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スタジオに響く音楽と、重たい足音。
曽野「もう一回いくよ!」
曽野の声に、佐野は「うん」と短く返した。
でもその声は、いつもより少しだけ弱い。
佐野(やば…ちょっと、クラクラする…)
ここ最近ずっと忙しかった。
撮影、収録、移動。まともに休めていない。
それでも、ダンスだけは手を抜きたくなかった。
「せーの!」
音に合わせて体を動かす。
一歩、二歩、ターン――
視界がぐらりと揺れた。
佐野「……っ」
足がもつれる。
「佐野!?」
次の瞬間、床に崩れ落ちた。
佐野「……ん……」
ゆっくりと目を開けると、見知らぬ天井。
佐野「……ここ、どこ……」
頭がぼーっとして、体が重い。熱っぽい。
ガチャ、とドアが開く音。
曽野「起きた?」
聞き慣れた声に、視線を向ける。
佐野「……曽野……?」
曽野「よかった、マジで心配したんだから」
曽野が近づいてきて、ベッドの横に腰を下ろす。
佐野「ここ……曽野の家……?」
曽野「そう。スタジオで倒れたの覚えてる?」
佐野「……ちょっとだけ……」
佐野はゆっくり起き上がろうとするが、
曽野「無理すんなって」
曽野に肩を押されて、そのままベッドに戻された。
曽野「ほら、まだ熱あるし」
額に触れる手が、ひんやりして気持ちいい。
佐野「……ん……」
曽野「ほら、やっぱり熱い」
佐野「ごめん……迷惑かけて……」
曽野「は?何言ってんの」
少し強めの声。
曽野「迷惑とか思うわけないじゃん」
佐野「でも……」
曽野「むしろ頼れよ、こういうときくらい」
曽野は少し呆れたように笑った。
曽野「いつも頑張りすぎなんだよ、佐野は」
佐野「……」
その言葉に、胸がじんわりする。
曽野「水飲む?」
曽野「……うん……」
体を起こそうとするけど、力が入らない。
それを見た曽野が、
曽野「はいはい、動かなくていい」
そう言って、コップを持ってきてくれる。
曽野「ほら、口開けて」
佐野「え、いや、自分で…」
曽野「いいから」
少し強引にコップを近づけられる。
佐野「……ありがと……」
ゆっくり水を飲む。
曽野「全部飲め」
佐野「ちょっとでいいって…」
曽野「ダメ。脱水なる」
佐野「……はい……」
言われるがまま飲み干す。
コップを置いた曽野が、ふっと優しく笑う。
曽野「素直じゃん」
佐野「……今だけ……」
曽野「知ってる」
そのまま、曽野の手がまた額に触れる。
曽野「さっきよりちょっとマシかな」
佐野「……ねぇ、曽野……」
曽野「ん?」
佐野「ちょっと……そばいて……」
自分でも驚くくらい、弱い声だった。
曽野が一瞬だけ目を見開く。
曽野「……珍しいこと言うじゃん」
佐野「今だけだから……」
曽野「はいはい」
ベッドの横に座り直して、
曽野「どこも行かないよ」
そう言って、佐野の手を軽く握った。
佐野「……あったかい……」
曽野「お前なぁ、熱あるのに何言ってんの」
佐野「でも……落ち着く……」
目がゆっくり閉じていく。
佐野「……曽野……」
曽野「ん?」
佐野「ありがと……」
曽野「いいから寝ろ」
少し照れたような声。
曽野「起きたらちゃんと元気になってろよ」
佐野「……うん……」
そのまま、佐野は安心したように眠りに落ちた。
曽野はしばらく手を握ったまま、小さくつぶやく。
曽野「ほんと、無理しすぎなんだよ」
そして、そっと前髪を撫でた。
曽野「ちゃんと、頼れっての」
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