「猫…ですか。私は医者なので面倒見きれませんね。すみません。」
「私も難しいです。猫の飼い方はインプットされていないですし。」
「まじかぁ。俺も猫は好きだけどアレルギーなんだよねぇ…」
3人の視線が1箇所に集まる。
「……あ、俺?…別に大丈夫だけど……」
「じゃ、こいつよろしく」
コソコソと隠れていた俺はレダーに首根っこをむんずっと掴まれ、ばにの前に差し出される。
ばには俺の両脇を掴み伸びきった俺の身体をまじまじと眺める
恥ずかしいからあんま見るんじゃないっ
「じゃあ、俺この子連れて帰るわ。」
そう言って立ち上がるばににひょいと抱き抱えられる。
そして部屋を出る時にふとレダーの口がぱくぱく動いているのに気づいた。
なんだ?……お、となり、がんばれ…!??
……まさかっ、あいつッ!!??
刃弐が玄関から出ると甲高い鳴き声が聞こえなくなりリビングが静かになる。
「……レダーさん?もしかして音鳴さんに
“あれ“を渡したんですか?」
「うん。なんか“もういやや〜猫になりたい〜”とか言ってたから丁度いいし面白いかなーって思って。タイミングが良かったなぁ」
「やっぱりあの猫会長なんですね。」
赤い毛を持つ猫など中々いないことや、音鳴が音信不通であることから一同は納得する。
刃弐の様子が変だったこともあるので何とかなればいいが、とケインは玄関の方を見つめる。
ケインのファンから長く空気が抜ける音がした
コメント
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vanrdのお話で一目惚れ致しましてフォローさせて頂きました! 丁寧に書かれているというか語彙力が豊富というか語彙力無くて伝えきれないのですがもう全部好きです!!あとサムネの猫好きです可愛い ア、アノ、フォ、フォロバもア、アリガトウゴザイマス(誤フォロの勘違いだったら申し訳無) 前編ってことはもしかして後編ありますね?楽しみです! 素敵な作品をありがとうございました! 以上一般読者の語りでした!