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めあ
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鈍い衝撃が、マナの脇腹を深く貫いた。
「……え、」
熱いような、冷たいような感覚が、一瞬遅れて激痛となって脳を灼く。
信じられないという思いのまま、マナの視線がゆっくりと下へと向いた。
ライの腕の隙間、自分たちの体の間に、血に濡れた鋭利な刃物が深く突き刺さっている。
「……っ, が, は……っ」
口内へ一気にせり上がってきた鉄の味を、マナは堪えきれずに吐き出した。
カラン、と刃物が床に落ちて高い音を立てる。
マナの身体から急速に力が抜け、その場に崩れ落ちそうになるのを、ライはただ冷ややかに見下ろしていた。その衣服を、マナの赤い鮮血が容赦なく汚していく。
マナは必死に呼吸を繋ごうとしながら、目の前の相棒を見上げた。
痛みに歪む視界の中で、ライの顔を探す。
「ら………い……どうっ………してっ………」
問い詰める言葉さえ、溢れる血に阻まれて声にならない。
だが、視線が交わることはなかった。
「もう、そういうのいいから」
ライは顔を背けた。
「君はヒーローでしょ」
声が震えそうになる。
だから、笑った。
いつものように。
「俺みたいなヴィランに、構ってる暇なんてないんじゃない?」
沈黙。
やがて、マナが小さく息を吸った。
「……ライ」
「何?」
「……寒いわ」
ライの足が止まった。
「……は?」
「なんか……寒い」
マナは困ったように笑った。
「ごめんな。ちょっとだけ……ここ、おってくれへん?」
ライは振り返らなかった。
「……」
「なあ、ライ」
「……やめてよ」
「……一人に、せんといて」
その声を聞いた瞬間。
ライは、唇を噛んだ。
もうやめてくれ。
頼むから。
そんな声で呼ばないでくれ。
そんな目で見ないでくれ。
俺は君を裏切ったんだ。
君を傷つけたんだ。
なのに。
どうして、まだ。
どうして、そんなに優しいんだ。
「……っ、ほんと……」
ライは顔を覆った。
「ほんっとに、お人好し……」
笑っているはずだった。
悪役らしく。
残酷に。
何も感じていないように。
けれど、指の隙間から落ちた雫を、彼自身だけは誤魔化せなかった。
「……マナ」
呼びかける。
返事はない。
「……ねえ」
振り返れない。
「……帰ろうって、言ったの、君じゃん」
返事はない。
「……俺、ちゃんと……」
声が途切れた。
ライはその場に立ち尽くした。
目の前にあるのは、かつての相棒。
自分を信じて。
自分を許して。
最後の最後まで、自分を救おうとした男。
その手を取ることは、もうできない。
自分で切り捨てたのだから。
自分で、終わらせたのだから。
「……ごめん」
誰にも聞こえない声で、ライは呟いた。
そして、次の瞬間には。
いつもの笑顔を浮かべていた。
「……じゃあね、マナ」
彼は歩き出す。
一度も振り返らずに。
ヒーローだった男は、ヴィランになった。
そして、彼を最後までヒーローだと信じた男は。
その背中を、もう追いかけることができなかった。
「戻ろう」
たった四文字の言葉が、どうしてあんなに眩しかったのだろう。
「……そうだね」
たった四文字の嘘が、どうしてあんなに優しかったのだろう。
ねえ、マナ。
君は最後まで、俺を信じてくれたね。
だから俺は、最後まで君を裏切ったんだ。
――君だけは、俺を悪役にしてくれると信じていたから。
ここまでありがとうございました!妹に書かされたものをぼちぼちあげていきます。
コメント
1件
うわあああああっ!!😭💦💦 第2話でもうこんな重くて美しい展開くる?! ライの裏切りとかマナが最後まで「寒いわ」「一人にせんといて」って呼びかけるとこ、心臓ぎゅってなったよ…。ライも泣いてるし、お互いヒーローとヴィランのままで終われない関係なのが切なすぎる…。この展開、妹さんが書いたってマジ?! すごすぎるよ!次の話も楽しみにしてるね🌸✨