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しめさば
於田縫紀
#主人公最強
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的当てのあとは、輪投げをするリリーを眺めて癒される。
その間に、エミリアさんは新しい串焼きを買ってきた。
それと張り合うかのように、グリゼルダもお酒をいくつか買ってきたようだ。
「ささ、みんなで食べましょー」
「あ、もらっても良いんですか?」
「全員分買ってきましたから! ここはわたしの奢りですよーっ」
「エミリアには負けんぞ。ほれ、酒は妾の奢りじゃ!」
「おぉー、大盤振る舞いですね!
お酒は……強いやつ?」
「度数はあまり高くないぞ?
いつぞや乱闘騒ぎがあったそうでの、あまり強い酒は置いていないそうじゃ」
……そういえばポエールさんも、乱闘騒ぎがあったって言っていたっけ。
量も控えて度数も控えたとなれば、問題が起こる可能性も低そうだ。
「それじゃ、お酒ももらっちゃおうかな。
やー、お酒と串焼きって、飲んだくれな感じがしていて良いですね!」
もしかしたら違うかもしれないけど、背徳感……っていうのかな?
いやいや、仕事をしっかりしたあとだし、そんなものに|苛《さいな》まれる必要は無いよね!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「ママー、楽しかったの!」
「良かったねー。それにしても、また1等賞を取ったんだね」
「うん! ママ、使う?」
輪投げを終えて戻ってきたリリーは、見覚えのある瓶を差し出してきた。
ここでも1等賞の賞品は、私の作ったアイテムらしい……。
「う、うーん……。
また2等賞の賞品に変えてもらう?」
「ウサギさんがいれば大丈夫なの!」
「そう? それじゃ、その薬はもらっておこうかな」
「はい、どうぞなの!」
受け取りながら鑑定をしてみると、それは私の作った『精力剤』だった。
ポエールさんから『もしできれば……』ということでいくつか作ったものだったけど、何でこういうのを子供コーナーの賞品にするかなぁ……。
……まぁ確かに、ここでも大人の殿方たちが頑張っていたみたいだけど。
「――おい、そろそろ始まるみたいだぞ」
「おお! 今日のメインイベントか!」
「それ、乗り遅れるな!」
私たちが買い食いをしながらぶらぶら歩いていると、そんなことを言う人たちがいた。
その人たちは大ステージの方へと小走りで移動していく。
「……何か始まるんですかね? 私たちも行ってみます?」
「そうじゃのう。何もなくても、近くで踊りを見るのも良かろうて」
「音楽も迫力があるでしょうしね。それじゃ、行ってみましょう」
すぐに何があるわけでも無いだろうし、私たちはのんびりと歩いていくことにした。
さすがに9人もぞろぞろと移動するのは歩きにくいけど、逆に言えばそれだけたくさんの人が集まっているということだ。
それにしても、こんな辺境のこんな場所に、300人以上がいる――
……私が声を上げて街を作ろうとしなければ、こんなにもたくさんの人は集まらなかった。
何だかそれが、とっても不思議っていうか、とっても嬉しいっていうか、そんな感じかな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「――それでは今日のイベントの発起人、アイナさんからのご挨拶です!!」
ポエールさんの声に、会場全体から歓声が上がった。
……あれぇ?
大ステージの側に行ったとき、ポエールさんからそろそろビンゴを始めると伝えられていた。
しばらく話している間に準備が進み、あれよあれよと何故か私が挨拶をする羽目になってしまったのだ。
私もお酒を飲んで気持ちが大らかになっていたのか、普通に挨拶を引き受けてしまったんだけど――
……改めてステージに上がると、凄いね。
みんながみんな、こっちを見ているんだから。
「アイナさん、このままお話頂ければ大丈夫です。
音を拾われたくないときは、口に手を当ててお話しください」
後ろに控えている、大人しそうな女性がこそっと話し掛けてきた。
お祭りの最初に見た、ポエールさんの後ろで拡声魔法を使っていた女性だ。
「はい、分かりました」
……と返事をすると、その声は普通に拾われて、大きな声で辺りに響き渡ってしまった。
「うぇっ!?」
……という声も拾われてしまった。
「お、落ち着いてください……」
うわー、これは恥ずかしいーっ!!
とりあえず私は口に手を当てることにした。
目を閉じて、何回か深呼吸をしてみる。
ステージの下からは観衆たちの応援の声が聞こえてきた。
……くっ、これは公開処刑かな……!?
「えぇっと、改めまして。神器の魔女、アイナ・バートランド・クリスティアです。
今日はこんなに集まって頂きまして、ありがとうございます」
「「「「「アイナさーんっ!!」」」」」
私が挨拶を始めると、どこからともなく名前のコールが上がった。
む、これは少し気持ちが良い……のは置いておいて。
「今日はこれから、私の故郷のゲームで楽しんで頂こうと思います。
ポエール商会の人が紙を配っていますので、1人1枚ずつ、もらってください」
……あ。口が滑って、ついつい進行的な話までしちゃったけど――
ステージの端に立つポエールさんを見てみれば、身振りで『そのままそのままー』と言っているのが伝わってくる。
まぁせっかくだし、それならキリの良いところまで進めてしまおう。
「この紙、1人で2枚以上持つと不正とみなします。
超豪華な賞品がもらえなくなっちゃいますので、十分に気を付けてくださいね。
タレコミも大歓迎です。不正してる人を見掛けたら、教えてください」
「「「「「りょうかーい!!」」」」」
またもやどこかから返事が返ってくる。
レスポンスがあるというのは、話をしていて安心感をもらえるというものだ。
「――で、ですね。
配られた紙には縦5マス、横5マスが描かれていて、それぞれに数字が振ってあります。
これからポエールさんが数字をランダムで抽選していくので、その数字があったら穴を空けていってください」
「「「「「ふむふむ……」」」」」」
「で、縦か横、もしくは斜めに5マス。これが揃ったら大声で『ビンゴ!』と叫んでください。
ステージ上に招待しますので、そしたらこの箱からくじを引いてもらいます。
そこに書かれているものを賞品としてゲット! ……という流れになります!!」
「「「「「おぉーっ!!」」」」」」
「ちなみにこれ――ビンゴの紙ですが、ポエール商会からお土産として販売する予定です。
興味があったら買って頂いて、地元に持ち帰って遊んでみてください」
「「「「「賞品ってどんなのがあるのー!?」」」」」
……そろそろ慣れてきたのか、レスポンスの台詞もある程度の長さを持ってきた。
もしかしたらノリの良い人たちが、集団で返してくれているだけかもしれないけど。
「えーっと、詳しくは秘密です!
……が、みなさんお待ちかね、銘酒『竜の秘宝』は当然入っていますよ!!」
「「「「「「「「「「やったああああああ!!」」」」」」」」」」
――その声と同時に、会場全体が沸いた。
やっぱりあのお酒、破壊力というか、求心力が半端ない。
グリゼルダの方をちらっと見てみると、誇らし気に口元が緩んでいるようだった。
「あとは新作の甘いものが入ってます!
私も食べてみましたが、『竜の秘宝』の甘味版という感じで……。まぁ、当たったら食べてみてください」
「「「「「おぉーっ!!」」」」」」
「私の作ったものでいうと、あとは王都で王族に大人気だった美容品。
女性が当たったら使って頂いて、男性が当たったらプレゼントにしてみてください。
また、一部で根強い人気を誇る育毛剤も入れておきました。
的当ての賞品にも入っていましたが、こちらの方が効果があるので期待してください!」
「「「うぉおおぉぉぉぉぉおおおぉおおお──────!!!!!!!」」」
……人数は少ないけど、しかし声が大きい。
育毛剤を求める人とその力強さは、つまりはそういうことなのだろう。
「それ以外には私の仲間たちがいろいろとやってくれることになっています。
そちらは当たってからのお楽しみということで……。あ、私も当てたいのがあるんですよ。参加しても大丈夫ですか?」
「おっけーです!!」
私の言葉に、ステージの端からポエールさんが大声で返事をしてくれた。
それを受けて、会場からも笑いが飛び出す。
……よしよし、掴みは良さそうかな。
さぁ、これからがビンゴ本番! 私ももちろん、参加しちゃうぞー!!
「それではビンゴ大会、はっじめまーすっ!!!!」