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?「あの、ゆうま…さん…ですよね?」
知らない女。
?「あ、あの!私のこと覚えてますか?」
「えーっと…」
?「…覚えてないですよね、すみません!!」
女はそう言ってどこかへ行ってしまった
なんだったんだ。誰だろ…
どうして俺の名前
なんで
…
考えすぎも…よくないか
腹減ったし、帰ろ
ー家ー
あれ、なんだろ
久しぶりな気がする
毎日帰っているはずの家なのに
なんだか少し…懐かしい雰囲気をまとっている
部屋中見渡していたら
壁に貼ったカレンダーが視界に入った
「ん?」
おかしい。
3年前のカレンダー?
俺は結構マメなタイプで
カレンダーは毎日欠かさず変えていた
もしかして時が戻って…
いやいやそんなわけ…
慌ててスマホを確認した
「え」
スマホの日付も、3年前だった
いやいやいやおかしいでしょ。
きっと漫画の見すぎだ…
漫画の世界ならよくあることだけど
これは現実だ…
「頭冷やそ…」
とりあえずなんか食おうとして
冷蔵庫を開けた
「あれ」
食材がほとんどなかった
変だ
昨日買い足したはず…
レシートだって!
財布を見た
あれ、ない
なんで…
まさか…本当に時が戻って…
だとしたらどうして
なんのために?
…って
そんなわけがない
俺考えすぎだ
昔っからそうだった
考えすぎてしまう
俺の悪い癖
…そういえば
たっちゃん、元気かな
たっちゃんは俺の親友だ
幼稚園の頃から一緒だった
久々に…家行ってみるか
ーたっちゃん宅ー
ピーンポーン
ガチャ
たつや「はいはーい!…ってお前かい」
久しぶりに会うってのに
そんな反応かよ
まあ、たっちゃんらしいけど
「なんだよ、来ちゃ悪いかよ」
たつや「可愛い女の子が来たと思ったのに」
「はー?お前にはもういるだろ、女」
たつや「女?」
「お前最低にも程があるだろ!」
たつや「…なんのこと?」
「いたじゃん!なんか…もえみ?とかいう名前のやつ!」
たつや「だれそれ」
「…」
たつや「人違いじゃないか?」
…違う。
お前が紹介してきたじゃん
2年くらい前に
ー2年前ー
「なんだよ急に話って」
少し期待してた
たつや「ついに俺…告白されました!」
…
「…」
たつや「あれ、反応薄くね?」
「…」
最悪だ。
いつもこうだ
考えすぎて先を越されてしまう
…俺はたっちゃんが好きだった
昔から
たつや「おーい、聞いてる?」
「あぁ。」
たつや「名前は、もえみ」
もえみ?誰だよそれ…
なんで名前なんて教えてくるんだよ
余計に虚しいじゃん
「…そっ…か」
たつや「あれ…?」
「…」
たつや「もしかして…俺の事狙ってたりする?」
「…!」
たつや「…ってそんなわけないか笑 俺ら男だしな」
「そ、そうだよ、何馬鹿なこと言ってんだよ」
少し…期待した
うなずこうとした俺が馬鹿みたい
手に入るわけなんてないのに
「誰がお前なんか!」
たつや「え、ちょ待てよ!(キムタク)」
俺は逃げ出した
…それから2年間
会ってなかったよな…
たつや「おい…おい!!」
「なんだよでかい声出して」
たつや「いや、お前が急に黙るから…」
「…」
たつや「玄関…寒いだろ、家ん中入れよ」
「そうだな、おじゃまします」
妹「あ、ゆうまさん!いらっしゃい!」
「え…」
いや待て待て
なんで
たっちゃんの妹が
生きてんだよ
たつや「おいおいどうしたんだよまた黙ったぞ」
妹「まあまあ、ゆうまさん疲れているんじゃない?お茶でも入れますよ」
「…あり…がとう」
だって…
たっちゃんの妹は…
ゆいは…
がんで死んだはずだろ?
…まさか本当に
妹「お茶です!どうぞ」
「ありがとう…」
妹「ほらお兄ちゃんも!」
たつや「サンキュー」
妹「じゃ、私少し出かけてきます、ゆうまさんゆっくりしていってくださいね」
妹が出かけて
俺らは2人きりになった
たつや「なぁ、お前、なんか変だぞ?今日」
「そんなことないって…いつも通りだろ」
たつや「それもそう…か」
沈黙
たつや「な、なぁ。お前なんかあった?」
「別に」
たつや「2人だし。言えよ」
「…ほんと何もないって」
たっちゃんは俺の顔を覗き込んできた
「ちょ近いって!」
たつや「…あぁ、ごめんごめん」
「もう、いいよ話すから」
…話すっつっても
信じてもらえるわけないだろ?
「…信じる?」
たつや「…?信じるよ」
なんもわかってなさそう
でも…伝えなきゃいけない気がする
「………時が戻ったんだ」
たつや「…」
「…時が…戻ったんだ!」
たつや「…いや、は?」
そりゃそうなるわな
たつや「…昔からあほだとは思ってたけどここまでとは…」
「ほんとだって…」
たつや「いや、え。時が戻った?」
「…あぁ。」
たつや「…」
「…」
またもや沈黙
たつや「…いや…証拠もなんもないし…」
「証拠……」
そうだ
「お前の、妹…もうすぐ死ぬぞ」
言ってしまった
たつや「…は?んなわけないだろ」
「まだ知らないかもしれないが、お前の妹は…がんだ」
たつや「…え、?いや信じないぞ俺は!たった一人の家族だぞ!!」
「…」
たつや「俺は信じられない!!」
「たっちゃん…!」
たっちゃんは部屋から飛び出した
たつや「あ」
妹「…ごめん」
たつや「か、帰ってたのか。ゆい」
妹「…」
たつや「なぁ、ゆい。おまえ…」
妹「ごめん話…聞いちゃった」
たつや「ゆい、お前がんなんかじゃ…」
妹「…ごめんね。お兄ちゃん」
たつや「…え?」
妹「ゆうまさんの言う通り…がんなの私、すい臓がん」
たつや「…ち、治療すれば!治るだろ?!」
妹「…」
たつや「か、金ならいくらでも!」
妹は小さく首を振った
妹「ごめんね、お兄ちゃん。もう私末期なの…治療しても、無駄なんだ」
たつや「嘘だろ嘘だろうそだろ!!俺は信じたくない!」
妹「お兄ちゃん…」
たつや「…」
たつや「俺が…お兄ちゃんがこんなんじゃ…だめだな…ごめん」
妹「あの、ゆうまさん。先程の話もう少し詳しく聞かせてください」
「え?…あぁ」
「…時が…戻ったんだ。カレンダーを見ても、スマホを見ても…3年前のものばっかで…。最初はもちろん俺だって信じられなかった。でもたっちゃんに会ってから…」
たつや「俺に…?」
「俺ら本来なら2年ぶりの再会だったんだ。2年間会ってなかった俺が急に現れて…あんな薄い反応なの…おかしいと思った」
妹「…2年前、なにがあったんですか」
「…」
言おうか迷った
たつや「何があったんだよ」
「…ただの、喧嘩だよ」
言うのはやめておいた
ほんとはたっちゃんに彼女ができたショックで俺が一方的に避けているだけだった
妹「仲直り…できたんですか」
「…今日しにきたはずだった」
そうか…おれは今日謝るためにここに
たつや「…お前が言ってた…俺に…女って、あれは何?」
…聞かれたくないことを聞かれた
「…お前、彼女がいたんだよ。もえみってやつ」
言いたくなかったけど
言わなければならない気がした
妹「え、もえみ??」
たつや「?…だれだ」
妹「嘘でしょ、お兄ちゃん忘れたの?」
たつや「…」
妹「ほら、あなたたちに良くしてくれてたじゃない、花園もえみさん」
花園…?
そうか…もえみは…花園もえみのことだったんだ
花園は俺らとよく一緒にいたやつだ
…そういえば
あいつもたっちゃんに気があったよな
俺にとっては
ただの邪魔者だったけど
たつや「花園…ね」
たっちゃんも覚えていたみたいだ
なんか嫌だな
妹「ってことは、どこかで再会するのかもね」
どうしよ…すごく嫌だ
そんな気持ちとは裏腹に…俺は
「会えると…いいね」
たつや「…あぁ」
ん?
なんか迫ってくる…かも
あれは、何?…
「ゆうま!!!!」
キキーーー
ドン
…何か鈍い音がした
ピーーーーーーーーー
なんの…音?
心電図…?
あれ、なんで俺
こんなに泣いてんだ
たっちゃん…たつ…や
「……だよ、ゆうま」
「たっちゃん!!!」
たつや「えっ、どうしたお前」
夢か…なんだ
よかった
目が覚めたら
たっちゃんが隣に座っていた
俺、知らない間に寝ていたらしい
たつや「ちょ、なんでお前泣いてんだよ」
「わかんね…」
たつや「しかも俺の名前呼びながら起きるなんて、夢の中の俺なんかした?」
「…」
涙…止まんないんだけど
たつや「ちょ、ごめんて!現実の俺が代わりに謝るから、な?」
「ちがu…」
ぎゅ
え?
たっちゃんが俺を抱きしめた
たつや「何があったか知らないけど、お前何がでかいもん抱えてんじゃないか?」
「…そんなことない」
たつや「少しぐらい俺に分けろ。ちっこい頃からの仲だろーが」
…このまま時が止まってしまえばいいのに
たつや「ん。」
?
「なに?これ…」
たつや「お守り。やるよ、お前に」
「…ありがと」
「たつや…」
もう離れたくない
…
でも
もう
あの日…あいつが女ができたって報告してきた日
俺は逃げ出して…それで
俺は…
車の前に飛び出した
「ゆうま!!!」
俺を追いかけてきたたっちゃんは
車に轢かれかけた俺を庇って2年前に亡くなった
ほんとははっきり覚えていたんだ
全部
「……だよ」
全部
「…きだよ」
…
「すきだよ、ゆうま」
なんで最期に…
そんなこと言うんだよ
カチッカチッカチッ
時計の音で目が覚めた
あれ
カレンダーも…
スマホも…
元に戻っている
ん、なんか握ってる
なにこれ…おまもり?
プルルルルル
スマホが鳴っている
だれだろ
「はい」
?「あの、ゆうま…さんですよね?」
「え?…そうですけど」
?「よかった…繋がった」
だれだ…聞いたことある声
?「私…もえみって言います。花園…もえみ」
あぁ…たっちゃんの
もえみ「それで…伝えなくてはならない事があって」
「…」
もえみ「私、2年前に告白したんです。たつやさんに」
「…聞いてる」
もえみ「それでね、きっぱり断られちゃって。」
え?
断られた?
もえみ「俺には…守らなければならないやつがいるから。って」
付き合ったんじゃ…なかったのか
俺の考えすぎだったんだ
「…それで?」
もえみ「ゆうまさん、私ね、あなたのことだと思うわ」
たっちゃんが…俺を?
もえみ「それだけ伝えたかったの…ほんとは直接伝えようとしたんだけど…変な感じになっちゃってごめんね」
あぁ…そうか
神社で会ったあの女は
花園だったんだ
もえみ「それだけよ…ではお元気で」
ツーツーツー
…俺は
鈍感だ
そういえば
たっちゃんの墓参り
全然行けてなかったな
ー墓ー
女「あ、えーっと…もしかして、ゆうまさん?」
「?」
女「お兄ちゃんがお世話になってましたね…ありがとうございました」
お兄ちゃん…え、妹?
「生きてたんだ…」
つい言ってしまった
妹「…はい、おかげさまで」
おかげさまで?
妹「あのときゆうまさんがお兄ちゃんにがんのこと伝える機会をくれたおかげで…お兄ちゃん、手術代を私にくれたんです」
…俺ほんとに3年前に戻ってたんだ
夢じゃなかったんだ
そうか、俺が言わなかったら
病気を打ち明けないままがんが進行して妹は死んでいた
「でも、末期だったんじゃ…」
妹「あれ、嘘です。そうでも言わないとお兄ちゃん、私の手術のために必死にお金貯めようとか考えそうだったから」
…
妹「でもどっちにしろ、手術代渡されましたけどね笑」
「…いいお兄さんだったね」
妹「…はい」
俺のせいで…こいつは死んだのに
妹は何一つ嫌な素振りを見せなかった
さすがたっちゃんの妹だな…
妹「あ、そのおまもり…」
「あぁ、これ?」
妹「そのおまもり、私がお兄ちゃんに渡したものなんです。」
「えぇ?」
妹「私達の家に代々伝わる”紡”という特別なお守りなんです。渡した相手に思いを繋ぐという言い伝えがあります。今後、もしも大切な人ができたら渡してって、そう言ってお兄ちゃんに渡しました」
「…てことは」
妹「お兄ちゃんにとって、ゆうまさんは…相当大切な方だったんですね」
妹は微笑んだ
どこか
たっちゃんに似ていた
俺はお守りを
優しく握りしめた
少しだけ
朝顔の香りがした
最後に言わせて欲しい
うんこ。
製作者より