テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
あれから何年もの月日が流れ、聖來のいる高校へ通う時がきた。
「紫鬼!」
何か重大なことが起きないともうここには戻ってこない。最後の別れの挨拶を交わし,人間界に行くための門を静かに潜った。
着いた先は一つの一軒家。きっと母が用意してくれたものなのだろう。玄関には手紙が置いてある。
「…誰。」
玄関を開けるとスタイルの良い男性が掃除していた。
「お初にお目にかかります。貴方様のお母様、アンジュ様の前執事をしておりました、レイノルドと申します。」
「はじめまして。」
レイノルドは掃除用具を魔法で消し,礼儀正しくお辞儀をした。
さっきからずっと魔力がほんの少しだけ漂っているから魔法か何かで人間に近づけているのだろう。俺ほど人間には近くないが…。
「種族は…吸血鬼(ヴァンパイア)か?」
レイノルドはこくりと頷く。
「じゃあ,外に出たり,十字架とか,にんにくは無理とか…。」
「いえ,それはただのうわさでしかありません。まぁ,血を好むのは本当ですが…。」
吸血鬼というものは異世界小説のようなニンニクに弱く、日光に弱い。…というので親しまれていたがどうやらそれは人が作った物語の内容であって実際には全然違うようだ。実際、少し吸血鬼の血が入っている俺も日光は大丈夫だし、ニンニクだって食べれる。まぁ、好きではないが。
「では、紫鬼様の部屋を案内させていただきましょうか?」
「じゃあ、頼んだ。」
レイノルドに連れられ、部屋のドアを開けると、家ではないだろいとつっこみたくなるような広さの部屋があった。きっと、魔法かなにかで魔界にある俺の部屋をそのままこちらへ持ってきたのであろう。
「いや…どんな魔法だよ。」
「では、紫鬼様が通うことになる学校は明日ですのでそれまでごゆっくり。」
レイノルドが部屋から出ていった。
窓から見える空は見た事のない青さの空だった。雲ひとつない、快晴と呼ばれる空。前世ではこんな空を見ている暇なんて無かった。生きるのに精一杯だった日々。
「はーぁ、転生して良かった。」
転生したからこそ辛い日々はあった。もうあんな施設には帰りたくない。だからこそこの戦争を終わらせなくてはならない。
それが、俺の使命だ。
「レイノルド、少し外に出る。」
魔力を極限まで削っている俺がここで魔族として見つかることは新しい兵器などが生まれない限り不可能だ。
レイノルドがバレる可能性は大いにあるが、あの家にはいられなけば問題ない。学校で魔法を使ったって、その学校では普通。バレることは無い。
「でっけ。」
歩いて数分、KING高等学校が見えた。こんな大きな建物は魔王城の次に見た。
「ここが、明日から通う学校か……」
俺は大いに胸を膨らませた。