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オリブの街に魔物の大群が侵攻してきた事件から月日が流れ、魔物による被害もそのほとんどが元通りに修復されていた。
俺たちもすでにいつも通りの生活へ送っており、依頼やルナに魔法を教えたりと穏やかな日々を過ごしていた。
そんなある日、受けた依頼を達成してたのでその報告をしようとギルドに向かうと受付嬢のミーシャさんが俺たちを見つけるや否やすぐに受付に来て欲しいと案内された。
「どうかしたのか?」
「それがですね!前々から探していたルナさんのパーティ参加の件なんですが、なんと3つのパーティからお誘いしたいと申請があったんですよ!!」
「えっ?!本当ですか!?」
冒険者は基本的にパーティを組んで依頼を受けることからギルドでは冒険者同士のマッチングシステムを用意しているのだ。
自身の情報と参加したいパーティへの希望など書いてを提出すればギルド側が冒険者を探しているパーティや個人に推薦してくれる。そして気に入った冒険者がいればこれまたギルドを通じて勧誘を行い、両者の合意が取れれば晴れてパーティ成立という訳だ。
こうしたシステムは冒険者間のやり取りにギルドが入ってくれることから互いに余計なリスクを避けることが出来るのでかなり重宝されているのだ。
このシステムが作られる一昔前にはこうした冒険者とパーティでのトラブルや事件などがよく起こっていたとのこと。そこにこのシステムが導入されたことでトラブル件数も大幅に減り、依頼の受注達成率も向上したらしい。
ギルドも冒険者もwin-winなシステムなのだ。
もちろんルナも俺との一時的なパーティを組んだ段階でギルドには申請しており、ずっとお誘いが来るのを待っていたのだ。
ただ一つ難点があるとすれば、それはマッチングまでに時間がかかってしまうということだ。
安心安全を担保する代わりにパーティを探している人や新たなパーティメンバーを探している人など様々な人の信頼性を担保しつつ、それらを適切にマッチングさせるというのはかなりの時間を要するために早くても2,3か月はかかってしまう。
だからすぐにパーティを組みたい人はそのシステムに登録しつつ、パーティ募集の掲示板などを見て自らの足で探しに行かなければならないのだ。
どうやらルナも俺との臨時パーティを組む前はそのようにしていたようなのだが、どのパーティからも断られていたらしい。
俺と臨時パーティを組んでからはギルドのマッチングシステムを使って気長にパーティを探していたのだが、今日ついに彼女のことを欲してくれるパーティがまさかの同時に3つも現れたようだ。
「こちらがルナさんを勧誘されているパーティの詳細になります」
「あっ、ありがとうございます!」
ルナはミーシャから勧誘が来たというパーティの詳細が書かれた紙を3枚受け取って、それらをじっと読み始めた。
俺も少し気になったので少し横からその紙の内容をちらっと覗く。
「Bランクパーティが2つ…それにAランクパーティからも?!ミーシャさん!ほ、本当にこれ全部私宛なんですか?!」
「はいっ!それ全部ルナさんへの勧誘をされている冒険者パーティの方々ですよ」
ルナはまさかのことに驚き、何度もミーシャさんの顔と手に持っている紙の間を視線が行ったり来たりしていた。
見る感じかなり良さそうなパーティばかりで何も問題はなさそうである。パーティメンバーがどのような人物かは分からないが、紙に書かれているパーティの実績を見る限り特に変なところはなさそうだ。
「ルナさん、どうされますか?」
「え、えーっと…ど、どうしましょうか…?」
「俺に聞いてどうする」
「そ、そうですよね…」
どれも良さそうなパーティだから迷うのは仕方ないが俺に聞くのは違うだろう。彼女は自分が複数のパーティから一つを選ぶ立場になることは思っていなかったらしく、何度も何度も手の中の紙を見るのを繰り返していた。
「ルナさん、もしその紙に書かれた情報だけでは決めかねるのでしたら一度パーティの方々と会ってお話になってみますか?」
「えっ、そ、そんなことできるんですか?!」
「はい、少し日程の調整にお時間いただきますが出来ますよ」
「じゃ、じゃあお願いしても良いですか?」
「分かりました。ではお時間の取れる日時を…」
そうしてルナはミーシャに勧誘してきたパーティとの面談をすることになった。ミーシャさんがルナの希望の時間を聞き、そしてその後に3つのパーティに連絡を取ってもらって面会の場を設けてもらう。
そしてその日から数日後、ついに面談の日程が決まったとミーシャさんから連絡があった。
「一番早いパーティとは3日後…遅いパーティでも15日後ですか…」
「何だ、緊張してるのか?」
「こ、こんなことになるなんて思ってませんでしたから…」
どうして急にこんなにもルナにパーティからの勧誘があったのかと言うと、ミーシャさんが言うにおそらく先日の魔物の侵攻事件の際の活躍がルナの冒険者経歴に追加されたことが理由かもしれない。
彼女が攻撃魔法をかなり使いこなせるようになったことが書面上から分かるようになったからという可能性がある。
実際、今の彼女の実力ならどのパーティでも魔法使いとして十分に活躍することは出来るだろう。そのことについては俺が自信を持って保証できる。
「あ、あの…オルタナさん」
「何だ?」
「あの…変なお願いしても良いですか?」
「変なお願い?内容にもよるが…」
「パーティとの面談、一緒に聞いていてもらえませんか?」
突然ルナがそのような予想外なお願いをしてきた。
どうして俺が聞く必要があるのかは分からないが、こちらを見る彼女の表情を見ていると何だか突っぱねるのもちょっと…と思ってしまう。
「どうして俺も聞いて欲しいんだ?」
「私、以前にいた業火の剣が初めてのパーティだったんです。それも誘われてはいったのでどういう基準でパーティを選べばいいのか正直分からないんです。なのでもしオルタナさんが良ければオルタナさんの意見も聞いてみたいなと思いまして…」
ルナは手をもじもじさせながら恥ずかしそうに話していた。確かにパーティ選びは慎重になった方が良いのは確かで、いろんな視点から判断するのは大事なことだ。
まあ俺もルナの今後は気になるし、別に忙しくもないから断る理由はないな。
「そういうことなら分かった。ミーシャにお願いして俺も話し合いの内容を聞けるようにしてもらおう」
「あ、ありがとうございます!!!」
ルナはとても嬉しそうに笑顔で感謝を伝える。俺もアドバイスするのならルナがこんな風に幸せそうに笑えるパーティを見極めないとな。
そうして3日後の面談当日、俺たちはギルドの応接室へとやってきていた。
ルナが座るソファの前にテーブルがあり、そしてその奥にもソファがあって対面形式で話をする形になっている。その隣にはミーシャさんも座っており、今回の面談では仲介役として同席するとのことだ。
一方の俺はというと別室で待機しており、それの座るソファの目の前に置かれたテーブル上にはルナが一人で応接室にいる様子が鮮明に移りだされていた。
実はあれからミーシャさんの同意を得て、ルナがいる部屋に魔道具を仕掛けて別室でその様子を見させてもらうことになった。もちろん映像だけでなく、音声も届くようになっているので全て丸わかりである。
「ルナさん、そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ。今回ルナさんは選ぶ側の立場なんですからもっと毅然とした態度でいきましょう!」
「そ、そこまではちょっと…」
モニターからはミーシャさんとルナの会話がしっかりと聞こえてきている。どうやらルナはかなり緊張しているみたいだが大丈夫だろうか。
とりあえずミーシャさんがいるから心配する必要はないとは思う。
すると応接室にノックの音が鳴り響く。
「ミーシャさん、疾風の翼の皆さんをお連れしました」
「はい!どうぞ!!」
ギルド職員によってまず一組目、今日の面談相手の冒険者パーティがぞろぞろと応接室の中に入ってきた。
どんな人たちなのか楽しみではあるが多少の心配もある。
何だか少し俺もルナほどではないが緊張してきたかもしれない。