話せないんじゃない。
side.浩哉
××のせいで、話すことが苦手になった。
4年生の時に喋り方が変と言われて、声が出なくなってしまった。
「はい」や「いいえ」などの事務的な言葉ならすぐに出てくるのに、それ以外のことを口から出すのにすごく時間がかかってしまうのだ。
ただ、1人の時と幼馴染と話す時にはすぐに声が出てくる。
心を許せているからだろうか。
小学校の時はなんとかなっていたが、中学に入ると話は別。
国語の発表や英語の発表の時は僕の時だけすごく時間がかかってしまう。
だから、先生も僕のことをそんなに当てないし、当てられたくないから後ろの席に座っている。
授業中はいつも絵を描くか、窓から空を見るかだけの退屈な毎日。
友達もいないし、いたとしても話すこともない退屈な毎日。
ある時、
「今日の授業では、手紙を書きます。」
隣の人のいいところを書く、という内容だった。
書いた後、隣の人と交換して読み合う。
隣の席の人…。
オレンジ髪のいつも一軍女子たちといる、いかにもという感じの陽キャ。
いつも笑っていて、誰とでも打ち解けられるタイプで、僕とは正反対の人間。
こういう人は、悩みなんてなくてすごく楽しいんだろうな。
嫌なことがあってもすぐにポジティブになれるんだろうな。
なんて思いながら手紙を書く。
1枚の小さな紙に伝えたいことを込める。
歌詞を作っていくように、紙に文字を紡いでいく。
まるで歌を作っているみたいだな、伊織に教えてあげよう、など思いながら手紙を書く。
オレンジ髪の人に手紙を渡して、交換された手紙を見る。
特徴的な字。
送り主の名前を見て、オレンジ髪の人が楓という名前だったことを初めて知った。
話をしてみたい、的なことが書いてあった。
そんなこと言われたって、無理だよ。
言葉がでないんだ。
そんな気持ちを抱えたまま、授業が終わる。
伊織と帰ろう。
帰って、ゲームをして、作り途中のアニメーションを終わらせよう。
そして、伊織に送って曲と合わせてもらおう。
なんて思いながら席を立つ。
「あ、浩哉くん…だよね!」
話しかけてたのは楓さん。
笑顔だけど実は嫌なんだろうな。
「、、はい。」
笑顔を貼り付けて応答する。
「さっきの手紙、すっっっっごくよかった!」
そうなのか、お世辞だろうな。
「で、まぁ…浩哉くんと仲良くなりたいから、少し知りたいな〜!って思って、」
声のことを聞かれたらどうしよう。
「連絡先、交換しない…?」
声じゃなかった…よかった…
「あ…うん。」
メッセージアプリを開いて交換する。
手慣れているところを見ると、いろんな人と繋いでいるんだろうな。
「ありがとう!学校終わった後、これで話しよ!」
「うん。」
「じゃあね!」
「うん。」
「ってことがあったんだよ〜…」
帰り道に今日あったことを話す。
「初対面のやつに普通メッセージ交換しよ、とか言わないだろ…陽キャだ」
横にいるのは江川伊織。幼馴染で、最近は学校にこれている。
少し肌寒いけど、空が綺麗だからいっか。
「ま、よくあることなんじゃねぇの?」
「僕そういうの知らないからわかんないんだよ…だから伊織に聞いたんでしょ」
「俺は知らね。まず女子とは関わりねぇからな…薫をのぞいて」
「俺だって、今日浜路に追っかけ回されたんだけど」
そう言いながら、伊織は鞄に入っていたスマホを開き、ヘッドフォンをつけて作曲を始める。
伊織がヘッドフォンをつけ始めたらもう止めれない。
そう思って、スマホを出してイヤホンで音楽を聴き始める。
電車に乗り込んでも、伊織はまだ作曲を続けている。
僕は曲を聴き続ける。
夕方。5時。
家に帰ってから、携帯を見てみると薫さんからメッセージから来ていた。
(浩哉ァァァァァ〜…)
(友達になろうよ…)
うげ。怖い。
(お話ししようよ〜)
話せないんだよ…
声が出ないんだよ、
(もし何かあるなら相談乗るよ)
重い彼女…。メンヘラじゃん。
(明日話すよ。友達にはなれる(´∀`))
「はぁ〜。楓さん…」
ベッドに倒れ込む。
机の上にある液タブを目がとらえる。
今日はやめよう。
ベッドでゴロゴロしていよう。
ネッ友と話そう。
翌日。
学校に登校すると、楓さんが僕の席に座っていた。
そして、真剣な表情で言った。
「浩哉君はさ、」
なにかすごく嫌な予感がする。
自分の核心をつかれてしまいそうな。
「話せないんじゃなくて、話したくないだけじゃないの?」
コメント
2件
すげぇ
好き((唐突 浩哉くぅぅぅぅゎぁぁぁぁ!!(は?) 続きが楽しみ!!!