はっぴーばれんたいん()
眠らせてたやつ
短編二つです
文才なんかありません。
案の定駄文。駄文。
cpはどこかに記載してます。
主はにわかです。解釈違いがあると思います。
※ご本人様には関係ありません。
①kgty
②ymkg
kgty
思わず緩む頬を抑えながら、可愛らしく結ばれたリボンを解いていく。リボンでさえも傷一つつけたくなくて、加減しながら丁寧に。やがて纏うものの無くなった小さな箱の蓋をゆっくりと外せば、これまた可愛らしいチョコレートが顔を出す。
その可愛らしさに、この箱を受け取ったときの彼の様子が頭を過ぎる。
『社長、これ義理チョコです。一応作りました。いつもお世話になっているので。あ、ホワイトデーは三倍返しらしいので期待しときますね。』
いつも通りの憎まれ口。そうは言われたものの、彼が学業の忙しいこの時期にわざわざ時間を割き、甘いものが得意では無い私のために考え抜いて作られたのだろうそれは、どんなものよりも輝いて見えた。
一つ。傷つけないよう、落とさないよう、慎重に摘み上げる。綺麗な造形に彼の努力の痕跡が見えて。口角が上がっていくのは仕方の無いこと。
いつまでも触っていたい気持ちと、もうこのまま永久保存してしまいたいという願望を抑え、口の中へチョコレートを運ぶ。
ゆっくりと溶けだしたチョコレートの控えめな甘さと、ほんの少しのほろ苦さ。濃厚なそれは、先程入れたコーヒーと良く合っていて。
チョコレートを堪能しながら、可愛らしい箱を眺めていれば、箱の蓋に何か違和感がある。
手に取り、弄り回していれば、蓋の内側の方の厚紙が外れそうだった。爪でカリカリと厚紙と蓋の間の隙間を広げていけば、少しばかりのノイズを立てて、べらりと剥がれた。覗き込んで、硬直する。
『好きです』
待て。待ってくれ。いくらなんでもこれは。
思わず頭を抱えた。嘘だろ。
蓋の裏、厚紙とノイズに阻まれた彼の本音。それがあまりにも甘ったるくのしかかる。
きっと彼は私がこれに気づかなかったとて、どうする気もなかったのだろう。
心臓はバクバクと早鐘を打っていて、期待と愛おしさで頭がパンクしそうになる。
ふー、と熱を逃がして落ち着くために、息を吐く。少し冷静になった頭が考え出したのは、一ヶ月も先のことについて。
「ホワイトデー、覚悟しておいて下さいね、剣持さん」
仕掛けてきたのは彼なのだ。お望み通りの三倍返し、いや、それ以上に甘いお返しをしてやろうではないか。
ymkg
「あれ、ハヤトじゃん」
事務所で作業をしているのにも疲れ、休憩室のような場所に備え付けてある自販機へと向かうと、そこには見慣れた後輩の姿。
『あぁ、夢追さん。お疲れ様です。』
「おつかれー、ってうわ、すごい量だねこれ。どうりで疲れた顔してるわけだ」
『えぇ、まあ…..ありがたいこと、なんですけどね』
目的であった飲み物を買いつつ話す。ソファーに座ったハヤトとハヤトの前のテーブルの上に置かれた、紙袋いっぱいの大小さまざまな箱。赤やピンクなどのリボンで飾られたそれは、季節を考えれば中身が何か容易に想像できた。
いくつかの箱が紙袋から出され、開封されている。近くに寄れば甘ったるい香りがより鮮明になる。
「社員さんからもらったチョコ?ライバーとかスタッフさんだけだとここまで多くなんないよね。ていうか、今食べてたんだ?」
『はい。ここに来る前に会社に寄ったのですが、社員の方たちから渡されて…帰る前にどうにか減らせないかと』
「モテる男は大変だねぇ。夢追、ハヤトが羨ましいんだけど」
『ほとんど義理ですのでご安心を』
「ほとんどってことは本命チョコもあるんだ?」
『…まあ、ない、とは言えませんが…..え、なんですかその目は。違いますからね!?』
弄りがいのある後輩があたふたするのに、少し楽しくなって、声を出して笑えば、ハヤトはしゅんとしたような、むっとしたような、どっちつかずな顔をする。
デビューから何年も経って、後輩も増えて、今では頼りがいのある先輩をやっているようだが。僕からすれば、何年経とうとハヤトは可愛い後輩だ。
『もう…..一応言っておきますが、全て受け取らずに断らせていただいてますよ』
「へえ、そこまでするの。真面目だねぇハヤトは」
真っ直ぐな好意を断るというのは中々に難しいもので。それでも自分の意思をハッキリと示せるのはハヤトの良いところ。素直に感心していれば、次の瞬間、小さな声でそこそこの規模の爆弾を落とされた。
『まあ、異物混入したものとか、薬が盛られているものとかもありますし。用心するに越したことはないですからね』
「………大変だねぇ。」
社長ってそんなところにも気をつけなきゃいけないのか。一般人には分からんな。
若干その話に引きつつも、ハヤトはやっぱりすごいなという感想に落ち着く。
「でもいいなー!そんなに貰えるの!人からのわかりやすい好意じゃん。あ、いや、まあ全部とは言いきれないんだろうけど。あー、でもゆめおも一つくらいは欲しかったなー」
軽口を交えつつ、そうやって声に出していれば。 ふと、ハヤトがひとつ箱を手に取った。パッと見た感じ市販品だろうか。
『それなら夢追さんもお一ついかがですか?』
「え?でもそれもらったやつ…」
気を遣わせてしまっただろうか、流石に調子に乗りすぎたな、などと頭の中で早すぎる反省会を行っていたが、意に反して目の前の男は朗らかな笑みを浮かべた。
『元々、もらったチョコレートは身内の方と食べると宣言しているので大丈夫ですよ。量が多いので一人では食べきれませんし 』
「へぇ、そうなんだ…」
少なくとも悪い方向で気を遣わせたわけではなかったらしいことに安堵する。それと同時に少しイタズラをしようと思いついて、目を細めた。疲れた頭は判断能力を欠いていたらしい。
「じゃあ、一つ貰おうかな」
『ええ、どう…ん”っ…』
いきなりチョコレートをくわえさせられたハヤトが目を白黒とさせる。その様子に可笑しくなって小さく笑った。
「いただきまーす」
ハヤトの頬を両手で包み込んで、顔を近づける。視界に広がるミルクティー色に、心臓の奥が変な音を立てた。
うわ、ほんとに綺麗な顔してる。そりゃあモテるよなぁ。ほんと、羨ましいな。
僕もハヤトにチョコ渡したかったのに。
ぱく、とハヤトの咥えるチョコを自らの唇で挟んで、目を見開いたままのハヤトから奪い取る。唇には触れなかった。触れたかった、なんてのは僕の我儘。
舌を使ってチョコを口内へと招き入れる。控えめな甘さが舌の上に広がった。そのままゆっくり溶かして、味わって。こくりと喉を鳴らして溶けたそれを飲み込む。
惚けているハヤトに見せつけるように舌なめずりをして。
「ごちそうさまでした」
美味しかったよ、ありがとう、微笑みながらそう言えば。ハヤトは固まったままだけど、その頬はみるみるうちに赤く染まっていく。
『ゆ、ゆめおい…さん、???』
何とか絞り出したかのような声に特に返事はせず、先程買った飲み物を手に、それじゃあまたね、と随分一方的に告げて部屋を出た。
やがて正気に戻ったのか、後ろから呼び止める声がした気がするけど、それは無視した。
さて、ホワイトデーは何をお返ししようか。
コメント
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ホワイトデーのやつは多分そのうち出ます。3月中に出せるといいですね。