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ピピピピッ、ピピピピッ……カチッ
「ん…あさ……」
午前 5:30
学校に行くまでまだまだ時間はあるけど、
俺にはやることがある。
それは………
コンコンッ
ガチャ
「おはようございまーす……」
「……zzz」
この屋敷の息子・トワを起こすこと。
「…起きてくださーい」
体をゆさりながら呼びかける。
しかし、反応は何もない。
「……」
大抵、俺が声をかけて一発で起きることはない。…しょうがない。
「……今日の朝食にトワ様の好きないちごジャム買ってきたんですけd…」
「ふぇッ、まじ!?」
「うぉッ」
突然飛び起きた。心臓がバクバク言ってる。
「おッ…おはようございます……」
「んッ!おはよ〜…」
笑顔で挨拶を返した後、大きな欠伸をした。
これが、俺の日課だ。
俺・リンはこの家で5年前から働いている 。
そして、その時からここで暮らしている。
俺の母親は病気で、病院にいる。
父親はというと、
いま近くの国々で戦争が起きており、
戦場に備える訓練をしに
遠方へ行っている。
当時12歳の俺は、親同士が同級生で
仲の良かったこの家に引き取られた。
15歳の時、母さんの治療費もあるため
学校は行かないつもりだった。
学校に行かない同年代は少なかったが、
しょうがないと思っていた。
しかし、この家の主人・トワの父さんが
学校に行けるように金を出してくれた。
有名な企業の社長で、トワは御曹司なのだ。
タダで行かせてもらうわけにも行かないので
学校に行かせてもらう代わりに
この家で働き、そのお金を返し、
ついでに母さんの治療費も稼ぐことにした。
ここに来て、5年。
学校卒業まで、あと1年だ。
「ん〜!うますぎ……」
大量にイチゴジャムが乗ったトーストを
頬張っている御曹司。
トワは卒業後、この家を継ぐらしい。
「はやく食べないと……時間結構ぎりぎりっすよ」
「んッ、大丈夫だって」
そう言ってトーストを大口で一気に食べる。
「ごちそうさまでした!」
朝から元気で子供みたいな彼を見て
思わず口元が緩んだ。
まぁ、ひとつ年下なのだが。
「いってきまーす」
「いってらっしゃい」
トワの声に、トワの母親が優しく返す。
いつも俺たちを玄関まで見送ってくれる。
「リンくん、帰ったら夜ご飯の支度、手伝ってもらっていいかしら?」
「もちろんですッ!承知しました」
「ありがとう。気をつけてね」
「じゃあね、母さん」
「行ってきますッ」
ガチャ
トワと2人で学校まで歩く。
横を向くと、眠そうに欠伸をしていた。
長いまつ毛に
通った鼻筋
柔らかく、黒い髪の毛
欠伸をしても、その整った顔が崩れることはない。
おまけに身長も高い。
年上の俺よりも上背がある。
「ん?どうしたの笑」
「えッ?」
「そんなに見てたら照れるんだけど。
なんか顔についてる?今朝のジャム?」
「いや、別に、なにも……」
顔が綺麗すぎて見てた、なんて言えない。
「ふーん……。じゃあ、もしかして見惚れてたとか?笑」
図星すぎて、思わず「はっ!?」と声をあげてしまう。
ていうか、自覚あんのかよ。
「…ッはやく行かないと遅刻するぞ!朝練あるんでしょ!」
「あっはは笑 忘れてたー」
そういって、さっきより早足で向かう。
家では、主人と世話係。
家の外では、友達。
そんな特別な関係だ。