テラーノベル

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テラーノベル(Teller Novel)

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あらすじ…ある日、弓の体に何らかしらのご都合主義変化が起こり、記憶も体も全て幼児(7〜8歳)ぐらいになってしまったのだ!!?……始まります☆

「ん……んん…」

朝日がふすまの隙間から差し込み、小鳥のさえずりにゆっくりと目を覚ます。あぁ…今日も訓練なのか…。って…あれ?朝…?

「嘘っ…ね、寝坊したっ、ど…どうしようっ、父上に殺されっ…、」

いや、ここで泣いても意味がない。どうせ罰を受けるなら早くに向かって早くに謝って軽くしてもらったほうが幾分かは楽だ。そう思い急いで起き上がる。しかしここで私はとあることに気づく。

「あれ…?服がでかくなって…ブカブカ…?」

寝るときにはピッタリだった寝間着が自分の体よりも大きくなっておりブカブカだったのだ。どうしてこうなったのかよく分からないが戸惑っている暇はない。急いで縛って裾を上げて引っ掛らないようにしてから部屋を飛び出す。ここでまたさらに不思議な事に驚く。

「ゆ…雪!?な、なんで…!?ここ…鹿児島じゃない…の…!?」

弓が鹿児島に来たのは18になる頃であり、まだ今の歳ぐらいのときは鹿児島にいて父親に無理な訓練を受けていたのだ。だからこそ雪が珍しく、そしてすぐに自分の住んでいるところではないと気づく。弓は慌てて縁側に出て走り始める。ここが一体どこなのかいち早く確認して正しい判断をするためである。走り始めて縁側の角で曲がろうとした時何か硬いものにぶつかり尻餅をつく。

「い”っ…!」

思わず痛くて声が出てしまった。日頃訓練しているせいか全身筋肉痛でどこを触っても痛い状態が続いていた。そして痛みに少し涙を浮かばせながらも壁にぶつかったのかと思い、目を開けてみる。

「おい、大丈夫か?お嬢ちゃん、迷子か?」

目を開けた瞬間に入ってきたものは、父親でも母親でも妹でもなく、見知らぬガタイの良い成人男性の牛山だった。しかし幼少期の弓が知っているわけもなく…。

「ひっ…ぃ…ぁ…、」

小さな悲鳴を零しながら涙を目に浮かばせて怯えた表情をしながらゆっくりと後ずさりをしはじめる。

「お、おいおい…大丈夫か?ほら、何もしねぇから、な?」

牛山がニコリと微笑みながら話しかけても弓からしてはただただ怖いだけだ。弓は流石に耐えきれず、走り出してしまう。

(逃げなきゃっ…!こっ…殺される…!)

弓は父親から訓練され始めた頃から「知らない者に出会ったらいち早く逃げて状況を整理し、戦う姿勢を取れ」と教えつづけられていたため、それを信じ込んでしまっていた。今度は来た道を走っているとまた何かにぶつかってしまう。今度は倒れなかったが牛山よりも怖いものに出会ってしまった。

「こんなッ…所に……ぇ…」

それは丁度、散歩から返ってきた尾形だった。もちろん銃もしっかりと持っていたので弓の恐怖感は更に高まる。それに加え第七師団の軍服のズボンに気づき全身が強張る。弓の父親も第七師団の者であったため余計に怖くなってしまう。

「ぁ…あ”ぁっ…ひっ…」

涙を流しながらも言葉すらもまともに出なくなりながらもゆっくりと足が無意識に後ろに下がっていってしまう。本能が逃げろと言っているのだろう、しかし今の状況ではうまく体が動かなくて逃げるにも逃げれない。心拍数が上がり心臓の音がうるさい程耳に響く。

「尾形!銃を隠せ!そして…あれだっ!手だ!手を上げろっ!」

さすがの尾形もいきなりぶつかられて泣かれてしまった為その場で固まってしまっていたが、牛山に言われゆっくりと銃を弓から見えない位置に置いて両手を上げて何もしない意思を示す。しかしそれでも弓の恐怖は収まらない。

「おっ…お願いですっ…、殺さない…で…っ…」

殺されてしまうと勘違いしているのか涙をボロボロ流しながら部屋の前まで後ずさりをしていた。しかしここで騒ぎを聞きつけた他の土方達がやってきてしまった。

「どうした、なんの騒ぎだ?」

「ん…?あんな子供ここにいたでしょうか?」

まず先に土方と永倉の二人が尾形の方から来て首を傾げる。それはそうだろう第七師団の者ならまだしも何も知らない無害な子供が迷い込んだためどうすることもできない。弓は人が増えていくたびに怯える事しかできない。

「あら?あんなに可愛らしい子…いたでしょうか?」

「うぉっ!?ま、迷子っすか!?」

次に家永、そして夏太郎が牛山の方からやってきてその少女に驚く。

「迷子…?こんなところにか…?捨て子とかじゃねぇか…?」

「そんなわけ無い、ただ単に迷い込んだだけだろう。それぐらいわかるだろ、門倉、」

「さっきからなんの騒ぎだ…?うるさいったらありゃしねぇ、」

その次に牛山の方から都丹、そして尾形の方から門倉とキラウシがやってきて、結局的に全員が集合してしまう。

「なんでこんな時に限って全員集合してんだよっ…!あのお嬢ちゃんが怖がっちまうじゃねぇか…!」

牛山が少し困ったようにボソッとそんな事をつぶやく。

「仕方がないだろう、万が一第七師団の奴らが送ってきた者だと言う事もあり得る、それにどうやってここに迷い込んだのか経路を聞かねばならん、」

土方の意見に門倉や夏太郎も頷いていた。しかし…一番の問題は弓だ。見知らぬ人たちに囲まれ緊張と恐怖が一気に高まる。そしてついに…

「…た…すけ……っ…」

掠れた声で何か言ったあとその場で突然、バタンッと倒れてしまう。その瞬間を見ていた全員が焦り始める。

「おい!?大丈夫か!?」

真っ先に動いたのは牛山だった。すぐに駆け寄り優しく抱き起こし、直ぐに家永に見せる。

「気絶しているみたいです、いきなり大勢に囲まれて驚いたのでしょう…、」

「命に別状はないのだな?」

家永が弓の状態を伝える中、流石に土方も心配になったのか家永にその少女の命に別状は無いのかと確認する。家永もそれに答えてその場にいた全員が安堵する。しかし、ここで一つ疑問に思うことがあった。

「そういえば、弓さん見てないっすか?」

『………』

そう、肝心な弓がいない事に夏太郎が真っ先に気づいたのだ。弓はこういう何かしらの事件があれば直ぐに来ると言うのに、いくら待ったとしても来る気配すらしない。全員はその場で沈黙し考えてみる。そう…この少女が出てきたと思われる場所が弓の部屋の前だったのだ。

「まさか…な…?」

牛山は少しだけ分かってしまったのか嫌そうな顔をする。

「開けてみるしか確認する方法はねぇだろ…」

先程まで手を上げていた尾形が少し面倒くさそうに弓の部屋の前まで歩いてきて、襖を開けてみる。しかしそこにはいつもは居るはずの弓の姿はなかった。その代わりに弓が着ていた羽織とブカブカの下のズボンが脱ぎ捨てられたように落ちていた。これでようやく確信がついた。

『まさか…この子供が弓!!?』

全員が驚いたであろう。昨日までいつもの通りだった仲間が急に幼児化したのだから。でも言われてみれば似ているところが多いことに気づく、唯一の特徴の片方の目を髪で隠しているところが一致しているため直ぐにわかった。しかし問題はこの後だ、弓が目覚めればまた怖がられて逃げてしまうかもしれない、それに体や記憶を元に戻す方法も見つけなければならない、実質ここからが厄介なものである。

「どうするんだよ、爺さん、」

牛山は土方に判断を委ねる。他の者たちも牛山と同じように土方の方を見ながら待っていた。しかし、土方の中では既に答えは決まっていた。

「我々が面倒を見る、それと同時に弓を戻すための情報収集を行う、それだけだ。」

そうして…突如として幼児化してしまった弓と土方達との楽しい(?)生活が幕を開けたのだ。


あれから…どれだけの時間が経ったのだろう…?父上から言われた訓練をせずに倒れてしまうなんて…、あぁ、見つかってしまったらまた厳しい躾が来るのだろうか。それなら、いっそのこと…死んで…。

「ん…ん”ん……?」

なんだか体全身が暖かい感覚に包まれていることに気づき、私はゆっくりと目を覚ます。するとそこには…。

「よぉ、お嬢ちゃん。体は大丈夫か…?」

「ヒィッ…!?」

私が逃げていたときにぶつかったとてもガタイの良い人だった。怖くて逃げ出そうとしてみたものの、布団のようなもので包まれており動けなかった。

「怖がらなくていい、俺は敵じゃない、まぁ…こんな顔じゃ、怖くて仕方ねぇだろうけどな…」

私が怯えた様子を見せると、慌てることもなく優しく私に声をかけてくる。それにどこかしょんぼりとした様子を見せてくる、…なんだか罪悪感がする…。

「あ…あの…、この包んでいる毛布…?を外してくれませんか…?」

「ん?あぁ、すまんな、体が冷えちまったらいけねぇと思ってな、」

そう言ってゆっくりと包んでいた毛布を剥がしてくれた。そういえば…私が寝ているのはこのガタイのいい人のあぐらの中だったんだ…。すっぽりと全身が入ってしまう、この人はどれだけガタイが良いのだろうか。しかしすぐに意識は訓練の方に戻される。早くしなければ怒られてしまう、雪の中でも関係ない、父上がやれと言うのならばやるしか無いのだ。

「よいしょ…」

私はその人のあぐらの中から出て外に行こうとする。するとその人に声をかけられる。

「おい、どこに行くんだ?」

「どこにって…外にですけど…」

「何をしに行くんだ?まだ寒いし気絶したばっかだろ、部屋で大人しく温まってろ。」

やれやれと言った感じで注意してくる。お節介ならばいらない、私は言われた事をしなければならないのだから。

「いや、いいです…、私はやらなきゃいけない事があるので…」

そう言ってまた歩き始める。そんないい加減さに少し怒ったのかムッとした様子でそのガタイの良い人は行動し始める。

「だから、大人しくしとけってんだよ、あの爺さんからも見張るように言われてんだ、だから早くこっちに…」

そのガタイの良い人は私を止めようと、私の腕を掴んできた。そのときに驚いたのだろう目を見開いていた。

「何だこの腕っ…!細すぎじゃねぇか…!!」

「っ…!離して!!」

これ以上見られたくなかった。その一心で掴んできている手を振りほどこうとするが全く意味がない。

「おい待て!!何でこんなに痩せてんだ…!飯くってんのか!?」

「貴方にはどうでもいいでしょう!いいから離してください!訓練をしなきゃいけないんです!!」

「そんな体でできるかってんだ!!」

大きな居間に二人の声が響く。その声は外にも聞こえるほど大きかった。そのせいか情報収集から帰ってきた土方達が急いで居間に向かう。

「何があった?牛山、この状況はどういう事だ?」

「なっ…!?」

「この嬢ちゃんが無茶なことを言ってんだよ…!倒れたばっかだってのに外に出て訓練するとかなんとか言い始めて止めてんだよ…!」

土方が真っ先に到着し、二人の現状を見てどういう事があったのかを聞く。なるほど、と納得し弓の前へと移動して少ししゃがんで目線を合わせる。

「この人を説得してください…!私は訓練をしなければならないのです…!」

「倒れたばかりで訓練とは…無茶なことをするな、やる気があるのは結構なことだがお前さんのような子供がすることではない、」

優しく説得しようとするものの、弓は聞いていない。しかし弓の表情をよく見てみるとどこか怯えたような表情をしていた。何かに怯えながら訓練をしているのか?と考える。そんな考えはすぐに現実へとなってしまう。

「お願いですっ…お願いしますからっ…!!訓練を…!そうじゃないとっ…父上がっ…!!」

あとからやって来た全員も、土方も牛山も黙り込んでしまう。泣きながら自分達に訓練をさせてくれと、父親に怯えて早くさせてくれと訴えるその姿。あまりにも子供らしくなくて、まるで軍人のようだった。一度そんな話を弓から聞いていたが本当にあった事だったとは全員が思ってもいなかった。

「それに…なんで私はここにいるんですか!?私はっ…父上と共に列車に乗り遠出をしていたのですがっ…」

溢れる涙を必死に止めようと腕で拭いながらもここがどこなのか、そして父親達はどこにいるのか、そしてどうやって来たのかを話した。このまま話しても何も意味がないと判断した土方はここである行動に出る。

「あぁ、すまないな、言い忘れていた。私達は…お前さんの父親との古き親友なんだ。」

「父上の…お友達…?」

「おい…!爺さ…!」

「…」

あえて恐怖の対象である父親の親友として嘘をついたのだ。牛山も流石に駄目と思ったのか土方を注意しようとするが永倉に睨まれ、土方に合わせろと言わんばかりの視線を合わせてきたため黙ることにした。

「そうだ、先程列車に乗ってきたと言っただろう?その時に預かってくれと言われ我々が共同で住むここに連れてきたのだ、」

「そ…そう…なんですか、でも…!それなら、父上と母上は今はどこに…!」

「二人は少し長めの用事があると言っていた。軍の事でだろう、しばらくは帰ってこないから私達が預かることになったのだ。」

「なる…ほど…」

先程まで警戒剥き出しだった弓の態度はだんだんと落ち着いていき、普通に話せる程度までにはなった。やはり信頼性が高いのは弓の父親や母親と繋がっている者たちなのだろうとわかった。

「改めて…名前を伺ってもいいか?」

「あ…はい…申し遅れました、私は神崎新太上等兵のむ…息子の神崎弓と申します、不束者ですがしばらくの間お世話になります、」

牛山に腕を離してもらうとその場で頭を垂れながら土方に自己紹介をする。その姿に更に目を疑うことだろう。見た目からしてまだ7〜8歳と見えるというのにこんなに言葉が達者で行動一つ一つが大人びていて子供とは到底思えないものばかりだった。

「そんなに堅苦しくしなくてもいい、普通にすればいいだろう、」

「そ、そうですか…、すみません…父上からは自分の親友にあたる者達にはこうしろとご教授していただいたので…不快にさせてしまったのならば申し訳ございません、」

弓は少しうつむきながらも事情を話していたが、その事情にさえも耳を疑ってしまう。普通ならば「ご教授していただいた」という言葉を使わず「教えてもらった」などの柔らかい言い方をするはずだろうに。

「えっと…その…お名前をお伺いしてもよろしいですか…?」

「あぁ、そうだったな、すっかり忘れていた、」

色々なことを考えていた為すっかり自分達の名前を名乗るのを忘れていた。土方達は順番に名前を教えていき、弓は真剣な表情をしながら聞いていた。

「なるほど…お名前の方は把握いたしました、それでは…私は訓練に移りますので…」

そう言ってゆっくりと立ち上がり、居間から出ようとするがその行く道を土方がとおせんぼするように塞いでしまう。

「え…?あ…あの、私…行かなくちゃいけないんですけど…?」

何回も左右に移動するものの、その度に土方がピッタリくっついてきて出れない。仕方がなく弓は他の所から出ようとするものの、全部のふすまの前に一人一人が立っておりどうする事もできず、閉じ込められている状態になる。

「な、なんです…!?一体何がしたいんですか…!?」

弓は訳がわからず混乱しながら土方達に「なぜこんな事をするのか」と問う。

「…牛山、弓を抑えてくれ、」

「あいよ、」

「ちょっ…!何をして…!!」

違う所の襖の前に立っていた牛山が動き、弓の脇のあたりに手を入れて持ち上げる。弓は降ろせと言わんばかりにジタバタと暴れる。しかし牛山に効くわけもなくその抵抗は無駄に終わる。

「失礼…」

「やっ…!やだっ…!めくらないで…!!」

その持ち上げられた弓の前に立ち、服の袖をめくる。弓は必死にやめろと言っていたが何もすることも出来ない。そうして袖をめくられると、弓のやせ細った腕が現れる。食べ盛りな子供がしているような腕ではなかった。

「これはっ…本当に、何でもないんです…、」

弓はか細く震えた声で土方達にそう言う。何でもないわけない、そんなことはすぐに分かる。それでも弓は話したくなさそうにしていた。

「…家永、今から弓の飯を作ってくれ、」

「わかりました、簡単なものを用意します、」

「えっ…!ち、ちょっと…!困ります…!」

家永が用意しに行くと共に弓は慌てて土方に訴える。

「何故だ?そんな体では今にでも折れてしまいそうではないか、」

「だっ…だって…!父上から体重を維持しろと言われてこのままでいるんです…!崩されてしまったら私は…!」

どこまで鬼畜な父親なのだろう、こんな子供にまで制限をかけてこんな姿にさせるとは。土方の中で少しばかり怒りが吹き上がったがすぐに落ち着かせ、怖がらせないように接し始める。

「その時は私達が責任を取ろう、だから安心して食べなさい。」

「いやっ…あの…、そ、それはありがたいのですが…、申し訳ないことに…粥を一口だけで私はお腹いっぱいなので…」

そのことを聞いたキラウシが少し驚いた表情をしながらも弓に言い始める。

「そんなことあるわけ無いだろう、腹が減ったことを隠しても意味がないぞ、しっかり飯を食わなきゃ駄目だ。」

「そーそー、このお兄さんの言うことは聞いときな、俺みてぇな不健康な大人になっちまうぞ、」

キラウシの言う事に乗るように門倉も弓に言う。その間に家永は手際よく粥を完成させ、少し小さめのお椀に移して持ってくる。

「ちゃんと食べてくださいね、今のあなたには栄養が足りてませんから、」

「だ、だから本当に…」

弓がなんとか土方達を説得しようにもできず、仕方がなく粥を食べ始める。弓の一口はとても小さく本当にそれだけでお腹を満たせれるのかというぐらいの少量だった。

「あ…、塩を入れてくれたんですか…?」

「えぇ、体には塩分も大切ですから、」

弓は家永が塩を入れてくれていたことに気づき少しだけ嬉しそうにしながらそう聞く。聞かれた家永は笑顔を崩さずにその問に答える。長らくまともに飯を食べていない筈だが、そのせいで味覚が敏感になったのだろうかと家永の頭の中では思考を巡らせていた。

「あ…それと…、もうお腹一杯です…、ご馳走さまでした。」

「まだ少しも減ってないじゃないか!?」

「ほ、本当に食ったんですか!?」

弓の様子を見ていた夏太郎とキラウシはまだ減ってもいない粥が入ったお椀と弓を交互に見ながらそう言う。しかし、弓の腹は本当に満腹になっていた。これ以上食べたら吐いてしまうぐらいには。

「た、食べましたよ、それに…これ以上食べたら本当に吐くので…」

「やれやれ…困った譲さんなこった…」

様子を聞いていた都丹も呆れていた。牛山も粥を作った家永も、その他も。全員が疑いたくなるほどだった。

「……わ、わかりました…。食べれば…いいんですよね?」

全員の様子から見て信じられてないと確証したのかまた粥を一口分掬って食べる。その様子を見て単なる強がりだけか?と全員が思ったその直後、弓は思わず机の上に粥を吐いてしまう。

「弓さん…!?」

「お、おい…!?だ、大丈夫か…!?」

「すぐに拭くものを持ってきます、」

門倉はすぐに弓の元に駆け寄り背中を撫で、家永は拭くものを持ってくると言い走りだす。

「ゲホッ…ゲホッ…、だからっ…いったじゃないですか…、本当にあれ以上は…食べれないって…」

少し苦しそうにしながら弓はゆっくりと喋る。胃酸が上がってきて喉が痛いのか涙を少し流す。

「すまなかった…、どうにも確証が持てなくてな、」

「本当にそれだけで腹一杯になんのか心配でな…無理をさせちまってすまねぇ…」

全員がオドオドしながらも弓を気遣う。弓はなぜこんなにも心配しているのか不思議でしかならなかった。こんな他人の心配なんぞしなくてもいいのでは?と心の中では思っていたが、そんなに悪い気はしなかった。

弓「いいんですよ、私のことは気にしないでください…、それよりも…私はこの後はどうすればいいのですか?皿洗いとか掃除とか…洗濯とか…、何か指示はありますか…?」

気絶して、吐いて、その後にまだ何かをしようとする弓に全員は頭を悩ませる。そう、弓は何かしらの「指示」がないと動けない、軍人のような感じになってしまっていたのだ。どうするかと考えていた矢先、土方が一つ提案する。

「なら、少し私の散歩に付き合ってくれ、」

「えっ…そ、それだけでよろしいのですか…?も、もっと雑用のような事を押し付けてもらって構いませんよ…?」

弓は予想外な指示が来て驚きが隠せていなかった。

「私は指示を出したんだが…それに従えないと?」

「おい…爺さん…」

土方の態度に牛山は止めようとするが、その前に永倉にその土方を止めようとするのを止められた。

「い、いえ…わかりました…、ですが、生憎…私はあまり服を持っておらず…土方様に恥をかかせてしまうのでは…」

弓はその命令を承諾するが、自分の見た目のことを気にし始める。こんな服では土方の隣に並ぶ資格もないと考えていた。

「それならば問題ない、家永、」

「はい、それでは…弓さんはこちらに…」

「えっ…ちょっ…!?ど、どこに連れて行くんですか!?」

土方は家永に合図すると家永は少し嬉しそうにしながら弓をヒョイッとお姫様抱っこし、奥の部屋へと連れて行く。

「ひ…土方さん…、何をしたんすか…?」

夏太郎は少し気になったのか恐る恐る土方に聞く。

「ただ、家永に弓の服選びをしてもらうだけだ。」

「でも…何か…めちゃくちゃ家永さん楽しそうでしたよ…?」

「そりゃ、今までためてきた服を弓に着せることができるからだろうな、」

牛山がそう言った数秒後…何やら悲鳴やら家永の喜ぶ声が色々と聞こえてくる。

「そ、そんなの似合いません!!そんなフリフリなレースなんてっっ!!」

「あら、いいじゃないですか、あなたは素顔すらも美しいんだからこれぐらいでもしないと…!」

「いやぁぁぁぁ!!」

全員が苦笑いをしながら弓が出てくるのを待つこと数分後…ようやく落ち着いたのか声が収まり、家永が出てくる。

「ささ、出てきてくださいな、」

「……なんでこんな女の子が着るような服を…」

家永が出てきたあとにおめかしされた弓も出てくる。服装はどこか洋を感じさせるような少し可愛らしいワンピースのような服だった。弓は似合わないと主張しているが、洋装が似合う土方と並んでも違和感がないほど似合っていた。

「よく似合っているぞ、弓。」

「すげぇ…、こんなに変わるんっすね…」

「よぉ似合ってるよ、べっぴんさんだな」

「よく似合ってるぜ、嬢ちゃん、」

次々と周りが褒めるため弓も恥ずかしさで顔を真っ赤にしていた。

「では、行くとしよう。」

土方はそう言うとササッと身支度を済ませ、弓の前まで来て膝をつき手を差し出す。

「お手をどうぞ、」

「えっ…あ……、っ…はい…、」

まるでおとぎ話のような展開に弓は戸惑いながらも土方の手を取る。土方は優しく握るとそのまま玄関へと向かっていった。

「シャレなことするなぁ…あの爺さん、」

「そういうカッコつけがしてぇんだろうよ、」

「うおっ…尾形、お前いつの間に…」

牛山がやれやれと少しばかり呆れてると先程まで無言だった尾形が喋ったため驚く。

「それにしても、この後はどうするんすかね…、弓さんを元に戻す方法を探すと言っても薬とかも関係ないだろうし…」

「弓さんの部屋には薬などは一切置いてなかったです、私がこの目で確認してきましたもの、」

部屋に残された者達はとりあえずどうして弓が幼児化したのか原因を探っていた。しかし答えも出るはずもなく…。

『………どうしたもんか…』

そう呟くことしかできなかった。


その頃、街に出た弓と土方は楽しく散歩をしていた。弓にとっては北海道という初めて知る世界に驚くばかりだった。地面は雪で覆われ道には多くの人々が行き交っており、活気にあふれていた。何か荷物を運ぶ荷車のようなものが動いていたり、蕎麦屋や団子屋、遊郭にその他諸々の店がズラッと並ぶ風景に目を輝かせていた。

「凄いですね…!こんなにも活気溢れているなんて…!それに、見たことがないお店ばっかりです…!」

「楽しそうで何よりだ、散歩も悪くないだろう?」

「はい…!むしろ楽しいです!」

先程の謙虚さが消え、子供らしくはしゃぎながら土方に感想を伝えた。その姿を見て安心したのか土方も肩の力を抜いて弓と色々な所を歩き回った。

そうして歩き回っていると周囲からの目線が二人に集まり始める。それはそうだ、周りはだいたい和服が主流であり、洋装などはあまり見かけてなかったからだ。それに紳士的な土方にどこか儚さを感じさせる弓、二人の絶妙なバランス具合にみんな釘付けだったのだ。

「なっ…なんだかすごい見られちゃってますね…やっぱりおかしかったでしょうか…?」

「そんな事はない、皆弓の美しさに惚れ惚れしているだけだ、」

「そ、そんなことあります…!?」

弓は「絶対にありえない…」と小声で言いながらも土方に褒められたことで少しだけ嬉しそうにしていた。

弓と土方は楽しそうに笑い合いながらも散歩を続け、いつの間にか弓は歩き疲れてしまったのかスヤスヤと眠っていた。土方は弓の様子に愛おしさを感じながらも、弓をお姫様抱っこし帰路へついた。


帰ってから数時間が立つ頃…弓はまだ眠たい瞼を擦りながらゆっくりと目を覚ます。するといつの間にか帰ってきていたので少し驚いた様子を見せたが、また土方以外の全員に会えたことが嬉しいのか初めてあった時よりかは警戒心を解いて全員と触れ合っていた。

夕飯も共にし、弓は今日、土方と共に散歩をして見て感じたことやこんな事があったなどの話を楽しそうにしていた。全員も頷きながら弓の話を聞いていた。自分達にとっては何も変わらない風景かもしれないが、弓にとっては大冒険だったのだろう、そう思っているととても微笑ましく思える。

「そうしてですね…土方さんがお団子を買ってくれたんです…!私、みたらし団子が好きな事を土方さんにまだ話していなかったのに、土方さん、まるで分かってるかのように私の好きなものを当てたんですよ…!」

「それは良かったな、土方ニシパは観察眼が鋭いんだな、」

「そうっすよ!土方さんは凄いっすから!」

「お前が自慢することじゃねぇだろうよ…」

「いいじゃないっすか!別に!」

「お前らなぁ…弓よりはしゃいでどうすんだよ、」

ガヤガヤワイワイと弓の話から広がり楽しい雰囲気が広がり始める。弓もその雰囲気に釣られ自然と表情が緩くなり始める。それと共に全員に対しての信用も上がっていった。

「………あの、」

「ん?どうした、弓、何かあるのか?」

牛山達が弓をそっちのけでワイワイと話している所、弓は土方に話しかけた。

「…話したいことがあるんです、土方さんだけじゃなくて…皆さんにも、」

「…?俺達にもか?」

「なんだ?」

「…?」

弓の声がようやく聞こえたのか、他の全員も弓の声に耳を傾け、弓の”話したい事”がどういう物なのか気になりはじめる。

「…本当の事を、話したいのです…。でも、何も言わないでいただきたいのです、これは…ただの自分の話ですから、」

少し暗い表情をしながらそう話す弓に、全員は少しだけ緊張感を感じる。本当の事というのは過去の事だろうか?と疑問に思う。

「私は、もうわかってると思いますが女なんです、それに…この腕の事、何でもないと言ったんですが…色々とあるのです…背中にも色々と傷もありますし、体にも痣がいっぱいで…見せたくないためにこうやって長袖を着てるんです…」

弓は一つ一つ零すように真実を話し始める。自分は息子ではなく娘だと言うこと、肌をあまり見せたくない理由、訓練の内容、父が変わり果ててしまったこと、そして…

「…こっちの、髪で隠している目なんですが…実は…人とは違ってなぜかこっちだけ…青色なんです、気味悪がられたくないからずっと隠してるんです…」

そう言いながらゆっくりと長い前髪を退かして土方達に青い目を見せる。その目は本当に青色で、自分達に刺青を掘った張本人のあのアイヌ人、「のっぺらぼう」の瞳と色味がよく似ていた。

土方達は言いたいことがたくさんあったが、その言葉をすべて飲み込む。弓から言われた約束を守るために。そして弓は本題へと移り始める。そう…

「今まで父親にどんなことを受け、周りの者たちからどんな扱いを受けたのかという、想像しても痛々しい訓練ばかりの日々の事について。」

弓は話しているうちにポロポロと涙をこぼし始める。よほど辛く、苦しかったのだろう。それに周りには誰も味方がおらず誰も話を聞いてくれない。助ける素振りすらも見せない。そんな絶望の中に長い間居続けた事により人間不信になったのだろう。 全部話し終える頃にはもう、涙はボロボロと流れおちていた。

「あ…あれ…?なんで…止まらない…の…?こんな事…いつもの…、事なのに…」

弓は無理矢理にでも笑いながらボロボロと溢れてくる涙を拭く。しかし拭いても拭いても永遠に出てくるため焦り始める。すぐに泣きやまなければ、と自分をさらに追い詰める。

「お…おい…嬢ちゃん…、そんなにこすると腫れるぜ…?」

「牛山様の言うとおりです、ハンカチで優しく拭いてください…」

「私のを使いなさい、そんなに擦っては目に菌が入ってしまう、」

周りはオドオドとしながらもなんとか弓を落ち着かせようと優しく声をかけながらも、ハンカチを渡そうとする。しかし、弓はありえない行動をし始める。

「バチンッッッ!!」

そう、自分で自分の頬を思いっきり叩いたのだ。それも相当威力が高かったのか頬が赤く腫れていた。

「弓…さん…」

「おい…!何してんだ…!」

「弓…!?」

「あれ…おかしいな…、いつもなら…これで涙が引くはずなのに…、」

まるで周りの心配の声が届いてないのか、弓は周りをよそに自分のことに意識を集中させる。それに、これが初めてではなく、もうすでに何回も自分で自分の事を打っていた。

「何してんだ…!なんでそんな事を自分にするんだよ…!」

弓のすぐ隣に座っていた牛山がもう一度叩こうとしていた弓の手を掴んで止める。

「でも…こうしないと涙が止まらないんですよ…、痛みで抑えれるからやってるんですよ…」

力なく笑う弓の顔に牛山はつい苛立ってしまう。なぜ他の者たちの事をは気にするというのに自分の事は一切気にしないのだろう、自分の方が苦しいはずなのになぜそうも…余計に自分を傷つけるような事をするのだろう。まるで意味がわからなかった。

「泣きたきゃ泣けばいいだろ…!」

「そおっすよ…!泣きたいときに泣かないと苦しいだけっすよ…!」

「…私もそう思うがな、弓。」

「ほら…弓さん、ゆっくりでいいですから、」

ゆっくりと宥めているが、一向に収まる気配すらない。むしろひどくなっていっている気がした。

「大丈夫です…!大丈夫ですから…!こうすれば本当に泣きやめるんです…!ほらっ、こ、今度こそ…!今度こそは…!」

涙を流しながらも無理矢理笑って、証明しようと頬を叩こうとする。手を縛るしか止めることができないのか?とそう思いかけていたとき、急に門倉が立ち上がりスタスタと弓の元に歩いてくる。

「……」

「あ…、門倉…さん、だ、大丈夫ですよ…すぐに止めますから…」

「……」

門倉は何も言わずに弓を抱きしめる。普段の門倉ならば「これやばくない…?」「勘違いされない…?」と弱気になってするはずがないが、今だけは…元父親だった頃の感覚が戻ってきたのだろう、優しくも少し力強く抱きしめて背中をポンポンと叩いていた。

「…門倉……さん…?」

弓には戸惑いでしかなかった。突然抱きしめられ、何も言われずに慰められているのだから。

「……泣きたけりゃ…泣いていいんだぞ、我慢なんてしなけりゃいい、喚き泣いてもいい、…もう、そんな事やめろ。」

少し怒ったようなそんなんじゃないような、低い声で弓に言う。その瞬間、弓の何かがプツンと切れたのか表情がグシャリと歪む。そして…

「ゔぁぁぁぁ!ぁ”ぁ”あ”…!」

口を大きく開けながら泣き始める。今まで溜まってきたものが溢れだすように涙がボロボロと流れる。その間、門倉は何も言わずにただ慰め続けていた。力いっぱい門倉を抱きしめながら声が枯れてしまうそうなほどの声で泣き続ける。

「辛”かっ…ぁ”あ”っ…!苦しっ…ひぐっ…う”ぅ”っ…!も”ぅっ…やだっ…ぁ”っ…!!ただっ…、お”とうっ…さんにっ…んぐっ…褒”めら”れっ…たかった…っ…だけ、なの”に”ぃ…!」

弓は少しずつ本当の事を明かし始める。本当は、ただ父親に1度でもいいから褒めてもらいたかっただけと言う純粋な願いだけだった。

「辛かったなぁ…苦しかったなぁ…、言いたかった事…全部吐き出しちまえ、俺らが全部受けとめてやるから…、」

わんわんと泣き続ける弓を横に、門倉は俺よりもこんなに不幸な奴がいたなんてと頭の片隅で思いながらも弓を慰め続ける。その様子に周りも心を痛める。こんなに純粋な子供が自分達と同じく刺青を背負う者なのだと、改めて実感させられた。どうやっても救えれない、今から何をやっても変えられない、運命とはこれほど残酷で、悲しいものなのかという現実を突きつけられる。

…泣き始めてからどれぐらい時間が経ったのかはわからない、どこにもぶつけられない無力さを持ちながらも弓を慰めるのに専念していたため、気づけば遅い時間になっていた。その頃にはもう、弓は泣きつかれてしまったのか門倉の胸の中でスゥスゥと寝息をたてながら眠っていた。

「…なぁ、一つ…俺から提案があるんだが…」

門倉は弓を起こさないように小さな声で他の全員に話しかける。

「なんだ門倉、何かあるのか?」

「その…土方さんとかが迷惑じゃなけりゃ…いいんですが、弓が起きるまで…全員で寝るってのはどうですか…?そうすりゃ、弓も安心すると思いますし…」

「ふむ…確かに、起きた時に我々がいなかった事で不安にさせてはならん、皆はどうだ?」

土方は牛山達に賛成なのかと問う。もちろん全員が賛成を出した。

「そうとなれば布団を用意せねばな、皆、弓を起こさぬようにしてくれ、」

そう言って土方達は一つの部屋に全員分の布団を静かに持ってくることにした。時々、弓が唸ることもあったがなんとか準備することに成功し、全員が布団の中に入る。

「なんだか新鮮っすね…こんな事初めてっすよ…」

「こんな事があってもいいかもな、少し狭いが、」

「それはしょうがねぇだろ…むさい男しかいねぇんだから、」

「あら、私は例外でしょう?牛山様、」

「おめぇも男というかジジイだろ…家永…」

「お前ら静かにしろ…ただでさえ耳に響くんだから静かに寝とけ…」

「相変わらずだな、都丹…、」

「お前らは静かにするということを覚えろ、うるさくて眠れん、」

「そんなに言うな永倉、皆初めての事で気分が上がっているのだ、」

本当は静かに寝るはずだったというのに、いつものように周りに仲間がいるせいか修学旅行の夜にコソコソと喋るような感じで話が盛り上がってしまう。

「あのぉ…弓は土方さんが一緒に寝てあげたほうがいいんじゃ…」

「何を言っている、門倉、我々の中で今の所で一番信頼されているのはお前だけなのだぞ、お前が見てやらなくてどうする、」

「え”ぇっ…!?俺がですかぁっ…!?」

「そうだぞ門倉、お前はいつもドジばっかだから間違えて弓を下敷きにするなよ、」

「そ、そんなに言わなくてもいいだろうがよぉ…だいたい、最初っから言葉がキツイんだよ、キラウシさんよ、」

「それが普通だろう?」

「うぐっ……、はぁ…わかりましたよ…」

キラウシにも少しキツめの言葉を言われ精神的にももうK.O寸前なのか渋々承諾する。でも、考えてみれば弓は女だし、こんなオッサンが一緒に寝るのは絵図等的にやばいのでは?と今更になって焦るが、

「…門…、倉…さ…ん…、」

寝言でも自分の名前を呼びながらギュッと服を握り、胸に顔を埋める弓を見ていると無理矢理に引き剥がすのは可哀想だなと思い、そのままにする。しかし弓の子供体温でだんだんと眠くなってくるのか誰よりも早くに門倉は寝てしまった。そんな門倉を見て他の全員も眠くなってきたのか全員が眠りに落ちる。イビキなどがうるさく、弓が起きてしまうかと思いきや案外安心しているのかそのまま起きずに夜を過ごした。


そして、夜が明け…、誰よりも先に弓が目覚めた。

「ん”……?なんか…暖か…」

目を開けて一番に驚いたのは自分が門倉に抱きついていることだった。いつの間に門倉の部屋で共に寝ていたのかと混乱する。それによく周りを見てみれば…

「あれっ…な、なんで全員ここで寝てんだ…!?」

そう、本来別々の部屋で寝ているはずの土方達が全員集まって寝ているのだ。弓には驚きでしかなかった。本当に何があったんだと頭を回転させる。しかし意外に嫌な感じはなく、嬉しい気持ちが芽生えていた。それにどこか懐かしいような、そんな複雑な感情が胸に貯まる。でも嫌じゃない、むしろもっと感じていたい。そんな不思議な気持ちになる。

「……ありがとう…、みんな…、」

ポツリと、牛山や他の皆のいびきやら寝息などが交じる中、自分にしか聞こえないくらいの声で呟きながら、少しばかり涙を流し、嬉しさに包まれながらもう一度目をつぶる。

その後…お昼になるまで全員で寝ていたのでした☆

𝐸𝑁𝐷‪𓂃𓈒𓏸◌‬

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