コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「私達、小学校のちょっと前から一緒にいるから…もう10年経つのかな?」
そうなのか。10年。長かったような気もする。
私達の仲は、とてもじゃないけど良くはなかった。
性格の違いをなんとか受け入れようと、あなた自身も、悩んできたことでしょう。
拝啓 あなた へ
あなたはよく、私に、「頭がいい」と言いました。
小学校のテストではほんの少しだけ、私が勝っていた。中学校にあがってから、私の成績は下がっていった。 正しい人間関係の築き方も、生き方も、右も左も分からなくなってしまった。
それでもあなたは、「頭がいい」と言ってくれますか。
あなたは何度か、私に、「生きろ」と言いました。
心が病んでいた私に、死ぬ時は一緒だと、夢を持てと、励ましてくれた。勉強も愛嬌も上をゆくあなたの言葉は、私には響かなかった。あなたの存在が邪魔だと、迷惑に感じてしまった。
それでもあなたは、「生きろ」と言ってくれますか。
あなたは時々、私の好きな人を「好き」と言いました。
お互いの性格が似るなんてこともあった。あなたはいつも、私の好きな人を知った上で、その人に積極的に話しかけていた。面倒で邪魔な存在だと思っていた。どんどんあなたを嫌いになってゆく自分が、醜く思えた。
それでもあなたは、私の好きな人を「好き」だと言いますか。
あなたは1度、私を、「好き」と言いました。
友達として、いや、恋愛として。冗談にしか思えなかった。私は、あなたの容姿をいつも嫌っていた。私は冗談だろうと嘲笑し、いいよ、と言った。
それでもあなたは、「好き」と言ってくれますか。
私でさえ、私を好きになれなかった。
私はよく、あなたに「頭がいい」と言った。
人間としてのあなたの生き方は、いつも見下していた。勉強ができても、どうせ上手く生きられないだろうと。根拠は無かった。でも、 可哀想なものを見る目で、あなたと接していた。
それでもあなたは、私と対等な関係でいてくれますか。
嗚呼。もう対等では無いのですね。
あなたが上、私が下。
分かりきったことなのに。
受け入れられずに苦しんでいる自分はなんて愚かなのだろう。
私は何度か、あなたに「生きろ」と言った。
何度もあなたの存在を無かったことに出来ればと願った。いつもあなたに、私の人生の進行方向を遮られた気がして、何となく辛かった。とにかくあなたという存在が邪魔であった。勉強、愛嬌、コミュニティ、ピアノ。全て私の上をゆくあなたが羨ましくもあった。
それでもあなたは、私に裏切られたと感じずに居てくれますか。
かつて、あなたの存在が私の、”唯一気を張らなくていい、居心地のよい友達”だった事がある。
夏休みや放課後は、2人で過ごす時間が長かった。
私にとってのあなたの存在が変わってしまったのは、必然的なことだったのだろうか。
いや、私が変えてしまったのか?
正解が分からない。私はいつ間違えた?
私は時々、あなたに「好き」と言いました。
友達として愛想をつかされないように。その頃、あなたに既に負けていた私は、 あなたに嫌われて、自分にとって不利益なことをされることを、何よりも恐れた。味のない「好き」を何度も発音した。
そうしてあなたは、私を「嫌い」というようになった。あなたは気分によって、私を好き嫌いした。
あなたにとっての私の存在は変わった。
私は毎度、あなたからの評価を気にして、疲れてしまった。
あなたの存在が私の一番の不利益だと、 後になって気が付いた。
早めに離れておけば良かった。
私は一度、あなたの「嫌い」なところを人に話しました。
限界だった。周りの共感が欲しかった。
皆、分かってくれた。
私の気持ちに寄り添って、一緒に怒ってくれた友達がいた。
あなたに味方はさほど居なかった。
愛されているのは私だ。
楽しかった。
私はあなたの話をすると心が躍る。
私はあなたが嫌いではなかった。
…よかった。
敬具