この街は狂っている。死んだはずの人間は病院で記憶を失った状態で現れる。有り得ないことばかり起こるこの街では命は何よりも軽く見られている。
私は医者として彼らを理解できないのだ。
記憶を失った私に残されていたのは2人の男の連絡先と文字化けした薬のレシピだった。
そのおかげで私は半グレの集団と出会い居場所を得た。
彼らのことを仲間かと聞かれれば違うが、他人という訳でもない不思議な関係だ。
今説明した通り私と彼らは協力関係にはあるがお互いある程度の距離を取っている…はずだった。
「ぐっさん!好きです!!!」
何故か私は出会った半グレの一人である音鳴ミックスに告白されている。
とりあえず状況を整理しよう。
私はいつも通りバギーで高速道路を爆走していた。すると無線で和室アジトに呼び出されたのだ。怪我でもしたのかと思い急ぎ向かったら珍しく静かな彼がいた。
そして今に至る。
もしかして、音鳴さんはここに来る途中に事故に会ってしまい頭を強く打ち意識が混濁しているのかもしれない。
なら早く治療しなくてはいけない。
そう思い彼の体を詳しく診るが異常は無さそうだ。
となるともしかして未知の病か!?
「えっと…ぐっさん?あの…返事は?」
「それどころではありませんよ、もしかしたら私の知らない病を患っているかもしれません」
「いやいやいや、えっとー…返事…」
私の勉強不足か。
確かに記憶を失ってから医者としての情報収集を怠っていた…これではいけない
音鳴さんの治療のためにもまずは…
「ぐっさん!?ぐっさん!?返事して?!!」
「あっすみません。野暮用が出来たので失礼します。すぐに治療法を調べてきます」
「え、ちょ、あっえ」
急いでピルボックス病院に向かわねば。
彼処なら他の医者に情報を聞くことが出来る。
私はバギーを走らせ病院へと向かった。
アジトに隠れて音鳴の告白を見守っていたレダーと夕コは落ち込む音鳴を慰めていた。
「まあ、ぐち逸だしね…変に真面目な奴だからしょうがない」
「まあ確かに恋の病は医者には直せない病だからね~」
すくりと音鳴は立ち上がり、パンっと頬を叩く。
「いや、俺は諦めない!!!!」
「お、ヤル気になった」
「まあ、いつ付き合えるんだろうね〜」
音鳴ミックスの戦いは続く
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