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瞼が重い…
涙でボヤけて鮮明には見えないけど辺りは薄暗い森の中…横に桃花と銀次さんがいた
「む…村は…?アイ…ツは?」
「村にはもう戻れない、そして灰屍は死んだ」
淡々と言い放った
「どういうこと!?なんで!?」
「ゴホッゴホッ」
「急に大声を出すからだ、落ち着け説明はする」
内容はこうだった
灰屍は俺が殺した、だが騒ぎを感じた近隣の村が討伐隊を呼んだ彼らは疑わしき者は罰せよの信条を持っている為俺が見つかったら俺だけでなく妹である桃花も処刑されてしまうから村から離れ森に潜んでいる
…という事だった
「銀次…村には…もう戻れない?」
「桃花、残念だが…一度襲撃された村は復興できたとしても5年は討伐隊が2.3人配属され、その期間が終わった後も定期的に周回が来る」
「桃花は…俺が離れれば…討滅隊がいる安全な村で暮らせるんじゃ…ない?」
「ふむ、確かに桃花の安全は保証されるな」
「それなら!」
「幸せかは別だがな」
「え?」
「お前はさっきの発言をするとき苦しそうな表情をしていたな、それは何故だ?」
「それ…は」
「桃花と別れるのが嫌だったんじゃないのか?」
「……」
「それは桃花も同じ気持ちだとは考えなかったか?確かに安全な場所で暮らせるのは良い事だ、だがこの世にたった一人の兄妹なんだぞ」
「……」
「まぁ難しいか、考えろ俺は二人で決めた事なら全力で支援する」
そう言って俺達が二人になるように離れて行った
「……」
「……」
このままでは沈黙が続くだけ…口火は兄が切らないとな…
「桃花俺は、お前だけでも安全な場所で暮らしてほしいと思っている」
「ダメ、私は兄様と居る」
「でも…」
「でもじゃない!私は兄様とずっと一緒にいたい!」
「そういう感情だけで動いていい状況じゃないんだ!!」
「やだ!」
目尻に涙が溜まっている、だがここで引いちゃダメだ
「いいかげんにしろ!もう爺ちゃんも太助も梅さんも誰も居ないんだぞ!」
「だからだよ…兄様が最後の家族なんだよぉ」
「最…後」
自分の感情がうまく分からない、ただ
“ハッとした”
今までの人生いつも誰かに囲まれてきた
言葉で説明されても…殺されるのを目の当たりにしても生き残ったのは俺達だけ…それに
実感が無かったのだ
トスッ
大きな声を上げながら大粒の涙を流す桃花が胸に抱きついてきた
“守らなきゃ”
その姿を見て誓った
「決まったか?」
「「うん」」
「一緒にいる」
「そうか」
「なら一刻も早くここを離れるぞ」
「銀次さん…俺に桃花を守れる力を付けてください!」
「ハナからそのつもりだった、見ての通り儂はもう戦えん」
「それに分かってると思うがお前の姿を見て受け入れてくれる集落はないと考えた方が現実的だ放浪するにしろ人気のないところで定住するにしろ力は必要だ、修行は甘くないぞ」
「はい!!」
「あぁ、それと桃花傷は大丈夫か?」
「まだ痛いけどさっきよりは平気だよ」
“傷”その言葉を俺が認識すると振り返っていた
左頬に三寸(9cm)程の深い切り傷があった
「あ、…」
「ぐがぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁああ」
村での惨劇の記憶が思い出したくない物が鮮明に強烈にまるで実際に見ているかのように蘇る
左の視界が紅…い…
またどこかで目を覚ました
俺は再び灰屍を殺した時のようになっていたらしい
急に叫び出し当たりの木や動物に襲い掛かり
手頃な標的が無くなると銀次さんと桃花に襲い掛かろうとしたが、そこで静止し気絶したらしい
銀次さんは暴走したのは何か理由があるはずと言い俺は順番に記憶を蘇らせた、結果
暴走の引き金は傷だと言う結論になり桃花と銀次さんは傷を隠す為お面を買いに出かけた
俺は未遂に終わった物の襲い掛かろうとした…と言う事実にとてつもない罪悪感と次は最後まで…という不安に駆られていた、だが離れようとは思わない”灰屍を倒せた力必ず物にしてやる”
夜が明ける背の高い山にいる俺が
一番最初に日の光を浴びる
もう不安はない、あるのは桃花を守れる力が既にこの内にあった事に対する喜
「ただいま〜兄様!」
「戻ったぞ」
桃花は狐の面を被っていた…暴走の気配はない
やはりあの仮説は合っていたことが分かった
「よかった」
「よし、早速だがここを離れる、行き先は更に人気のない山、そこで定住する予定だ」
「「うん!」」
俺は移動しながらの訓練として常に刀を握っているように言われた、これが想像以上にキツかったただでさえ背中に重力のある焚き火用の木を背負いながらの移動で体力を使って疲労で握りが甘くなると叱られる
そんな俺が唯一の休めるのが夜
焚き火を囲んで移動しながら集めたキノコや木の実.動物の肉を使って銀次さんが美味しいご飯を作ってくれる
「いいか無稜、訓練で作れるのはあくまで柱だけそれだけじゃ雨風は凌げない!壁や床や天井を作るのは食事と睡眠だ」
「強くなりたいなら沢山訓練して沢山食べて沢山寝ろ」
その教えに従った、最初は成果がわからなかったが気がつくと常に刀を握っているのは、苦痛でなんでも無くなって林檎や太い木の棒などを手で潰せるようになっていた
3年の時が過ぎた
ブンッブゥッンヴン
日課の素振り1000回
「踏み込みが浅い!」
「はいっ!」
ブンッブンッッッ
「997!998!999!1000!ふぅ」
「銀次さん今日のご飯は?」
「今日は桃花が作ってくれるらしい楽しみにしてるんだな」
「それは楽しみだ!じゃあちょっと走ってくる」
「気をつけろよ」
暇な時はこうして近くの山を
一定のペース一定の歩幅一定の呼吸を崩さず走る
「ふっふっすぅーふっふっすぅー」
かなりの距離を走ったが息切れは起きない体力も上がっている。
段々辺りが橙の光に染まる山の日暮は早い
「そろそろ帰るか」