テラーノベル
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君の心が壊れていようとも、生きていればそれでいい。
それが無陀野達の願いだった。
確かに欲を言えばもう一度、あの周囲を照らすような笑顔で名前を呼んでほしい。
そうしたらちゃんと、君の名前を呼んで抱き締めて、愛していると伝えるから____。
「今日はなんか天気悪いね…」
保健室の窓から見上げた空は分厚く何層にも重なり合い、黒く濁っていた。
「…嫌なことが起きないといいけど」
花魁坂が呟いた声は、残念ながら叶いはしない。
ガラリと開けられた保健室の扉を見れば相変わらずの無表情でいる無陀野がいた。
「あれ?ダノッチどうしたの?珍しいじゃん」
「練馬区と杉並区から応援要請がかかった、お前も来いと言うことだ」
「…そう言うこと」
戦場に駆り出される、それは少なからず鬼の死傷者が出ていると言うこと。しかも花魁坂を呼び出すほどの緊急事態だ。
一刻を争う、すぐそばに置いてあった医療バッグだけを持って花魁坂と無陀野は保健室を…羅刹学園を後にした。
四季には会わずに。
闘いは凄まじいものだった、地下の隠れ家には重軽傷者が所狭しと占領していた。
自分らで応急処置を行い再度戦場に向かう鬼も居れば、足を引き摺りながらも戦場で命を賭ける鬼もいた。
無陀野は最前線で闘い生徒達は後方支援及び、花魁坂の補助。
淀川と並木度も戦闘に加わるという異常事態だった。
約2日と数時間
漸く鬼側の勝利で幕を閉じた。物的被害は酷いものの人的被害は異様なほど、鬼側も桃側も少なかった。
___まるで、何か別の意図があるかというほどに…
羅刹に帰るのは休養も兼ねて1日後にする。そう判断が下った。無陀野も花魁坂も何も言いはしないが本音を言えば今すぐ帰って四季に会いたかった。
「…四季ちゃんに会いたい」
げっそりと青白い顔をした花魁坂を一瞥しながら無陀野は内心で頷いた。
無陀野だって、それこそ淀川も並木度も四季に会いたいのだ。
その顔を見て触れて。体温を感じる。それだけで普段の自分が戻ってくる気がしている。
「ダノッチも会いたいでしょ〜」
「あぁ…そうだな」
「!だよね!!あぁ〜もう早く明日にならないかな〜」
待ち遠しい明日を待つ花魁坂。そんな空気を裂くように無陀野のスマホは着信で震えた。
表示されていたのは、校長だった。
「無陀野くん!?」
「なんですか、そんな急いで」
「一ノ瀬君が___。」
「−–は?」
持っていたスマホが手から滑り落ちて床に落ちた。未だスピーカーからは好調の声が聞こえてくる。けれども無陀野の耳には一切届いていない。
「ダノッチ?」
どうしたの?花魁坂が紡ぐ前に無陀野は、花魁坂近付き校長から聞いたことをそのまま言った。
「…四季が、いない」
「自分で抜け出した様子も…ない」
「た、ぶん桃に…」
吸った息も吐いた息も感じられない、視界は歪んで自分が立っているのかもわからなくなった。
呆然。
言えるのはそれだけだった。
「俺は先に羅刹に向かう」
「ダノッチ!!」
「俺も行くから!!」
既に先に行っている無陀野を追いかけて花魁坂も羅刹へと足を向けた。
「四季ッ!!」
僅かな願いを込めて四季ちゃんの部屋に入ったけどそこはもぬけの空で、四季ちゃんが座ってた椅子は壊れていて、アルバムは散乱して、写真が風によって舞っていた。
「一ノ瀬くんは、桃に連れ去られた」
「校長…あなたは何してたんですか…四季が連れ去られている時に…」
無陀野は傘の柄が壊れてしまうほどに握り締めた。それこそ反動で床が僅かに沈んでしまうほどに…
なんか長くなっちゃいそうなんで一旦切ります!!
遅くなってしまってすみません…
コメント
33件
続き投稿してくださりありがとうございます(^^)/ 不穏は大好物です… これ唾切が生きてたら四季操られるんじゃね?という妄想に浸っていました(*'ω'*) 続きが待ち遠しいです😌
ぬぁ!? 四季ちゃん(ó﹏ò。)無事でいて!! …( '-' )スゥゥゥゥ⤴四季ちゃんに触れた…桃誰だ? 今回もめっちゃ面白かったです!!