下から高度約50m程の橋から、手を伸ばす。
その手は何かを掴みたそうで、
握ったりパーにしたりを繰り返していた。
「…ここから飛び降りたら、俺も、…」
そんな考えが脳裏をよぎる。
…飛び降りは嫌だな。きっと大量に血が出る。
最期は、最期くらいは美しく居たい。
下に降り、靴と靴下を脱ぎ、裸足になる。
何時ものユニフォームではなくて、
私服のパーカー。
ぴちゃ、と足をつける。
「んッ…(冷てぇッ…」
ちゃぷ、ちゃぷん。
川の深さは10mと言ったところだろう。
まだまだ浅瀬だが、水は
彼…カイザーの腰元まで迫っていた。
真冬の川なのだ。
冷たい。凍るかと思うほどに。
真冬の川なのだ。
冷たい。凍るかと思うほどに。
気づくと胸の辺りまで水が来ていた。
「ッ…さ、む…ッ…(がたがた、」
流れも早く、激しくなっており、
冷たさも増す。
「…(あぁ。やっと、楽に__。」
「カイザー!」
「カイザー!」
自分の名を呼ぶ声が聞こえた。
上を見上げると、
世一とネスがいた。
「ッッ…!!(うる、」
みっともなく、涙が目に溜まる。
思い返せば、
世一は面白かった。
調子に乗るとこも、たまにみせる笑顔も
愛らしかった。
ネスはこんな俺にずっと尽くしてくれた。
ゴールを決めれば
自分事のようかに喜んでくれた。
こんな俺が、
こんな綺麗なやつらと生きては行けない。
元々俺は、両親共に見捨てられた身だ。
__生まれてきちゃいけなかった。
毎日殴られ、犯罪を強いられた。
俺の手は、汚い。
そう思うと涙が頬に伝った。
「カイザーッ…カイザー!聞こえるか!やめろ!やめろっ!」
「カイザー!お願いですッ…お願いします、…辞めて、やめてッ…ッ…!!」
「……ごめん、(ぼそ」
ごぷぷっ…
「ごほッ…!」
肺に水が入り、全身に水が纏わりつく。
きっと、朱色のアイメイクは落ちているだろう。
冷たい、
痛い、
苦しい。
でも、
暖かい。
「ッ…!くっそ…!」
「…ッ…いきますよ、…」
「嗚呼。」
話し声聞こえる。
何を___?
バッシャァァァァアアアアンンッッッッッ!!!!
ッ…は…?!
「げほ、っげほ…いたっ…」
「ひ、つ、冷たい…か、カイッ…」
「…ッ……ぁ…ッ…」
俺は意識を手放した。
_____________________
目が覚めた。
覚めてしまった。
見た感じ、医療室のようだ。
ベットに転がって、
点滴がついている。
その状況を理解した俺は直ぐに点滴を外した。
喋ろうにも
酸素マスクが付いていて喋れない。
「んん゙ッッ!んん゙!んんん、んん゙ッ!」
やめろ、やめろやめろやめろッッ!
何故邪魔をする…?!何故、何故ッ…!
「ッッ!!ぷは、っ!」
酸素マスクを外す。
「ッ!(ふら、」
もたつく足取りで窓へと向かう。
赤くなっても、美しくいられるだろうか、
窓の縁に足をかけた途端
後ろから手が伸びた。
「やめろ、ッ…カイザー!」
「よい、ッ…!」
「はなせ、クソ、ッ!はなせぇぇッッッ!!!」
「ネス!」
「カイザー!!やめ、っ!」
ネスの手も伸びてきて、俺を掴む。
「やめ、てッ…やめてよぉッ…
も、俺…無理ッ…(泣」
「やめて、…ッ…」
とすっ、
世一の胸に、顔がうずくまる。
「は、ぇ…?」
「お前に何があったのかは知らない。」
「ッ…なら!」
「でも!見捨てられない!」
「ッッッッ…!」
クソ、クソっ…こんなの言われたら、もう…
「うッ…ひ、ぐッ…ぐす、ッ…」
「沢山泣け。」
「うあああぁぁぁあぁあああぁぁ゙ぁ゙ッッッッ!」
「ふぐッ…ひぐッ…あぁあぁぁああぁ゙ッ!!」
数分後
「落ち着いたッ…あり、がと…」
「んーん!ネス、」
「…カイザー、…
何かありました…?」
「…話して、いい、のか…?」
「えぇ。勿論!
世一、貴方は?」
「ここでNOって言うやつ
居ねぇだろ。」
「……俺は、」
「母親には見捨てられ、父には虐待をされ、
まともな教育を受けずに犯罪に手を
染めてばかりいた、最悪のガキだった。」
「…は、…」
「…ひど…すぎま、す…」
_____________________
「あぁあ゙ッ!痛ッ…いら゙いぃッ!(泣」
「うるせぇっ!」
殴られた。
「かは、ッ…うぇ、ぉえ゙ッ…(ビチャビチャ、」
「汚ねぇッ…吐くなよクソ物が!」
蹴られた。
もうウンザリで
死のうと思った日もあった。
クソ物と罵られ
蹴られ殴られ
心身ともにボロボロだ。
「うぇ、ッ…ぉえ゙ッッ…(ビチャビチャ、」
「ふ、ッ…ふーッ…、(泣」
フラッシュバックがして吐き気を催すことがあれば
「はぁッ、!は、ッ!はぁッッ!」
「…ぁ、ゔ(泣」
父の夢を見て魘され
起きて泣くこともある。
みんなが見てるのは美しく高貴なミヒャエル・カイザーだ。
でも
本当の俺はこんなに弱くて惨めで
___汚い___。
物を盗んで金がないから支払えなかった時は
「じゃ、身体で払えよ… ?」
「は、ぇッ…?」
「あ、あぁ゙ッ!ま、まって、!
や、やあ゙ッやめてぇ、ッッ!
ごめん、なさッ…ごべんら、ざいっ!」
身体を弄り回された。
終わったあとも吐き気がして
吐いていた記憶がある。
俺は
こんなにも穢れていて
こんなにも醜くて
こんなにも汚い。
_____________________
「お前らと俺が、いるとッ…」
「お前らまで、汚れちまう、ッ…」
「お願い、だからッッッ…(カタカタ」
「俺から、離れ___。」
ぎゅ、っっっ!!
「ッ…ぇ、…,?」
「離れない、…!離れる訳ねぇだろ!」
「これからは、着いてます!
独りにしてごめんッ…ごめんねカイザーッ!」
ドクンッッ
やめろ
やめろ
やめて、
俺がお前らを穢すんだぞ…?
なぜ否定しないッッッ!
なん、で…
「…カイザー」
「カイザー。」
「…?」
「…お前は/貴方は」
「どんなのでもカイザーだ/です。」
「…綺麗だよ。美しいよ。」
やめろ
そんな言葉、並べないでくれ。
「ッッッッ…!(ぶわ、っ」
そんなこと言われたら___。
体の底から熱が出てくるのがわかった。
嗚呼
何故だろう。
川の水よりも、
どんな炎よりも、
こいつらの視線が
思いが
暖かい___。
コメント
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てか聞いて俺白無垢着たんだが
素敵だぁ…ァ…ワ…ワァ…