こちらのお話に登場するアデルさんは原作と性格が違います。
それを踏まえた上でご視聴ください。
私は紅美鈴に殺された。
まぁ今までの罰だろう。
邪気を消されたせいか、怒りも感じなかった。
ふと思ったのは、私にも前世があった。
私は人間だった。
冬の日の夜だった。
母 「ここで待っててね。絶対に動いちゃダメよ?」
私 「うん!まってるね!」
私は母親が好きだった。
父は病死して、母親と二人で暮らしていた。
母は優しかったと思う。
頭を撫でてもらったり、抱きしめてもらった記憶はないけど。
寒空の下、私は母親の言う事を守って、ずっと外にいた。
母は数時間経っても戻って来なかった。
私は力尽きてそのまま死んだ。
私は天国に居た。
母親との約束を守れなかった事、離れてしまった事でパニックになっていた。
小町 「君、大丈夫かい?」
私 「お、おねえちゃん!ここどこ!?」
小町 「…君は死んじゃったんだ…お母さんはあそこに居るよ」
人間界を上から見ると、そこには知らない子供と楽しそうに笑う母が居た。
私 「あのこ…だれ?」
あの時の私には分からなかったけど、今なら分かる。
母親は私を捨てて新しい家庭を持ったんだ。
私は思わず、パニックになって泣いてしまったのを憶えてる。
それくらい寂しくて、辛くて、一人が嫌だった。
でももう今更の事だ。何も感じない。
母 「あきら…?」
私の生前の名前を知っている奴は数少ない。
紛れもない、私の母親だった。
そこには成人して立派な姿の子供と、
知らない男が居た。
私 「…母さん…?」
あぁ、きっと新しい家族なんだな。
一緒に幸せになって生涯も全うしたんだ。
母 「何、その姿…あんた死んだはずじゃ…」
コイツは私の葬式にも来なかった。
5歳だった私を置き去りにして自分だけ幸せになった。
子供 「お母さん、誰?この人?」
母 「さ、さぁね?誰だろうね?ちょっと気になったから声を掛けただけよ!」
私 「お前の息子だよ…」
子供 「え?どう言う事?弟もお兄ちゃんも居なかったよ?」
母 「や、やだなぁ!嘘言うなんて、変な子ねぇ!」
しらばっくれる母に…怒りが溢れた。
私 「お母さん、何であの日、私を置いて行ったの?私…ずっとお母さんの事…
待ってたんだよ…?どんなに寒くても!真っ暗で怖くても!お母さんが好きだから
待ってたんだよ!?泣かないで、一人でずっとお母さんの事信じてたのに!」
あの時…
私 「ママ…かえってこない…だいじょうぶかな?」
ずっとぬいぐるみに話しかけてた。
ずっと心配して待ってた。
寒くて凍えそうで、
私 「ママ…きっと…かえって…くるよね…?ママにこんど…ぎゅってして…
ほしいなぁ…」
バタッ
私 「お母さんは一度も私の事抱きしめてなんてくれなかった!撫でてくれ
なかった!そんなに嫌だった…?私が生まれつき身体が弱いから?お母さんに甘えてばっかり
だから…?ねぇ…何でそんなガキを可愛がるんだよ!」
今まで出したことのない声を出して、大粒の涙が込み上げて来て…
私 「お母さんは…私が嫌いなの…?」
母 「…よ…」
私 「えっ…?」
母 「そうよ!身体も弱い!頭も悪い!甘えてばっかりで自立しない!
男の子なのにぬいぐるみばっかり可愛がる!気持ち悪いのよ!強く生きれないの!?この子は
立派よ!勉強も出来て!親孝行もちゃんとして!あんたは人様を利用して醜く
死んだんでしょ!?情けないわね!」
信じられない言葉が返ってきた。
気持ち悪い、情けない。
大好きだった母にそんな事言われるなんて思ってなかった。
でも、確かにそうだった。
私は人間を利用して、自分は動かなかった。
十六夜咲夜を傷付けて、紅美鈴に殺された。
そうだね、事実だね。
ごめんなさい。
それしか頭をよぎらなかった。
母 「何よその顔…私が悪いって言うの!?元々気持ち悪いあんたが悪いのよ!」
すると同時に母の頬が誰かに叩かれた。
??? 「黙りなさい…」
私 「…美鈴…?」
そう、私が傷付けてしまった人。
私が迷惑をかけてしまった人。
美鈴 「咲夜さんの魂を探しにきたら、自分の子供に暴言を吐き散らかし、
子供を置き去りにするクズが居ましてねぇ。あなた…馬鹿なんですか?」
母 「な、何よ!」
美鈴 「この子が…どれだけ寂しかったか分かりますか?どれだけあなたを信用して
いたか分かりますか?愛する母親に!気持ち悪いと言われた気持ちが分かりますか!?」
美鈴は泣きながら母に問い詰める。
美鈴 「私は…友達だったのに助けてあげられなかった…あきらくんと幼馴染だった
のに気づいてあげられなかった。だから!友達をもう傷付けないためにも!あんたに説教しに来たんだよ!」
そういえば、私にもたった一人の友達が居た。「みすず」と言う名前で、
優しくて明るかった。でも事故で死んでしまった。
身体が弱い私とたくさん遊んでくれた。
また涙が溢れる。でも今は哀しいわけじゃない。
優しさに触れて、心が暖かくなってるから。
美鈴 「二度侮辱するな!次言ったら容赦しないからな!」
母は怯えるように家族と逃げて行った。
私への謝罪も、言葉も言わずに。
でももう良いんだ、私に母親なんて、家族なんて居なかった。
美鈴 「ふぅ!スッキリしたー!大丈夫ですか?」
さっきとは違う、優しい顔で私に話しかけて来る。
私 「ごめんな…咲夜を傷付けて…母親の言ってる事は、間違ってないよ。
私は…最低だな」
美鈴 「そうかもしれません、でもあなたが優しかった事も、幸せになれる権利が
あったのも事実です。だからここは、友達として話しますね!」
そう言って美鈴は優しく微笑んで、
美鈴 「あきらくん、怖かったね。辛かったね。お母さんが…大好きだったんだよね。
でも、今度は…私が居るよ。傷付けた私が言える事じゃないけど、ちゃんと味方は此処に
居るよ。あきらくんは優しいから、絶対に幸せになれるからね」
私 「私…本当は…愛して欲しかった…ずっと…我慢してたのに…お母さんに…
愛してもらえなかった…」
美鈴 「大丈夫ですよ、あなたは…立派ですよ!偉いね!」
私 「ありがとう…ありがとう…!」
コメント
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アデル様を捨てるなんて、、。なんて母親だ!😡アデル様は愛が欲しかったんですね。愛されたいという思いが、愛で溢れてる咲夜さん達への嫉妬に繋がっちゃたんですね😭