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ゼノの家の裏庭。木陰に置かれた簡易テーブルの上で、スタンリーとゼノは向かい合っていた。
「腕相撲をしようじゃないか、スタン。」
突拍子もなく、ゼノがいつもの調子でそう言うと、スタンリーは少しだけ眉を上げる。
「……why?」
ゼノは得意げに肘をつき、小さな手を差し出す。
スタンリーは服の袖を軽く捲くる。
「…先に言っとくけど、あんた絶対負けんよ」
ゼノは少し口角をあげ、鼻を高くして言う。
「これでも君と同い年だ。更に、最近は重い機材を運んだりで力がついたような気がするんだよ」
そしてスタンリーの目を自信満々に見つめる。
スタンリーはゼノの手を握る。
——その瞬間。
(……なんだこれ、)
スタンリーの思考が一瞬止まる。
ゼノの手は、小さくて、やけに柔らかかった。指は細く、触れた感触が妙にくすぐったい。
(こんなちっさい手で、いつもあんな実験してるのかよ……)
ぼんやりとそんなことを考えてしまう。
「?スタートしないのかい?」
ゼノが不思議そうに首を傾げる。
「あ、いや……」
スタンリーは慌てて構え直すが、集中がうまくできない。
「じゃあ、いくよ。3、2、1ーー!」
ゼノの合図と同時に力が入る。
本来なら、スタンリーが圧倒的に有利なはずだった。けれど
(……やべぇ、なんか変に意識する……)
握っている手の感触が気になって仕方ない。
柔らかい。あったかい。小さい。
その全部が、なぜか胸をざわつかせる。
「おや?意外と苦戦しているね」
ゼノがくすっと笑う。
「っ……!」
気づけばスタンリーの腕はじわじわ押し込まれ、
コトン、と机に倒れた。
「僕の勝ちだね」
満足そうに言うゼノ。
スタンリーはしばらく無言でその手を見つめていた。
(……こんなこと、死んでも言えねぇ)
「どうしたんだい?顔が赤いようだが…」
「……なんもねぇよ。あんたが強くて驚いただけ」
ぶっきらぼうにそう返して、スタンリーは顔を逸らす。
ゼノは首をかしげたまま、どこか楽しそうに笑っていた。
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