テラーノベル
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年越しの空気は、冷たくて、やさしかった。街は光ってるのに、〇〇の心だけが少し暗い。
仕事は今やっと終わった。
だけど、終わった瞬間に押し寄せてきたのは達成感じゃなくて、ぽっかり空いた穴だった。
スマホを見る。
三人からのメッセージ。
「無理すんなよ」
「帰り気をつけて」
「待ってるからね」
――待ってる。
その言葉が、逆に胸を締めつけた。
本当は今頃、
四人でソファにぎゅうぎゅうに座って、
テレビ見ながら笑って、
年が変わる瞬間に同じ息を吸ってたはずなのに。
「……会いたいな」
誰にも聞こえない声で呟いて、
一人、家までの道を歩く。
そのときだった。
ぽつ、ぽつ。
次の瞬間、ざーざーっと音を立てて雨が降り出した。
「……最悪」
傘は持ってない。
逃げ場もない。
雨はどんどん強くなって、
コートは重く、足先は冷たくなっていく。
立ち止まっても、どうにもならなくて。
〇〇はそのまま、雨の中を歩き続けた。
――ひとりだ。
そう思った瞬間、
胸の奥がぎゅっと潰れた。
みんなは今、あったかい家で笑ってる。
自分はここで、濡れながら帰ってる。
「……私、なにやってるんだろ」
雨に混じって、涙が落ちても分からない。
誰もいない。
本当に、ひとり。
指先の感覚がなくなってきて、
体が小さく震え始めた頃。
「……さむ」
声もかすれていた。
元貴達がいる家には行かずに
そのまま〇〇の家に着いて、
鍵を開けて、
電気をつけないまま玄関に立ち尽くす。
静かすぎて、
余計に寂しさが膨らんだ。
服も濡れたまま、
ソファに座り込んで、
ぼんやり天井を見上げる。
「……年、越しちゃった」
そのまま、気づかないうちに眠ってしまっていた。
——
「……〇〇?」
聞き覚えのある声で、意識が引き戻される。
「……やば、熱ある」
額に触れた手が、あったかい。
目を開けると、
そこには、もと、ひろ、りょかの三人。
「……なんで」
弱々しく言うと、
「なんでって顔真っ赤だよ」 もとが困ったように笑う。
「連絡つかなくてさ」 ひろの声は、ちょっとだけ震えてた。
「雨も降ってたし」 りょかは眉を下げて、〇〇の頬を撫でる。 「心配しないわけないでしょ」
〇〇は状況を理解するより先に、
涙が溢れていた。
「……ひとりだった」 「さむくて」 「さみしくて」
言葉が途切れ途切れになる。
その瞬間、
三人が一斉に距離を詰めた。
もとは〇〇をぎゅっと抱き寄せて、 「もう一人じゃない」
ひろは背中を包むように撫でながら、 「ちゃんと迎えに来た」
りょかは額に額をくっつけて、 「遅くなってごめんね」
ベッドに連れて行かれて、
着替えさせられて、
毛布に包まれる。
「動かなくていい」 「全部俺たちがやる」 「今日はゆっくりして」
そのまま、
三人がベッドに入り込んできて、
〇〇は完全に囲まれた。
もとの腕の中、
ひろの胸に頬を預けて、
りょかの手が髪を撫でる。
「……こんなに」 〇〇が小さく言う。 「ずるい」
「ずるくない」 もとが即答する。
「〇〇だから」 ひろが優しく言う。
「当たり前」 りょかは微笑んだ。
「熱下がるまで、動かさない」 「トイレも一緒」 「水飲むのも俺らが」
「赤ちゃん扱いするから覚悟して」
その言葉に、
〇〇は少しだけ笑った。
「……しあわせ」
三人は顔を見合わせて、
同時に〇〇を抱きしめる。
「今年も」 「来年も」 「ずっと一緒」
———
熱でぼんやりする〇〇の意識の端っこで、
ずっと、なにかあったかいものが動いてた。
誰かの手。
誰かの声。
誰かの体温。
「……ん」
小さく声を出した瞬間、すぐ反応が返ってくる。
「起きた?」 「喉痛くない?」 「水飲む?」
ほぼ同時。
三人とも、寝てない顔。
「……ねてないの?」
かすれた声で聞くと、
もとが肩をすくめて笑う。
「寝るわけないじゃん」 「〇〇が熱出してんのに」
ひろはそっとストローを口元に当てる。 「ほら、ゆっくり」
りょかは反対側から頭を撫でて、 「えらいね、ちゃんと飲めてる」
一口飲むたびに、 「上手」 「いい子」 「はい、もう一口」
「……こどもじゃない」
そう言うと、
三人とも一瞬きょとんとして、
次の瞬間、同時に優しく笑った。
「知ってる」 「でも今は」 「俺たちの大事なちっちゃい子供」
もとが額にキスして、 「弱ってる〇〇、守る番」
ひろは指を絡めて、 「逃がさないよ」
りょかは囁く。 「一人にしたの、後悔してるから」
その言葉で、胸がきゅっとなる。
「……さみしかった」
正直に言った瞬間、
三人の表情が一気に変わった。
もとは〇〇を抱きしめて、 「もう言わせない」
ひろは背中に顔をうずめて、 「これからは絶対」
りょかは耳元で静かに、 「寂しい時間、全部埋める」
そのまま、
三人が交代で体温を確認して、
タオルを替えて、
薬の時間をメモして。
「俺、次の見張り」 「じゃあ俺が抱く」 「〇〇、動いたら起こして」
……見張りって何。
でも、
誰かが必ず触れてて、
誰かが必ず起きてて、
〇〇は一度も“ひとり”にならなかった。
夜中、無意識に〇〇が呟く。
「……いかないで」
その瞬間、
三人の手が一斉に強くなる。
「いる」 「ここ」 「離れない」
それだけ聞いて、
〇〇は安心して、また眠った。
———
朝の光で目を開けると、
視界が狭い。
……近い。
左にひろ、
右にもと、
正面にりょか。
ぎゅう。
「……なにこれ」
声を出した瞬間、
「起きた」 「熱どう?」 「まだ寝てていいよ」
三人同時。
「……もう下がった」
そう言うと、
三人が顔を見合わせて。
「じゃあ」 「なおさら」 「離さない」
「え?」
もとが真顔で言う。 「病み上がりは甘やかす期間」
ひろが頷く。 「最低でも今日一日」
りょかはにこっと笑って、 「拒否権なし」
ベッドから出ようとすると、
即、三方向から引き戻される。
「どこ行くの」 「だめ」 「ここ」
完全包囲。
「……トイレ」
そう言うと、
「俺ついてく」 「ドアの前で待つ」 「転んだら困るでしょ」
……過保護が加速してる。
戻ってきたら、
また即ベッド、即ぎゅう。
「ねえ」 〇〇が小さく言う。 「こんなにされたら、離れられなくなる」
一瞬、静かになって。
もとが優しく言う。 「それでいい」
ひろが続ける。 「離れる気、最初からない」
りょかは〇〇の手を胸に当てて、 「ここ、〇〇の場所」
胸の奥が、じんわり熱くなる。
「……だいすき」
小さく言ったつもりだったのに、
「知ってる」 「嬉しい」 「可愛い」
三人から即返ってくる。
そのまま、
四人でくっついたまま、
なにもせず、
ただ一緒に朝を過ごした。
雨は完全に上がって、
静かな新年の朝。
〇〇はもう、
“ひとりの年越し”を思い出しても、
寒くなかった。
だって今は、
三人の腕の中が、
世界で一番あったかかったから。
——
どーでしょう。2026年ということでゆなちゃんのリクエスト×年越しで書いてみました!嫌だったら遠慮なく!リクエストもコメントも遠慮なく!年越し蕎麦美味しかった
コメント
2件
最高すぎて禿げたじゃないか💦(??) リクエストはぁぁぁ!ミセスのみんなが仕事で1日家を開けてしまうときのみせすと〇〇ちゃんの反応がみたいですわ!!