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やっほー
レッツゴー
春の嵐が過ぎ去った夜、凛香は自室の机に向かっていた。
以前なら、仕事のメールをチェックしてはため息をついていた時間。けれど今の彼女の手元にあるのは、一冊の古いノートだった。
そこには、あの歌に出会ってから、自分の心がどう動いたか、誰とどんな言葉を交わしたか、飾らない言葉で綴られている。
「……書けた」
彼女は、自分なりに感じた「無理に笑わなくていい理由」を、SNSの片隅に、本名も顔も伏せて投稿した。それは誰かに「いいね」をもらうためではなく、かつての自分のように、夜の暗闇で呼吸を忘れている誰かに、この歌を届けたかったからだ。
数日後。
公園のベンチで再会した例の彼が、少しだけ照れくさそうに凛香に話しかけてきた。
「あの……これ。君が教えてくれたわけじゃないけど、なんだか君の言葉みたいで」
彼が見せてくれたスマートフォンの画面には、凛香が投稿した文章が表示されていた。そこには、数えきれないほどの「救われました」というコメントが、優しい灯火のように並んでいる。
二人は顔を見合わせ、今度はどちらからともなく、ふふっと小さく吹き出した。
それは、かつての凛香が必死に作っていた「完璧な笑顔」よりもずっと不器用で、でも、ずっと美しい「素顔」だった。
「明日も、無理に笑わなくていいかな」
「ええ。泣きたくなったら、またここでこの歌を聴けばいい」
イヤホンを片方ずつ分け合い、再生ボタンを押す。
流れてくるのは、二人の心をつなぎ止めた水野あつさんの優しいメロディ。
イヤホンから流れ出したのは、あの優しく、すべてを包み込むようなピアノの旋律。
「無理に笑わなくて良いよ」
「君が生きているだけ ただそれだけで大丈夫だよ」
そのフレーズが耳に届いた瞬間、凛香の目からひとしずく、温かい涙がこぼれた。それは悲しい涙ではなく、ようやく「自分」としてここに立っていることを実感した、安堵のしずくだった。
隣に座る彼も、黙って空を見上げている。
二人の間に流れる空気は、言葉以上に雄弁だった。
完璧な自分にならなくていい。
ただ呼吸をして、この歌と一緒に今日を終える。それだけで、十分すぎるほど価値がある。
「……また明日ね」
どちらからともなくそう言って、二人は立ち上がった。
無理に作った笑顔ではなく、少しだけ晴れやかな「素顔」のまま、それぞれの帰路につく。
夜風に乗って、歌の続きが聞こえてくるようだった。
「お休み、昨日の君。」
「さよなら、また明日。」
どちらからともなくそう言って、二人は立ち上がった。
無理に作った笑顔ではなく、少しだけ晴れやかな「素顔」のまま、それぞれの帰路につく。
夜風に乗って、歌の続きが聞こえてくるようだった。
「お休み、昨日の君。」
「さよなら、また明日。」
次回正解発表!
見てくれた皆さん、ありがとうございます。