ある夏の、3限目。
私、音羽奏は授業を聞き流しながら、窓の外を見ていた。
ちなみに、今やっているのは歴史の授業。
織田信長とか、伊達政宗とか、そういう時代の。
窓の外の青空は、まるでどこまでも続いているように感じた。
大きくて、ただただ、青かった。
この空は、こんな私も包み込んでくれそうだ、と
ふと、思ってしまった。
それから、なんとなく、人生で辛かったことを思い出して、
まだ乾いてない鞄が目に入って、
チョークの粉がついたままの制服の袖を見て、
悪口が消し切れてない机がチラリと見えて、
ビリビリの教科書が指に触れて、
それから、後ろの席の女子の嘲笑が聞こえて、
また、空を見て、
今まで平気だったはずなのに、
痛くて堪らなくて、
「あ、死のう」
なんて、思った。
思い立ったらすぐ実行。
私の特技だ。
立ち上がって、走って廊下に出る。
先生の声が聞こえるけど、今の私には関係ない。
屋上の入り口まで上がって、ドアの横にぶら下げてある鍵でドアを開ける。
フェンスを乗り越えて、外側まで移動する。
せっかくだから、叫んでみようか。
「私の名前は音羽奏です!今から死にます!」
音割れしそうなほど大きな声で、私は叫んだ。
そして、一歩前に踏み出す。
体が、ふわりと宙に浮く。
「さよならバイバイ!また来世!」
さっきの音割れボイスで叫んで、風を受ける。
私は、そのまま────
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