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アルメリアはスカビオサや彼に荷担しているものたちは許せなかったが、建国当初からこの国と共に歴史を歩んできたチューベローズ教や、その組織に属しているというだけで、ルーファスやブロン司教のような真面目な人物たちまで排除したいとは思っていなかった。


ましてやアウルスの母親のスキャンダルを暴きアウルスもろとも陥れるつもりもない。


なので、いずれアウルスにだけこの事実を話すとして、この書類はスカビオサが罪を逃れそうになったときの最後の切り札として、誰にも見せずにしまっておくことにした。






それからしばらくは表面上何事もなく過ぎた。それでも領地から送られてくる許可証や報告書に目を通したり、揉め事の解決などの些末な業務や実務に追われているアルメリアには、休んでいる暇はなくあっという間に時間は過ぎていった。


今日はこれだけ読んでから屋敷へもどろう。そう思いながら書類を読み始めたときに、スパルタカスが訪ねてきた。


「スパルタカス、こんな時間に珍しいですわね。なにかありまして?」


「連絡もなしに申し訳ありません。以前話していた詐欺にあった貴族がいないか探すと言っていた件で伺いました」


アルメリアがスパルタカスに座るように促すと、スパルタカスはそれを断って話を続ける。


「実は今日、この場に被害にあった貴族をお連れしました」


アルメリアは驚いたが、頷くとすぐに通すよう言った。

部屋に通され入ってきたのはスイリー男爵とシャイルド伯爵だった。


スパルタカスが説明する。


「彼らのご子息であるロロネーとカールは、騎士として私と肩を並べております。それで先日、閣下に詐欺の話を聞いたあと騎士たちにそれとなく『詐欺にあっている貴族たちがいるので、極秘に調べている』と話しました」


「それで名乗り出たのが、お二方のご子息でしたのね?」


スパルタカスは頷いた。


「彼らは一旦屋敷にもどり、話すべきだと説得してくれたのです」


それを聞いてアルメリアは改めて二人の方へ向くと言った。


「名乗り出てくださって、ありがとうございます」


すると二人は首を振る。そして、シャイルド伯爵が口を開いた。


「私たちもやられっぱなしでは悔しいですから、捜査に協力したいのです。なんでも話しますから、なんでも訊いてください」


アルメリアはそれを聞いて微笑み返すと、座るように促し全員が座ったところで早速質問する。


「詐欺とは、やはり貿易関係の?」


その問いにシャイルド伯爵が答える。


「そうです、貿易組織の立ち上げに着手金、継続して月々お金を出せばあとで貿易組織が出す利益のうち、三割をずっと払うからと」


完全に投資詐欺である。


「なにか証拠の書類や、そのときに見聞きしたものはありますの?」


「証拠というか、役に立つかわかりませんがそのときの契約書は残っています。それと私はその貿易組織の船を造船している場所に連れていかれて、見せてもらいました」


次いでスイリー男爵も答える。


「私も契約書を持っています。それとその組織の連中に会ったときに気になったことが一つありまして、奴らコウモリのタトゥをしていました。それと、右手の甲にクローバーの形の痣がある男性がいました」


それを聞いたシャイルド伯爵は、はっとして言った。


「そのクローバーの痣がある人物を、私も見ました。直接話してはいませんが、造船所に連れて行ってもらったときに大人数を引き連れて歩いている人物がいましてね。目立っていたので目で追っていると彼はこちらに気づいて、隠れるように去っていきました。そのときに彼は自身の顔を手で隠したのですが、その手の甲にはっきりと痣が見えたのです。相手がそんな行動を取るもので、逆に酷く印象に残りましたよ。隠れるように去って行くということは、もしかしたら私の知っている人間なのかも知れませんね」


「お願いがありますの。公の場で証言を頼まれたら、協力していただけるかしら?」


二人は頷き、シャイルド伯爵は言った。


「もとよりそのつもりで我々も名乗り出たのです」


それにスイリー男爵が続いて言った。


「是非協力させてください」


「ありがとう」


そう言ってアルメリアは改めて頭をさげた。






今回の投資詐欺の話を聞いていて、アルメリアは一つ思うことがあった。

この詐欺には絶対にダチュラが関与しているだろう、と。なぜなら、この世界にはまだそういった高度な詐欺は横行していなかったからだ。


例えば偽物を売り付けるとか、品物が届かないだとかそんな単純な詐欺被害は数多に存在していた。

だが、今回の詐欺はそれを一足飛びに飛び越えて投資詐欺である。しかも出資者たちに現場を見せたりと、まるで自分が前世でみてきた詐欺と同じ方法なのである。


ずっと認めたくなくて目をそらしてきたが、アルメリアはこのときにはっきり思った。


やはりダチュラは敵であると。


今後はそのつもりで動いた方が良いだろう。

アルメリアは覚悟した。






数日後、突然ルーファスが屋敷を訪れる。


「すみません、不躾かとは思いましたがすぐにでもアルメリアへこの書類を届けねばと思いまして」


「かまいませんわ、なにかあればすぐにでも連絡していただければそれに越したことはありませんもの」


そう言うと、ルーファスは苦笑した。


「ありがとうございます。実は先日お話ししていた証拠書類なのですが……」


「もう見つけましたの?」


ルーファスは困惑気味に微笑んだ。


「それが、詐欺の指示書は流石に見つからなかったのですが、マニュアルそのものを見つけてしまったかもしれません」


「マニュアル?」


ルーファスは頷くと紐で綴られている、ノートのようなものを取り出した。


「これは教会本部にあったものではありません。ここ最近なのですが、私たちの動きをさっしてチューベローズ内部で造反組というか、今の教皇に反発しているものたちが教会内で私たちに接触を図ってくるようになりました」


「では、これもその方たちが?」


「そうです。教会内部はとても閉ざされたものです。ですから反発や造反といった空気にとても敏感で、こんなことをすればすぐになにかしらの理由をつけて、援助を打ち切られたりなどの制裁を受けてしまいます。それがわかっていても我々に接触してくるものたちが現れたということは、彼らにも覚悟ができたということかも知れませんね」


「そうなんですの、でもそれはとても心強いことですわね」


「はい、チューベローズそのものすべてが腐っているわけではないということが証明されて、私も嬉しい限りです」


悪役令嬢は救国したいだけなのに、いつの間にか攻略対象と皇帝に溺愛されてました

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