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午後の練習では、糸師がレギュラーメンバーに加わるかどうかを決める試合が行われることになった。
俺たちの学校では、予定外にレギュラーメンバーを交代させる場合には、実力を認めさせるために試合を行なうのが恒例となりつつある。
去年、蜂楽は一人ドリブルで突き進み、見事にゴールを決めるという圧巻のプレーを周囲に見せつけていた。
試合が始まった。
敵同士の蜂楽と糸師がマッチアップする。静かなグラウンドに、熱い戦いの火花が散り散りになっていた。
どちらも部内でも抜きんでた実力者である。
そんな彼らの対決が発生することは容易に予想されたことではあるが、やはり、糸師の方が優勢のように見えた。
しかし、そこで何かが変わった。
蜂楽の動きに変化が現れる。瞳がギラリと輝き、口元が横に大きく開かれた。
その姿に、俺は息を呑んだ。
——あいつ、なんて楽しそうにサッカーするんだ
そのまま蜂楽がドリブルで凛を抜いた。凛の顔が盛大に歪むのが見える。
ゴールに向かって突き進む蜂楽に、すかさずディフェンス陣が集中する。
「蜂楽！ こっち！」
多田が叫ぶ。しかし、蜂楽はそれに反応を示さない。
「パス！！」
再び強い言葉で呼びかける多田に、蜂楽は観念したかのようにボールを蹴った。しかし、その着地点は多田の走る位置より数メートル先だ。
「お前っ、パス下手すぎだろ！ いつまで自分勝手なプレーすれば気が済むんだよ！！」
多田は怒鳴りながら、ボールを眺めていた。
ボールはそのままラインの外に出ると、全員がその結末を予想した
——ただ、一人だけを除いて
「こんな場所、俺がぶち壊してやる。」
糸師だった。
——なんでお前がそこにいるんだ
糸師は鮮やかな動きでボールを受け取った。蜂楽が放ったボールを、まるで自分へのパスかのように。
そして、その男は瞬く間に蹴り出す。ボールは美しい弧を描き、気づけばゴールに吸い込まれていった。
全員が目を疑い、静寂が漂った中、「にゃはは」という笑い声だけがグラウンドに響いていた。
next.
♡…
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