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09 私のようで私じゃない。
「花火大会か___」
私・ななっしーは誰の耳にも届かない、寂しい声を放った。
正確には誰にも届かないわけではないけど、すごい霊感のいい人じゃないと私の声は聞こえないだろう。
___それか、あの人か。
べるにも強く言いすぎたな___。
でも、私だってべるみたいにもうちょっと、もうちょっとだけでもいいから。
「長く生きたかったなぁ」
夏の眩しい青空を手で仰いで神社のベンチに寝っ転がる。
「ここは日陰全然ないなぁ___」
昼なのに今日は月が見えていて、白くてとっても綺麗だった。
「大体貴方はゆっくりしすぎです!ここは貴方の家じゃないんですから!」
ベンチでダラダラしていた私の視界に映ったのは、ニグさんだった。
白い髪、青のメッシュ、綺麗な赤色な瞳。
一様これでも彼はこの神社の神様。
「だって!すっごく暇なんだもん!」
霊感のいい人じゃないと私のことすら気づかないし。
そもそも幽霊だからこの世の物も全然触れないし。
1番大事なのは神社から出られないことだ。
厳密には私が死んだ公園と神社を行き来するぐらいしかできない。
「私的には早く成仏してくれないと困るんですけどね___。」
基本的には未練があっても、強制的にあの世へ飛ばされることが多い。
まあ成仏しないと、神様に負担がかかるとかかからないとか___。
なんだけど私はここの神様___ニグさんにお願いして、(泣きつきながら。)成仏はまだしてない。
「ななっしーさんそろそろ一年経ちますけどいいんですか?」
ニグさんの言う“一年”は私が成仏するまでの期間のことだ。
まあ普通は期間なんてものはないんだけど、私はとある交渉をニグさんとしている。
それは、『生きていた時にそっくりの実体をもらう代わりに、一年で成仏する』といういわば約束だ。
「ん〜ちょっとやばいかもね__」
私は何も考えず、彼返事を返す。
ちなみになんで“そっくり”の実体かと言うと、まあ私の生前の体はトラックに轢かれちゃって、ぐっちゃぐちゃなんだよね。
だから“そっくり”の体を使ってる。
まあ私のようで私じゃない。
そんな感じかな。
「じゃあ、ちゃんと成仏できるようにあの子に会ってくるよ!」
私が死んだのは中3の花火大会の日。
今年の花火大会で彼に思いを伝えて成仏する。
___そう決めてるから。
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