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和平時空
四季君が後から編入っていう形
矢颪君も皇后崎くんも丸い、ついでに深夜さんも
唾切、深夜、右京、生存してます…(出てくるかは不明)
桃瓦剛志、別名一ノ瀬剛志。彼は一ノ瀬四季という人物における重要な要であり、彼が彼でいれる支えだった。
ただしその支えは、意識がある時から側にあった。だからこそ気付けなかった如何に大切かを、どれほど執着して居たのかを…。
失ってから気付くなんて。
古い廃工場、トタンに囲まれた空虚なその空間に青年の悲鳴のような声だけが響いていた。
赤い線を引きながら徐々に進んでいく。
「親父!目を開けろよ…俺の謝罪聞きたいだろ!!なぁ…目を覚ましてくれよ…」
肩で支えていた重さが急にガクンと増した父親に向けて涙を落としながら、嗚咽混じりに叫んだ。
脳内で何度も何度も何度も何度も何度も、何度も声が反響する。
『お前が殺した』 『父親殺し』 『殺人鬼』 『クズ』 『ゴミ』 『無能』 『親不孝者』
『お前は俺の息子じゃない』
最愛だったはずの父親の声がそう聞こえた気がした。
全ての感情を四季は己にぶつけた。
俺が避けれなかったから、俺が暴走したから、俺が早く抜け出さなかったから、俺が捕まったから、俺が話を最後まで聞かなかったから、俺が車に乗り遅れたから、俺が即座に反応できなかったから、俺が親父に血が繋がってなくて良かったと言ったから、俺が退学させられたから、俺が殴り合いをしたから、俺が喧嘩の仲裁に入ろうとなんて思ったから、俺が変な正義を持っていたから、俺が出来損ないだから捨てられただから……捨てられていたから親父に拾われた。
親父が俺を拾ったのは捨てられていたから、捨てられてたのは俺が鬼だから
俺が生まれてきたから…親父は死んだ?
____俺が生まれてこなければ…。
俺が親父を殺した、全て俺のせいだ……
パキッと心の何かが壊れて消え去る感覚に苛まれた、その瞬間背後から声が聞こえた低く冷たい声が。
「容易に背後を取られるとはな…減点だ」
「……」
四季が黒い意識からスッと目を開ければ、見たことのない壁に床。そして縄で括られて自由に動くことができない躯体。傘を使い筋トレをしている教師…。
その異様な光景を見ても四季はただただ、そうか…。としか思えなかった。
心を占領しているのは「何故死んでいないのか」それだけだった。
父親を殺した己が生きる意味などあるのだろうか?
今ここで息をしている意味など存在して良いのか?
と。
四季はそっと口を開けて赤く小さな舌を出し、幼い頃から尖っていた白い歯で噛もうと下ろした。が、その短い舌を誰かに思い切り掴まれた。
反動で唾液がジワ…と口に溜まる、舌を掴む手の先を見れば上から下まで黒一色に染まった男性がいた。頬に走る2本の黒墨、人差し指で鈍く光る銀色の指輪、黒いシャツと赤いネクタイ。
あぁ…筋トレしていた人か…。と動く事を止めてしまったような頭で思う。
「何をしている。」
「…」
何かを言おうと開けた口、けれども四季は親父の死を以て知っていた。口は災いの元なんだと。吐き出す言葉の全ては人を傷付け、汚し、壊してしまう。ならばもう声などは要らない______。
「…。」
何も言わずにじっと目を見つめた、その黒い瞳を景色を見るのと変わらないことのようにただ眺めた。
「お前は、どうしたい」
音として耳に入ってきた言葉に四季は何も返さなかった、返事だけでなく表情も変えずに。
長い沈黙が続いたせいで四季の口からはダラリと垂れた唾液が顎を伝い地面にポタリと滴った。
「……」
「…」
双方が何も言わずに黙った。空気が流れる音でも聞こえそうな中、無機質な電子音が静寂を裂いた。
四季の舌から手を離す事なく、目を見たまま片手でスマホを取り出し耳に当てた。
「はい、なんです」
「あ、無陀野くん?元気〜?月詠くん達が君と戦闘したいって電話入れてきたよ〜」
「全く変なところで律儀だよねぇ」
開口1番に無駄話が飛んで来たせいで男…無陀野は画面にヒビが入るのではと思うほどに力を込めた。
「…要件はなんですか?」
何が言いたいのだ、その思いを含めて単刀直入に聞けば帰ってきたのは動くことのない表情筋が動くかと思うほどの言葉でしかなかった。
「今審査してる子居るでしょ?その子合格にしてもらえる?」
「その子、鬼神の子だよ」
無陀野は目を細めた。目の前で死のうとした少年が本当に鬼神の子なのかと、それに背後を簡単に取られるなど警戒が薄いところ…全てが疑問でしかない。
ただし一応上の命令となる故に無陀野は是と言わざるを得なかった、電話先の校長はその答えに満足したかのように電話を切った。
「一ノ瀬四季、合格だ」
「お前は今日から俺の生徒となる、まぁ編入生という事になるな」
四季はこの数分の間に何があったのか分からないでいた、けれどもそれを知ろうとも思わないしどうだって良かった。もう、四季にとっては全てがどうでも良かった。
「…因みにだが、舌を噛もうと死ぬことができない。」
「噛みちぎれば筋肉の収縮によって窒息に至るが、失血死することは出来ない。」
「それに、お前は鬼だ…傷などすぐに癒える」
その言葉は四季にとっては暗に、「自殺は出来ないし、意味のない事だ」と言われたのと同義である。自ら死を選ぶことができない。
その事実は余計四季を絶望に陥られた。
「…鬼というものは………」
突如開催された講演会を眺めながら揺らぐことのない内心と既に存在していない父親に思いをはぜた。
嗄れているのに優しく穏やかな声、大きくて皺が深く刻まれている暖かい手、ふとした時に緩く細められる目。
どれも既に記憶にしか存在していない。
親父と呼び抱っこをせがみ手を伸ばせば、最初は険しげな顔をするのに結局はしょうがないと言いたげに目を閉じて笑って抱きしめてくれた。それが泥だらけだろうと。
退学にされた理由を最後まで聞かなかったのは信用していたからなのだろうか、四季が芯の通ったことしかしないと信じてくれていたから…。
「以上だ、わかったか?」
一通り説明し終えた無陀野は四季に向かって質問はあるのかと暗に聞いた。その声に意識を向けて四季が返したのは小さな頷きだけだった。
両手足を拘束していた紐を無陀野は解き、着いてこいとだけ伝えて部屋から出ていってしまった。
「ここで制服に着替えろ」
上裸だった四季を更衣室らしきところへと案内される。自殺もできない現状じゃ四季にはどうすることも出来ない、ただあの無陀野という人の指示に従うことしかできない。
けど、四季にとっては別にそれでも良かった。
どうせ最愛の人はもう生きてないんだから。己が手で殺してしまったのだから、いつかテレビで見た気がする。親を殺した親不孝ものは地獄に行くのだと、だから四季がこれからどんな善行を行おうとも逝く先は地獄なのだと決定しているのだから。
キチンと並べられた黒い制服から端に残っていたものを適当に手を取り袖を通せば、案の定少し上着が大きく手が完全に出ることは無かった。
(大っきい…)
はみ出した指先を少し動かすけれど、可動範囲に違和感が存在しない為これで良いかと部屋を後にした。
「…大き過ぎないか?」
四季の上から下までを見た無陀野は心配さを僅かに滲ませながら質問するけれど、四季は大丈夫だと言わんばかりにフルフルと小さく首を振った。
四季の様子になら良いかと視線を動かし生徒の待つ教室へとローラースケートを動かした。
「ここが教室だ」
茶色の押し扉の前で筋トレをしていた無陀野は地面に目線を落とす四季にそう伝えた。けれど四季はどうすれば良いのか一切分からない故に立ち尽くしている。
それに痺れを切らしたのか無陀野は容赦なく四季の背中を蹴り入室させた。
突然の事に驚きながらも表情に出すことはせず地面に向かって倒れていく四季、もちろん見事に床とぶつかり右鼻からはポタポタと鼻血が肌を伝っている。
(この教室…賑やかだな)
「あ?誰だよ、あいつ」
「言ってた編入生の方じゃないですか??」
「女子!!…ではないですね、ただの萌え袖してる男ですか」
「…」
「は、鼻血出てるんじゃない?あの人…なんか僕まで貧血起こしそう」
「あぁ?私以外見てんじゃねぇよロクロぉ…鼻血か?布団まで連れていってやろうかぁ?」
矢颪、屏風ヶ浦、遊摺部、皇后崎、ロクロ、漣の順で言い出した。けれど彼らを見ても彼らがどれだけ騒がしかろうと四季にとっては景色と周音でしかない。
「自己紹介でもしろ」
微かに以前の癖で口を開けてしまいそうになったけれど四季は手を締めてまっさらな黒板にチョークを向けた。
『一ノ瀬』
そう書こうと思ったけれども、一ノ瀬という父親が残してくれた言葉を自分が使っても良いものか…とチョークを持つ手が止まった。父親の人生において17年前後しか名乗ってないとはいえ、一ノ瀬は剛志が生きた軌跡なのだからし。
「四季、どうした」
黒板前で止まる四季に無陀野は不思議そうに聞いた。ボーッと飛ばしていた意識を戻して四季は何事もなかったかのように黒板に『一ノ瀬四季』と書いた。
ご丁寧に読み仮名まで書いて。
光を映していない濃紺の瞳で無陀野と皇后崎達を一瞥した後に一例をした。
無陀野とのやりとりを見て皇后崎達は喋れないのかと仮定する。それに動かないのでは無くこそげ落ちたような表情、人と目を合わせようとしない仕草。
どこぞの偵察部隊隊長さんとは似ていながらもどこか違う、まるで死を懇願しているように思えた。
「初めまして、遊摺部です」
「矢颪碇だ」
「びょ、屏風ヶ浦穂希です。よろしくお願いしますね」
「手術岾、ロクロ…よ、よろしくね」
「漣、コイツは私の旦那だから手ェ出すんじゃねぇぞ!」
「皇后崎」
全員の自己紹介を大人しく聞いて再度深々と頭を下げた、席は空いているところを勝手に座って良いと説明され誰もいない端にそっと座った。
「今日はここまでだ、四季校内を案内する付いてこい」
また前のように言うことだけを言い残し教室から出ていってしまった無陀野を慌てるように追いかけた。
「最近鬼になったばっかりなのかな?」
「角生えてたしな」
「声出ないんでしょうか…?」
「だと思うよ…」
「なんか、尽くし甲斐ありそうだよなぁ…」
遊摺部の疑問に矢颪が答え、屏風ヶ浦の問いに手術岾が賛同する。漣がペロリと唇を舐めて笑った。
何も言わないでいる皇后崎はただ思う、羅刹に来る前の己のようだと。目標のためにだったら命も容赦なく掛けれる、そんな自暴自棄だった自分に。
「まずは校長が会いたがってるから会議室に向かうぞ」
四季が着いてきている事を横目で確認してローラースケートを進めていった無陀野、四季は小走りになりながら僅かに頷く。
会議室の扉を開ければ、そこには顔を隠し着物を着た人が居た。横には薄いピンク色の生物。
「初めまして、一ノ瀬君」
「君は鬼神の子と言われる存在なんだけど、その事は自覚してるかい?」
四季が頭を上げ顔を見合わせた瞬間、校長と呼ばれる人に言われた事に四季は頭を振った。鬼神という単語も自分がそんな存在な事も何一つ知らない。
それよりも気になるのは校長の隣の椅子に座っている小さく薄いピンク色、そんな生物は四季が知る限り今まで見たことがない。
「そっか…」
「改めて羅刹へようこそ」
「こっちに居るのは獏速通信の獏 名前は夢喰通称むっくんだよ」
四季の視線の先に気付いたであろう校長が丁寧に教えてくれた。むっくんと呼ばれるその生物は四季をじっと真っ直ぐに見ている。
「ほら一ノ瀬くんに挨拶してきな」
校長がむっくんにそう言った瞬間に四季は倒れ込んでしまうほどの衝撃を喰らう、その衝撃の主はふわふわのむっくんだった。
(あったかい……それに、やわらかい…)
ぎゅうと反射的に四季もむっくんを抱きしめた、むっくんも四季の服をギュッと掴み離さないでいる。
「むっくんがこんなに懐くなんて珍しいね…」
「む〜!むぅ〜〜」
グリグリと四季のお腹に頭を擦り付ける行為、校長も無陀野もこんなことは見たことがないと目を見開いている。
校長は普段からむっくんに好かれている、それこそ囲まれる事もあるぐらいだ。けれどもそんな校長ですら知らない…まるで求愛のようなむっくんの行為を。
「うーん…離れそうもないし、一旦はこのままにしておこうか!」
校長は楽しそうにそう言った。無陀野は校舎案内を続けると校長に一礼して四季を連れて会議室から出る。
四季は大事そうにむっくんを抱えてペコリと頭を下げる、むっくんは四季の腕の中で幸せそうに「むぅ」と短く鳴いた。
つい調子乗って5000字以上書いてしまった…
まだむくしき感少ないんで次回からもっと甘々むくしきを書く予定!!
めちゃくちゃ余談すぎますけど、むくしきってオセッセできるんですかね…?
むっくんの手で乳首弄られてイっちゃうとかしか思いつかねぇ…
むっくん口あるかわかんないからディープキスできるかわかんないし…
悩ましい…
コメント
3件
( ´ ཫ ` )
むくしき…新しい扉開いたかも笑 今回もめっちゃ面白かった✨✨
可愛い しにそ(?)( ´ཫ` )