コーヒーの甘さに翔太郎は違和感を覚えた。
苦いコーヒーはぼーっとしている朝にぴったりの飲み物で、朝学校に行く前に飲むことが毎日の日課だ。
苦みを含んだコーヒーが良いのだ。
今日も内心ウキウキで朝のコーヒーに口をつけると翔太郎はいつもとの違いを感じた。
「(コーヒーが‥‥‥甘い)」
ミルクも砂糖も入れていない。
なのになぜ。
最初は自分の味覚を疑ったが朝も昨日の夕食のときも味に何も違和感を感じなかった。
気のせいだと自分に言い聞かせて、甘いコーヒーを飲み干すとスクールバック片手に家を飛び出した。
何故甘かったのか考えながら歩いていると、後ろから聞き慣れた高い声がする。
「翔太郎おはよ!」
「おはよう、‥勇」
彼の名前は星崎勇。
翔太郎の幼馴染で、同じ学校に通っている。
スカートを履いてるがしっかりとあそこがあるので男、聞くところによると趣味というよりかは着心地がいいから、らしいがよくわからない。
幼馴染というわけで若干彼に甘い自覚があるが、この勇という男、同じく相当な大食漢であるクラスメイト野崎大介と渡り合うほどの大食いで、食堂でばったりあった際に、二人して勝負を始め食堂を荒したことがあった。
あの後始末を人にやらせたということを自覚し、今後は一切やらないでほしいというのが翔太郎の希望ではあるが当の本人達はまたやる気満々である。
「なんだか今日顔が晴れないね」
「少しな‥‥」
甘ったるいコーヒーは目を覚まさせるどころか翔太郎を重たい気分にさせた。
口の中が甘ったるくて仕方がなく今すぐにでも口をゆすいでしまいたい。
甘いものも食べること自体が好きな勇なら、逆にコーヒーが甘いというのは喜ばしいだろうが、翔太郎は甘いものは苦手だ。
ケーキも勿論食べるがいつも食べるのは甘さ控えめなチョコレートケーキかチーズケーキで所謂大人の味というビターなものを好んでいた。
そうしている間にも二人は校門を通り過ぎ駄箱に靴を置いて上靴に履き替えるとそれぞれのクラスへと入っていく。
(翔太郎は二年一組、勇は二年二組)
窓際にある自分の席につき鞄から荷物を取り出す。
するといつものように彼に話しかけられた。
「おはよう翔太郎」
「今日も元気そうだな桐生」
翔太郎のクラスメイト、桐生優弥。
ムードメーカーでいつもクラスの中心にいる。
騒がしいのは苦手ではないが、騒がしいのは勇と同じクラスの野崎大介だけで十分。
別に翔太郎は生徒会長ではあるが決して目立つタイプではないのでそれでいい。
あまり関係性はないはずなのだがこうやって優弥という男は毎朝翔太郎に話しかける。
彼は誰にでもこう毎朝話しかけているようなので特に気にしたことはない。
昼、翔太郎は大介と勇、勇の親友である布原瑠偉と食堂に訪れた。
今日の定食が乗せられたお盆を取り四人揃って席へと付く。
手を合わせて翔太郎は恐る恐る今日の定食である生姜焼きを口にした。
すると味に違和感はなく味覚は正常だった。
だとすればコーヒーなど特定のものだけに発生する摩訶不思議な味覚障害だと無理矢理結論付け、翔太郎は馬鹿らしいと言わんばかりに味噌汁を啜った。
登場人物詳細
きりゅうゆうや
桐生優弥
翔太郎とは同じクラス。
クラスのムードメーカー。
バスケ部のエースでスポーツ万能。
薄い灰色の少しツンツンした髪。
体は筋肉と厚みがあってがっしりしている。
かみやましょうたろう
神山翔太郎
高校二年生。
生徒会長でしっかり者。
剣道部のエース。
細身でスラッとしている美形。
紺色のサラサラなショートヘア。
ほしざきゆう
星崎勇
二人とは隣のクラス。
翔太郎の親友であり幼馴染。
スカートを履いているので女と見られがちだが男。
可愛らしい顔立ちに高校生にしては低めな身長、一応筋肉は結構ある。
薄ピンクのボブっぽい髪。
つるなみじん
鶴波仁
一年生。
優弥のバスケ部の後輩で可愛がられている。
小柄ですばしっこい。
赤い髪でちょっとツンツンしている髪。
のざきだいすけ
野崎大介
翔太郎や優弥のクラスメイト。
生徒会副会長。
大食漢。
ふくよかな腹と物理的に包容力のある大男。
水色のちょっとざっくばらんな髪。
ぬのばらゆい
布原瑠偉
勇の親友でクラスメイト。
大介の事を慕っているが、大介と勇にいつも振り回されている。
青いバンダナをつけていてオレンジ色のサラサラヘアー。
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