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いつもならもう寝る時間。でも、砂浜に行って、
バケツに水を入れて、
線香花火を取り出して、
ライターで、火をつける。
火をつけたところから、火花が散る。
『わあ〜きれ〜』
琥珀さんは、花火を見て嬉しそうだ。
やっぱり、この時間の砂浜は人がいない。
3人で、線香花火を持って、
散っていく火花を見る。
綺麗だとは思う。
でも、
『あ、』
火がついていた先端が落ちてしまった。
寂しいな。
『線香花火の燃え方にはね、蕾、牡丹、松葉、柳、散り菊の5種類に分けられているの。』
茜さんが言った。
5種類にも分かれているのか。
知らなかった。
『人間の一生にも例えられているんだって。』
人間の一生…
もう一度、新しい線香花火に火をつける。
最初は、先端が赤く光っている。
そして次第に、火花が弾け始めて、
そして、激しく火花が散り、
そして、落ち着いてきて、
最後は、小さく光り、落ちてしまった。
寂しいものだ。
なぜ、命は終わってしまうのだろう。
皆が、幸せに生きられればいいのに。
でも、そんな願いは届かない。
他にも、大きな花火もあったけど、
『・・・』
やめておこう。
もう、夜も遅い。
今からでも、帰る頃には日が変わるだろう。
『やっぱり、元気ない?』
琥珀さんが、僕の顔を覗き込んだ。
『それは…』
『案外、弱そうだなぁ。』
!
顔を上げると、
知らない人が立っていた。
『にーちゃんが、銅だろ?』
『あぁ、そうですけど…』
僕は立ち上がる。
と、
!
ナイフが、飛んできた。
『ほら、それを使えよ。アタシ、にーちゃんと戦ってみたかったんだよ。遊ぼうぜ、にーちゃん。』
『・・・』
その女から、殺気を感じる。
女が、もう一つナイフを手にした。
僕は、投げられたナイフを手にする。
『2人は離れて。』
琥珀さんと茜さんに言った。
『雑魚に興味はねぇよ。』
女の目が、怪しく光っている。
僕は、後ろに下がった。
!
でも、
一瞬にして、近づいてきた。
ナイフが、僕を目掛けて振り下ろされる。
避ける。
けど、
あれ?
首が痛い。
『これでにーちゃんも、本気で戦えるだろ?』
女が、ナイフの刃を舐める。
そこに、血があった。
首を触り、手を見る。
赤い…
!
また来る!
『うっぐ!』
防ごうとしても、
あの女が持つナイフが、ありえないような動きをする。
『ああっ!』
腕に刺さる。
『どうしたにーちゃん。そんなもんなの?』
女は、怪しい笑顔を向ける。
『くっ!』
僕も、ナイフを振る。
相手の動きを見て、走る。
だけど、
『何してんだ、にーちゃん?』
!
声のした方にナイフを振る。
『そっちじゃないよ?』
もう一度振る。
けど、避けられる。
また、ありえないところから声が聞こえる。
ありえないほど速いんだ。
砂浜の上なのに、目で追えないほど速い。
!
背中を斬られる。
『うぅっ…』
相手が見えない。
ここか?
違う。
こっちか?
違う。
なら、
『どこ見てんだよ。』
‼︎
ナイフが、胸元に突きつけられていた。
『な〜んだ、大したことないじゃん。つまんないなぁ。』
『・・・』
ありえ、ない…
黒髪に、黒い目。
コイツ、
化け狐というヤツか!
コイツは間違いない、人狼だ。
『これで死ぬ?それとも、もう一回やってみる?』
完全に舐めている。
ここで、終わるわけにはいかない!
僕は、睨んだ。
『なるほどね、ま、そうだよね。』
女が、離れる。
『でも、もし、』
女が、ナイフを構える。
『つまらなかったらコロす。』
!
『うぐっ!』
腕に、強い衝撃がくる。
守るんだ。
琥珀さんを。
茜さんを。
僕が!守るんだ!
僕は、あの女から離れる。
そして、
ナイフを、
身体で見えないように構える。
女の動きが止まった。
『なるほどな。』
どう動くのかがわからない。
だから、下手に動けないはず。
どう来る。
!
来た!
ナイフを振る。
が、避けられる。
なら!
ナイフを反対向きに持ち替えて、
反対に振る!
あと少しのところで避けられた。
でも、
まだ、終わってない!
ここだ!
やっぱり、そこにいた。
『はああっ!』
ナイフが、腕を軽く斬る。
『マジかよ。面白くなってきたじゃん!』
追いかける。
次は、ここに来るはず。
あえて、誘導させる。
『やあっ!』
肩を斬る。
だが、
僕も、肩を斬られた。
っ!
まだ、上があるのか。
さっきより、もっと速くなった気がする。
『もっと、本気で来いよ!』
『ぐっ!』
歯を食いしばる。
もっと、速く!
走れ!振れ!
『ふっ!せああっ‼︎』
視界が、速く動いている。
次はあっちだ!
足の負担が凄い。
鼓動を、強く感じる。
でも、終わるわけにはいかない。
攻撃を受けて、避けて、防いで、
攻撃をして、フェイントをかけて、
走って、止まって、
追いかけて、追いかけられて、
何回だってした。
何度もやった。
そして、
『これで、終わりだぁ!』
斬りかかってくる。
防ごうとした。
だが、
!
ナイフが、折れた。
まずい!
女の、ナイフを持った腕を掴む。
『ぐっ!うりゃあ‼︎』
強く握る。
そして、地面に引っ張る。
取り押さえる。
『終わりだ。』
なんとか、押さえることはできた。
でも、このあとは…
『もう降参だ。アタシの負けさ。』
女はもう、抵抗はしなかった。
『なかなかやるじゃねーか、にーちゃん。』
『お前もな。』
かなり、疲れていた。
『アタシはあの、クソ頑固な外人たちの仲間だ。アイツらはまだ、にーちゃんのことを狙ってるんだぜ?離してくれれば、アイツらを止めてやるよ。』
『え、』
そうか、あの時のナイフを持った女はコイツだったのか。
『本当に、止めるのか?嘘じゃないのか?』
『ま、最初は勝ったとはいえ、本気で戦って負けたんだ。だから止める。それでどうだよ。』
怪しい。
でも、もし本当なら…
アイツと戦わずに、止められる…
僕は、押さえる力を緩めてしまった。
『ヘヘッ!にいちゃん、優しいんだな。』
!
振り落とされた。
女が立つ。
と、
ニヤリと笑った。
『本気だと思ったのか?敵を信じるなんてバカだな〜だから騙されるんだよ!だから傷つけられるんだよ!』
!
『騙したのか!』
『ヘッ!一つだけ、いいことを教えてやるよ。人狼の力は、そんなものじゃない。ある条件が揃えば、この島なら全員滅ぼせるくらい強くなれるって、一部で噂になってんだよ。』
それだけ言って、どこかへ行ってしまった。
『くっ!』
せっかく取り押さえたのに、離してしまった…
『甘ちゃん大丈夫⁉︎』
琥珀さんが、心配してくれた。
あれ?茜さんは?
ふと、周りを見てみる。
茜さんは、すぐ近くで見守ってくれていた。
なんともないみたいだ。
安心した。
『さて、帰ろうか。』
ゆっくり歩いて帰る。
2人が、肩を貸そうとしてくれた。
でも断った。