拓実が帰ってきたのは、夕方より少し遅い時間だった。玄関のドアが開く音がした瞬間、
瑠姫の胸は一気に熱くなる。
拓「……ただいま」
その声が弱くて、苦しくて、それを聞いた瞬間、瑠姫は立ち上がった。
躊躇なんてなかった。
走って、飛び込むみたいに抱きつく。
瑠「……拓実……っ」
拓実は驚いたように瞬きをして、でもすぐに、息ごと抱きしめ返した。
拓「離さんといてな?」
腕が、背中に回る力が、怖いくらい強い。
瑠「離れないよ。ずっと一緒にいる」
拓実は肩に顔を埋めたまま、少し震えていた。
拓「俺、ほんま無理やった。るっくんおらんくなるんちゃうかって思ったら、息できひんかった」
瑠姫は背中をゆっくり、落ち着かせるように撫でる。
瑠「俺は、ここにいるよ」
拓実は、喉をぎゅっと締めつけられたみたいに息を漏らす。
拓「大好きや怖いくらい」
瑠「俺も。大好き」
ー翌日ー
校門に着く前から拓実は瑠姫の手を繋いでいた。指と指を絡める握り方。
まるで「離さない」って刻みつけるみたいに。
瑠「拓実、そんなに握ったら手汗すごいよ」
拓「別にええ。離したないもん」
瑠姫は少し照れながら微笑む。教室に入っても拓実は隣から動かない。
席も、休み時間も、ひじの位置までぴったり。
そして、瑠姫がふと席を立とうとする。
瑠「ちょっとトイレ行ってくるね」
ガシ
背中から抱きしめられた。
拓「…やだ」
教室が一瞬、静かになる。瑠姫はゆっくり振り返り、
拓実の頬にそっと手を添える。
瑠「すぐ戻ってくる。待ってて?」
拓実は唇を噛んで、目を逸らす。
拓「絶対?」
瑠「絶対」
拓実は腕をほどく代わりに——瑠姫の袖をつまんだまま離さなかった。
まるで「見失いたくない」って言ってるみたいに。
瑠姫はそっと手を握り返す。
ー放課後ー
帰り道。夕日の色が街を淡く染めていた。
瑠姫は歩きながら、拓実の袖をちょん、と引いた。
瑠「拓実」
拓「ん?」
瑠「好き」
拓実は顔を真っ赤にする。
拓「急に、、」
瑠姫はまた、袖をちょんと引く。
瑠「好き」
拓「やめぇや」
瑠「好き、好き、好き」
拓実は耐えられなくなって立ち止まる。
拓「そんな言われたら、泣くやろ……」
瑠「泣いても可愛いよ」
拓実の目に涙がにじむ。瑠姫はそっと抱きしめた。
拓実も抱き返す。
離れないように、強く。
ー夜ー
拓実は、瑠姫の背中にぴったりくっついて寝ていた。
息が当たる距離。離れたら寒いみたいに。
瑠姫は起きて、動こうとしたけど——
拓「行かんといて……」
寝てるのか、起きてるのか分からない声。でも手は、ぎゅっと掴んでくる。
瑠「どこにも行かないよ」
拓「ほんま……?」
瑠「本当」
拓実は、安心したみたいに小さく息を吐いた。
拓「好きや、、るっくん…」
瑠姫は振り向き、拓実の手を握ったまま目を閉じる。
瑠「俺も。ずっと好き」
ーENDー
2人は不安を抱いたまま、それでも離れなかった。
この物語は、「傷ついたから終わり」じゃなくて、「それでも一緒にいる」を選んだ話。
だから続きは、
一緒に生きていく証だよ。
END
完結しました!!次回からは他のペアのBLを出すので引き続きよろしくお願いいたします!\(^o^)/
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