「お初にお目にかかります、趙家総領 趙宇軒と申します」
「……君が趙宇軒?」
まるで僕を知っているかのような反応をしていた。もし知っているならばとても失礼だと思って、心臓はドキドキしていた
「実は軽々と名乗れる程の者ではないんだ、私の事は九と呼んで 」
微笑む彼を見て幼い頃に師範に感じたような感情になった。いいや、僕が愛しているのは師範たった一人だ、浮気なんぞ許されない
「趙宇軒《チャオ ユシュアン》、君は何をしている人? 」
「子供達に剣術を教えています。」
僕がそう答えると嬉しそうに「そっか~」と言っていた。やけに質問してくる九に僕は乗り込むように質問で返した
「九は何をしているの?」
「わ、私は…気ままに旅をしているよ」
焦る九を見て少し微笑んだ。
「女性なのに旅をしているの?修行?」
「…私は男の子だよ」
再び僕の頭の中には、はてなマークが出現していた。歩いていた足を止め九を見詰めた
「女性にしか見えないよ!?」
僕があたふたしていると九は「あはは」と笑っていた。美しいのにおまけに男性だって?人生というものは分からないものだ、と僕は深く思った
「私呼びなのは昔からなんだ。そのせいで女性と良く間違えられる。少しでも舐められないように口調を強くしていたりしていたな。懐かしい」
「…口調を強く?」
「肝に銘じろが口癖だったかな。強く見えるでしょう」
「…僕の師範もそれを言っていました」
「……何とも奇遇だね。」
九は指を僕の鼻にちょんっと置き見詰めた。師範はもう居ない筈、死んじゃったんだ。生きている筈がない…
「師範…?」と呼んだが返事はしてくれなかった。
「体が痛い…此処は何処だ」
体は痺れたように痛くて、動かすことは出来なかった。あまり記憶はない、酷く眠っていた。そんな時微かに聞こえた
“ もう一度命をやろう。だが代償として目と耳を貰う “
「受けてみよう。趙宇軒《チャオ ユシュアン》に会える、其以上に嬉しい物はないね。何やら貰うと良い」
冗談半分で言ったがどうやら本気にされたみたいだった。気付けばパーティーをしているかのような声が聞こえたり、小鳥の声が聞こえたりで五月蝿かった。
「あんたもパーティーへ参加するかい?」
「ぇ、いや私は」
断ったのにそれを聞かず、ずるずる中へ入れられた。
困っていると救世主が現れたんだ。私はすぐ趙宇軒《チャオ ユシュアン》だと気付いたが彼は私だと気付かない。ならば少し遊ぼうと思った。ただ其だけ