テラーノベル
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「雪、降ってるよ」
彼から届いた一言だけのメッセージ。
それが、私たちの最後の会話になるなんて思わなかった。
受験が終わったら、ちゃんと話そう。
春になったら、ちゃんと答えを出そう。
そう言って、曖昧なまま冬に逃げ込んだ。
駅前のイルミネーション。
去年は手を繋いで歩いた道を、今日は一人で歩く。
白い息が、やけに寂しい。
彼は東京へ行く。
夢を追いかけるために。
私はここに残る。
家族のために。
「遠距離とか、無理だよな」
あの日、彼は笑って言った。
冗談みたいに。でも、少しだけ本気で。
私も笑った。
強がるのは、得意だったから。
スマホの画面を何度も開く。
既読はつかない。
粉雪が静かに肩に積もる。
ねえ、まだ好きでいてもいい?
ホームに滑り込む最終列車。
彼は乗っていない。それは分かってる。
それでも、期待してしまう。
――ドアが閉まる直前。
「ごめん」
背後から声がした。
振り返ると、白い息の向こうに彼が立っていた。
「ちゃんと言わないと、終われないだろ」
雪で濡れた前髪。
少し震える声。
「好きだよ。でも、夢も諦めたくない」
わかってる。
わかってるのに、胸が痛い。
「私も、好き」
それだけで、十分だった。
抱きしめられた体温は、雪よりもずっとあたたかいのに、
春までは持たない気がした。
発車ベルが鳴る。
「…雪がやむまで、好きでいて」
それが、私の精一杯のわがまま。
ドアが閉まる。
彼は笑ってうなずいた。
雪は、まだやまない。
でもいつか、きっと溶ける。
それでも今夜だけは、
この冬を、終わらせたくなかった。
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