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こへ長短編
悔しくて泣く中在家さん。
⚠
・こへ長です!
・原作のキャラとは一切関係ありません。
・お名前と原作やアニメ、ミュすべてをごった煮したキャラ解釈をお借りしております。
・解釈違いや喋り方違い等あると思いますが目を瞑って頂けると嬉しいです。
・長が女々しい、本当に。
誤字などが何かありましたらコメントまでお願いします💦
お話上、六年生と書いてますが強くなりたいから泣いてますし特に指定は無いので四年生くらいを想像していただいても大丈夫です
夕方の忍術学園は昼間の喧騒が引いたあと独特の静けさがある。
風に揺れる木々の音と遠くで鳴く鳥の声だけ。
いつもの鍛錬を終えた七松小平太は忘れ物を思い出して一人、校舎の裏へ回った。
人通りの少ない場所。だからこそ——
「……っ」
かすかな喉が詰まるような音が聞こえた。
小平太は足を止める。
聞き間違いじゃない。
物陰から、背を向けて座り込む人影が見えた。
「……長次?」
名前を呼んだ瞬間その背中がびくりと揺れた。
同室の中在家長次だった。
いつもならすぐに振り返るはずなのに今日は動かない。
小平太は嫌な予感を覚え、ゆっくりと近づいた。
肩が、小さく震えている。
「……長次?」
もう一度、今度は少し低い声で。
長次はようやく顔を上げた。
その横顔を見た瞬間、小平太の胸が強く締めつけられる。
目が赤い。
頬にはっきりと涙の跡。
「……見るな」
絞り出すような声だった。
小平太は一瞬言葉を失った。
六年生になってこんな風に泣いている長次を見るなんて思ってもみなかった。
「……泣いてたのか」
「……たまたまだ」
苦し紛れの言い訳。
でも涙はまだ止まっていない。
小平太は何も言わず、長次の前に腰を下ろした。
視線の高さを合わせる。
「何があった」
「……言う必要はない」
長次は顔を背けようとする。
その瞬間、小平太の手がそっと長次の腕を掴んだ。
「ある」
強くはない。でも、離さない力。
「私がここに来た以上、ある」
長次の喉が、小さく鳴った。
しばらく沈黙してから、ぽつりと零す。
「……自分が嫌になった」
その言葉に小平太の目がわずかに見開かれる。
「うまくできない。足を引っ張る。……六年なのに、もっと強くなりたいのに……一年生の頃と変わらず弱くて」
声が、震える。
「小平太は、皆はもっと前に進んでいるのに、私は——」
言葉が続かず、長次は唇を噛みしめた。
その目からまた涙が落ちる。
小平太は、反射的に長次の肩を引き寄せた。
「……っ」
驚いた声が上がる間もなく長次の額が小平太の胸に触れる。
強くなりたい、そう言って涙する長次に一年生の頃の姿が重なった
「何を言っている」
低く、はっきりした声。
「私がいるだろ」
長次の身体がぴたりと止まった。
「長次がどれだけやってるか、どれだけ努力しているかこの私が知らないと思うか?」
返事はない。
でも長次の腕を掴む小平太の力が、小平太の服を掴む長次の力がぎゅっと強くなる。
「泣くほど考えて、悩んで、それでも前に立ってるやつを——」
小平太は少し間を置いて続けた。
「弱いなんて、私は言わない」
長次の肩が、大きく揺れた。
「……っ、こへい……た……」
声が崩れる。
小平太は何も言わず、ただその背中に手を回す。
逃がさないように、でも強すぎないように。
「ここで泣け」
短い言葉。
「私がいる」
長次はしばらく耐えるように黙っていたが、やがて力が抜けたように小平太に寄りかかる。
「……小平太は優しいな……」
「なにを今さら」
小平太は小さく笑ったかと思うとじっと長次を見つめて長次の頬にそっと優しく手を当てた
「……泣いてる長次も、私の長次だ」
その言葉に、長次は何も返せなかった。
ただ、しばらくの間、声を殺して泣き続けた。
夕暮れの影が、二人を包む。
辺りがもう暗くなる頃長次の嗚咽が、少しずつ小さくなっていった。
完全に泣き止むまで小平太は何も言わなかった。
背中に回した手も、離さない。
やがて、長次が小さく息を吸う。
「……もう、いい」
声はまだ掠れている。
「いいって顔じゃない」
即座に返ってくる。
小平太は身体を少しだけ離し長次の顔を覗き込んだ。
涙は止まっているが目は赤く、睫毛が濡れたままだ。
涙で濡れた瞳が、睫毛が、きらりと輝いて綺麗だと不謹慎ながらどこか思った。
「……見すぎだ」
「今更だろ」
長次は視線を落とす。
「六年にもなって人前で泣くなんて……」
「人前じゃない」
ぴたり、と遮られる。
「私の前だけだ」
長次の指先が、わずかに動いた。
「……同じだ」
「違う」
小平太ははっきり言い切る。
「長次が弱いところ見せていいのは私の前だけでいい」
一瞬、長次の呼吸が止まる。
「……それは……独占欲が過ぎる」
「今更だな」
小平太は少しだけ口角を上げた。
「嫌か?」
短い問い。
長次はしばらく黙っていた。
それから小さく首を振る。
「……嫌ではない」
小平太の目がわずかに和らぐ。
「ならいい」
そう言ってまた長次を引き寄せた。
今度はさっきよりも遠慮なく強めに。
「……」
長次は抵抗しなかった。
むしろ、額を小平太の肩に預ける。
「……泣いたこと、忘れろ」
「無理」
「忘れろ」
「覚えてる」
即答。
「今まで長次がどこでどんな顔でどうして泣いたか。ぜーんぶ」
長次は小さくため息をついた。
「……本当に、性質が悪い」
「うん、知ってる」
小平太は低く笑って長次の髪に指を通す。
撫でるというより、私のものだと一つ一つ確かめるような動き。
「でもな」
声が少し真面目になる。
「泣くくらいなら、私に言え」
長次の肩が、わずかに強張る。
「言えないこともある」
「あるだろうな」
否定しない。
「それでも限界の前に私のところに来い」
間を置いて、付け加える。
「泣く前でも泣いた後でもいい。真っ先に私を頼ってくれ」
長次はしばらく黙っていたが、やがて小さく言った。
「……努力する」
「約束な」
「……あぁ、約束だ」
その声はもう震えていなかった。
柔らかな風が二人の間を静かに通り抜ける。
長次はようやくしっかりと顔を上げ小平太を見た。
二人はしばらく、そのまま並んで座っていた。
夕暮れはすっかり夜に変わり、学園に灯りが入り始める。
2人のその距離は、きっとこの学園の中で1番近かった。
翌朝の忍術学園。
忍術学園はいつも通りのざわめきに包まれていた。
……はずだった。
「……なあ」
「何だ」
小平太が机に肘をついて声を落とす。
「長次。近いぞ。」
本当に近かった。
肩が完全に触れているどころか、長次の袖が小平太の腕にかかっている。
「そうか?」
真顔で返ってくる。
「そうだ。いつもよりだ」
「……誤差だろう」
誤差ではない。
しかも長次は、小平太が少し動くと自然に距離を詰め直す。
まるで無意識に。
まるでカルガモの子だ、とどこか頭の片隅で考えた。
周囲の視線がじわじわ集まっているのを小平太は感じていた。
「……昨日のこと、覚えてるか」
ぼそっと聞く。
長次の手が、一瞬止まった。
「……覚えている」
低い声。
「全部か?」
「……全部だ。涙も胸の内もすべてさらけ出してしまった」
小さく、しかしはっきり。
小平太は少しだけ息を吐いた。
「それで距離近いのか?なんだ、私が言いふらさないか心配か?」
長次はしばらく黙ってから、小さく言う。
「違う…………昨日、離れるのが……少し、怖かった」
思った以上に正直な言葉に、予想外の言葉に小平太が固まる。
何とも素直で可愛い言葉で胸が熱い
「……今も?」
「……少し」
視線は前のまま。
でも、袖を掴む指がわずかに強くなる。
滅多に見ることの無い長次の甘え。
小平太は一瞬言葉を失い、それから小さく笑った。
「……仕方ないなぁ」
そのまま、自分の身体を少し長次側に寄せる。
完全に肩が触れ合う距離。
「これでいいか」
長次が、ほんの少しだけ息を吐いた。
なんとも満足気だ。
「……ああ」
その瞬間、背後から声が飛ぶ。
「お前ら、朝から何してんだ?」
たまたま通り掛かった文次郎が呆れたように言う。
後ろには同じように呆れた顔の仙蔵もいた。
小平太は即答した。
「通常運転だ」
「絶対違うだろ」
ざわっと笑いが起きる。
長次は少しだけ耳を赤くしたが離れなかった。
鍛錬中も、授業中も、移動中も、昼の食堂でも。
妙に近い。
廊下で他の六年生に声をかけられたときも、長次は自然に小平太の袖を掴んだまま。
「……長次」
「何だ」
「これ、いつまで続くんだ」
長次は少し考えるように目を伏せて、それから言った。
「……落ち着くまで」
「いつ落ち着く」
「……分からない」
正直すぎる答え。
小平太は一瞬天井を仰いで、それから小さく笑った。
「……じゃあ、好きなだけ近くいろ」
その言葉に、長次の指がぴくりと動く。
「……いいのか」
「嫌ならすぐに言っている」
少し間を置いて、低く付け足す。
「それに、むしろ私の方が安心するのだ」
長次は何も言わなかった。
ただ、ほんの少しだけ肩の力を抜いて小平太に体重を預ける。
周囲はまだざわざわしている。
でも二人の距離は、ずっと自然だった。
同級生の誰かが小声で言った。
「……あいつら、今日やけに近くないか?」
別の声が返す。
「元々近いだろ」
当の本人たちは、気づいていないふりをしたまま。
コメント
1件
桃瀬さん、第3話「涙」、読み終えました…。 小平太が長次の涙のわけを聞く前に「ある」と言って寄り添うところ、すごく好きです。普段は強い長次が「自分が嫌になった」って声を震わせるシーン、胸にきました。最後の「昨日、離れるのが少し怖かった」という長次の言葉に、二人の距離がぎゅっと縮まったのが伝わってきて、とても温かい気持ちになりました。続きも楽しみにしています🌷