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「なぁ、俺の事どう思っとんの?」

 それは君の口癖だった。

 酒の勢いで軽率に身体を重ねて、互いに互いの気持ちを話さないまま時間が経っていた。1ヶ月前互いの仕事が忙しくて会えなくなって…。そのまま連絡を取れずにいる。

「時間が忘れさせてくれるって、嘘じゃん」

 俺はずっと彼を忘れられずにいた。会いたい…抱きしめたい…。彼の中に俺自身をねじ込みたい。そういう凶暴な気持ちが抑えきれず、会いに行くこともできなかった。

 気まぐれに会って、流れで身体を重ねるだけの関係も、そろそろ終わりにしなければ…とも思う。でも、彼に触れられなくなるという恐怖心には勝てずにいた。自分の気持ちがどういう名のものなのか分からず、彼の問いには答えられずにズルズルときていた。でもさすがに、この感情がどういう類のものなのか分かってきていた。

『あ、ニキニキ?あのさ、せんせーの恋人誰か知ってる?』

 唐突にかかってきた電話で、向こう側から言われて内容がイマイチ分からず聞き返す。

「は?なに?どういうこと?」

『だから、せんせー恋人いるっぽいだけど知らないかなって』

「…しらねぇよ。ボビーに聞けよ…」

『えーニキニキもしらないの?』

「だからなんで俺に聞くんだよ」

『だって、せんせー教えてくれないから…』

「とりあえず、俺忙しいからさ」

『あ、そうなの?ごめんねー』

 電話を切ってから暫く動けずにいた。アイツに恋人がいる?だから俺へ連絡しなくなったのか。本命できたから、俺はお払い箱ということか…。

 無性に腹が立って、苦しくて…居てもたってもいられなくて俺は家を飛び出していた。

 6月の雨はまだ冷たくて、長く伸びた前髪を額に貼り付ける。それが忌々しくて乱暴にかきあげて、前をみた。もう夜中だから、周りにはほとんど人が居なくて、俺の事など誰も気に止めてなかった。

「愛してる…愛してるんだよ…」

 思わず口から出たその言葉も、雨音にかき消されてしまった。胸が張り裂けそうで、でと立ち止まれなくて。ひたすら彼の家の方へと向かっていた。こんな簡単なことなのに、なぜ今まで気づかなかったんだろう。なぜ伝えなかったんだろう…。

 ポケットの中には、数日前に買ってどうしようか悩んでいた小さな箱が1つ。恋人がいるのなら無駄になりそうだけど、これが俺の気持ちだから。

 今すぐ会いたい。君にこの気持ちを伝えたい。

「ニキ…?なにしとん?」

 もう少しで彼の家に着くというところで、聞きたかった声が後ろから聞こえた。振り返ると、傘をさしてコンビニの袋を持った君がいた。勢いに任せて家を出たのに、いざ前にすると何も言えなくて…動けなくなった。

「ボビー…」

「お前、びしょ濡れやんか。とりあえず家入り」

 目をまん丸にして驚く君は、俺の手を引いて部屋へ導いてくれた。そのまま、風呂場に押し込められ身体を温めるよう言われた。でも離れたくなくて、彼の腕を掴んだ。

「なんや?とりあえず温まってから…」

 思いっきり彼の腕を引き抱きしめた。驚いて少し抵抗する彼は、すぐに抵抗を辞めた。俺が泣いてしまっていたから。それに気づいた彼は、そっと背中に腕を回して、俺をなだめるように背中をさすってくれた。

「どうしたんや?話してくれんと分からん」

「…愛してる……愛してるんだ…」

「え?」

 俺のつぶやくような言葉に驚いた彼は、俺の顔を除きこもうとして体を離そうとしてした。でも俺は、やっと腕の中に来た温もりを離したくなくて、強く抱き締めた。

「ホビー…もう遅いのかもしれないけど、愛してる」

「っ…ほんと…いつまで待たせんだよ…」

 言葉に詰まって少し鼻声になった彼は、強くだ締めかえしてくれた。そして、小さく俺の耳に口付けをして囁いた。

「俺も…俺もずっと好きやった…」

「…え?」

「なんでお前が驚くん?」

「だって、恋人がいるって…」

「あぁ…りぃちょか?」

「うん」

「それはな…」

 好きな人がいて、今会えないのが寂しいと呟いただけや…。そう恥ずかしそうに言う彼が可愛くて、顎をもって深く口付けた。思いが通じるなんて思わなかったから、嬉しくて涙が出た。

「お前泣きすぎやろw」

「だって…これも無駄になるかと思って…」

 そう言ってポケットから出した小さな箱を差し出す。それを開けた彼は目を見開いた。

「これ…俺にくれるん?」

「そうだよ。つけてくれる?」

「当たり前やろ…」

 箱の中から出した小さな指輪を彼の薬指へはめた。その指輪にそっと口付けを落とすと、彼は恥ずかしそうに笑った。この指輪に誓うよ。君と永遠にある事を…。誰よりもそばで、君の味方であることを。

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コメント

2

ユーザー

最高ですありがとうございます、、😭💕

ユーザー

すき、とても

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