俺たちは今年、高校生になった。
「そらー!行くぞ」家の前で毎日のように叫ぶのは、幼馴染の廉だ。保育園から今までほぼ毎日一緒だ。「ごめんごめん、よし行こう(๑•̀ㅂ•́)و✧」「ん」廉は、スマホの画面を暗くして、自転車に乗り直す。学校では、お昼も移動教室も一緒。新しく出来たクラスメイトも、距離が近いと最初は戸惑っていたけど今ではこれが普通だ 。男子とも女子とも普通に話す。
「廉、俺ちょっと職員室行ってくるわ」そんなある日、空が昼に職員室に行った。別に珍しいことじゃない。優等生の空はよく、先生に質問をしに行く。 いつもなら授業の15分前には帰ってきて、俺や友達と話しているのに、今日は授業開始のギリギリに帰ってきた。こんなに遅くなるなんておかしい。なにかあるんだ。と思った俺は聞いてしまった。しかし、空はいつもと変わらないよと言うように、長かっただけと言った。 しかし、次の日。その真相が明らかになった。 朝、いつも通り空と登校して廊下を歩いていると、隣のクラスの女子が廊下で話をしている。それがなにかという訳では無いが、空は急に早歩きになって教室に入っていった。俺は荷物を置いて空の席に行く。
「なあ、さっきどうしたんだよ。」
「ああ、廉、ちょっと時間ある?」
「え、うん。あるけど?」
「ちょっときて…」そういうと俺を置いて行くように、サッと教室を後にした。 朝は誰もいない図書室に入る。一呼吸置いて、空が言う。
「あのさ、昨日のうちに言うべきだったんだと思うけどさ….俺、彼女できた。」
「………..え?…まじ?」びっくりして最初声が出なかった。
「好きな人いたんだ…」なんか、なんか。なんか、なんか….なんだろうσ( ̄^ ̄)?いいことなはずなのに、おめでとうって言えない自分がいる 「うん…好きっていうか、気になってて。相手から告白されたんだけど、付き合いうってことになった。」
「そ、そっか!良かったじゃん。」やっぱりおめでとうと言えない。
「だから今日から、帰りだけでいいから、か、彼女と///一緒に帰ってもいいかな?」
「いや、許可とかいらないよ。昔から一緒だけど、彼女できたからって一緒に帰るななんて言わないよ。」こんなこと言いたくない。
「彼女との時間を大事にしなって」違うこんなこと言いたいんじゃない。
「ほんと!?ありがとう。大事にする。」 嬉しいそうにして、なんなんだよ。 その日の帰りから空は、俺に「じゃあね」ってだけ行って彼女を教室まで迎えにいく。 かれこれ、2ヶ月ちょっと。空は毎日彼女と一緒に帰っている。休日もたまに遊んだりしているらしい。俺が彼女いないからなのか、惚気話を聞くのが好きじゃないのを知っているからのか、俺の前ではあまり彼女の話をしない。どんな反応すればいいか分からないから、正直ありがたい。
風がどんよりしている。 最近、空の表情が変だ。朝から、もう少しでため息を着くんじゃないかという顔をしている。 なんかあったか?と聞いても、何も無いよ。と笑顔で返してくる。だが、俺は知っている。何年一緒にいると思っているんだ。幼馴染だぞ。空は、本当に嘘を着く時は、無理に笑う。苦しいって相手に分からせないように、無理に笑う。俺にはそんな嘘バレバレだ。
空が、彼女と付き合うようになって俺は気がついた。俺は、空が好き。男が好きなんじゃない、空だから好きなんだ。今までそばにいるのが当たり前でそんなこと思わなかったけど、離れて気づいた。空が好きなんだ。自分からそう言えたらいいのに。人の恋人を横取りするようなことはできない。
空の表情は、あまり良くならない。何かを毎日考え込んでいるようだ。
ある日の放課後。
「廉、今日一緒に帰ろう。」俺は、咄嗟に聞いた。
「彼女はいいのか?」
「うん、その事でちょっと話したいんだけど。今日家行ってもいい?」
「いいけど、お前大丈夫か?」
「うん…」
俺はこの後、彼女には申し訳ないがある報告を受けた。
「どうぞ。」家に来るのは久しぶりだ。
「お邪魔します。ありがとう」
「お!廉じゃん。久しぶり✋」姉貴がちょうどよく部屋から出てきて言った。
「久しぶり。」空にも俺の姉と同い年の姉がいる。2人もすごく仲がいい。
「何かいる?」
「ううん、何もいらない。」
「そっか。で、どしたの?」いたって自然に聞いた。
「あ、うん。あのさ、別れたんだ…俺、彼女と。」だから最近、表情が下がっていたんだ。 「そっか…」なんて言えばいいのか、そっかから少し沈黙が続いた。すると、空が言った
「原因とか、聞かないの?」
「聞いていいの?」聞いて良いのかずっと迷っていた。どうして別れたの?と聞くと、長くなると前置きをしてから話し始めた。
「付き合って、ガチで好きだなって思った時もあった。だけど、なんか違くて。最初は今までの生活が変わって戸惑ってるだけだと思ってた。だけど、、、ずっとそれが抜けなくて。彼女と、ハグとかキスとかしてもなんか違くて。高校生だし、そういうこともあるよなって思うけど、なんか違くて、嫌?みたいで。」俺はうんうんと頷きながら聞くことしか出来なかった。そして、
「俺、廉が好きだ。////」空は泣きながら俺に言った。
「こんなこと言われたら困るってわかってる。関わりたくないと思うかもしれない。それでもいい。俺の気持ちはこうだから」ぎゅ。俺は言い終わる前に、空を抱きしめていた。自分でもなんでか分からないけど、気がついたら抱きしめていた。 でも、やっぱり素直になれない俺はここで好きと言えなかった。
「大丈夫だ、落ち着け。」
「うん…」
それにはっきりと気づいたのは、彼女とそういう空気になった時らしい。 空の家に彼女が遊びに来ている時。 今まで手を繋いだり、キスはしていたけど、それ以上はしていなかった。そして、その日あるなと思っていた。彼女が近ずいて来た時、空の中で何かが動いて彼女に触れられなくなった。そのまま家を飛び出した。彼女は、気を遣って静かに家を出て帰った。
「あの時、頭によぎったのは廉だった。思えば、彼女といる時でも、付き合ってから彼女の立場を廉に変えて考えてしまう。ずっと心のどこかに廉は、廉が、廉なら、って思ってる自分がいた。だから、俺は、『廉じゃないとダメみたいだ』関わりたくないって言われても構わない。」そんなことを言われたのは初めてだった。俺も『空じゃないとダメだ』って言えたらいいのに…
「そっか…ビビった。でも、別に関わりたくないなんて思わねえよ。」俺も好きだし。
どうやって言えばいんだろ。 ずっと悩んでいる。思いは固まっているのに、好きなのに、いざ空を前にすると言えなくなる。覚悟を決めた。明日中には絶対に言う。
空は苦しいながら、どうなるか分からないリスクを抱えてまで俺に気持ちを伝えてくれた。俺だって、思いは同じなのに。 言うタイミングはいつだ?朝イチか?いや昼休みのゆっくりしている時か?でも、帰りの2人の時か?とか考えているうちに、もう家に着くところだ。 ぎゅっ 俺は空の制服の袖を掴んだ。
「どした?」自分でも気づかなうちに動いていて、咄嗟の行動だった。
「ごめん、今から時間ある?」2人になれる場所。落ち着ける場所が良かった。
「あそこいく?」俺たちのあそこは1つ。小さいことから遊んでいて、今でも何かあったらよく来る近所の公園。大きな木の下の2人がけのベンチだ。
「ご、ごめんな。急に。」
「大丈夫だ。///」空も何を言われるかをだいたい分かっているようだ。
「あのさ、この間のは驚いたけど…うん…あの..(言え!言え!)俺も好き///!」
「ま、まじ!?」分かっていても、改めて言われ、驚いている空。
「う、うん….」
「そ、そっか。」空は戸惑いながらも落ち着いた様子だった。
「あのさ、改めて言うのもめっちゃ恥ずいんだけどさ、」一呼吸置いて空は俺に言った。
「俺も廉が好き。俺と付き合ってください。」 そういった空は、右手を前に出し深く頭を下げた。答えは決まっている。
「よろしくお願いします。」俺は、空の右手を自分の右手で握り返した。そのまま、少しの沈黙の間、その手が離れることはなかった。この手いつまで握ってるの?という空気になったあとゆっくりと手が離れた。 ぎこちない告白と、ぎこちない返答の末、俺たちは恋人となった。 今は7月下旬、これから夏休みが始まる。恋人のいる初めての夏休み。どうなるのかな。
優等生の空は、夏休みも毎日勉強をしているようだ。ただ1つ、予定が決まっている。初めてだけど、デート…だ。2人でどこ行くか話し合って、慣れないところに行くのではなく、行きなれたところでゆっくり楽しもうという結論に至った。
カチカチ 一刻一刻と時間が迫ると同時に、廉の鼓動も早くなる。空の家の前で待っている廉。 今日は付き合って初めての、デートの日。 場所は、家の近くのデパート。2人とも家の用事や友達ともよく行く場所だ。 ガチャ
「お、おう…おはよう。」緊張してなんて言えばいいか分からなかった。
「お、おはよう。」空も緊張しているようだ。
「遅くなってごめんな。」
「ううん、大丈夫。行こっか。」 いつもだったら、どうでもいい話がいくらでも出てくるのに、今日は何を話せばいいのか分からなかった。先に話し出したのは空だった。
「そういえば、2人だけで来るのって初めてじゃない?」これまで友達と何人かで来たことはあったけど、2人だけでというのは初めてだ。
「確かにそうだね。」
「なんか嬉しい////と思ってる。」
「う、うん///そうだな。」こんな会話が恋人らしくて嬉しかった。 デパートで服を見たり、ゲーセンに行ったりした。そして、お昼ご飯を食べる。
「席、どうする?」と聞くと、あまり人がいない所がいいと空は言った。人目に付くのが嫌なのだろうか。 食べ終わった頃、突然聞かれた。
「廉は、俺のどこが好きなの?」これが聞きたくて、人目に付かない席を選んだのだとわかった。 「俺は、みんなに優しくて、俺の事を色々考えてくれるところとか、なんて言うか、ずっと一緒で気づいたら好きって言うか、離れたくないって感じで…ってめちゃめちゃ恥ずいんだけど///////」 「ハハッ、ありがとう。」
「そういう空はどうなの?////」
「俺は、廉の可愛いところとか、友達思いのところとか、色々考えすぎちゃうところとか….〜とか」
「あ、あ、あ、ありがとう/////大丈夫、伝わった////」
「そう?まだまだあるけど」(このまま続けられたら、恥ずかしくて爆発するって)
「そろそろ帰らないといけないな」
「そうだね」 帰りも行きと同じ距離なはずなのに、もう家がすぐそこに感じる。まだ、一緒に居たいのに。俺は心の声が漏れてしまっていたようだ。
「あのさ、、」
「ん?どうしたの?」空が何かを言いたそうにしている。
「もうすぐ家だけど…../////手////繋いでもいい?」((>_<)キューン。イケメンのくせに照れながらそんなこと言ってーーー////)
「う、うん////いいよ。」言い終わってほんの少ししてから、空は俺の手を優しく握ってきた。俺はその手を握り返す。2人の頬が赤かったのは、きっと夕日に照らせれていたからなのだろう。
もう少しで辺りが暗くなる頃、2人は家の前まで歩いてきていた。
「結構暗くなったな。今日はありがとう。」 「うん…ありがとう…」
「空?どうした?」
「今日すっごい楽しかった。廉と2人で遊びに行けて良かったし、初めて手繋げて嬉しかった。」空は勢いでそう言った。
「で…でさ….帰る前に一瞬でいいから…ギュッテサセテ…/////」ダメなんて答えは俺の中には無い。 「いいよ////」空はゆっくりと、俺を抱きしめた。本当に一瞬だった。でも、すごく嬉しかった。 2人だけで遊びに行って、初めて手を繋いで、ハグをして、恋人になったんだなと改めて実感する。これからの高校生活が楽しみだ。 付き合ったからと言って日常は変わらない。 来週には、入学して初めの行事。体育祭がある。
空は、中学までもやっていたサッカーを続けている。廉は、写真部の幽霊部員。
「体育祭か〜。最近全然運動してないからな。体動くかな?」
「去年引退してから、俺も全然運動してないから、入部当初はキツかったw」
「廉は、何出るの?」
「俺は、早飲みかな。走るのあんまり早くないし。空は?」
「俺は、リレーと借り物〜。」
「おーすげーなー、がんばー」
「ほんとに思ってんのかよw」
体育祭当日。会場は晴れ、体育祭日和。
『これより第25回、体育祭を始めます。』 午前中は白熱した戦いが続いた。どのクラスが1位になってもおかしくない勝負だ。午後の競技にかかっている。
『続いての競技は借り物競走です。選手は集合してください。』
「よし、行ってくる!」
「行ってらっしゃい!」
「何?俺のこと借りに来てくれないかな〜なんて、思ってるの?」
「は!?/////思ってないし!!///」
「空〜行くぞ〜」友達に呼ばれた空は、じゃっとだけ言って招集場所に向かった。
『位置について、よーいドン』勢いよくスタートした。1番先に指示の紙を手に取ったには空だった。一瞬、お題をみて、少しニヤッとして猛ダッシュで走り出した。真っ先に走って来たのは、俺のところだった。 「廉!」それだけ言って、俺の手を引っ張って走った。そして、1位でゴール。
「なあ、お題なんだったんだよ」
「ああ、お題は、、」 『大切なもの』この瞬間、風が一瞬強く吹いた。俺はこいつのこういうところも好きなんだろうな。自分の中のモヤモヤした気持ちが、風によって飛んで行ったように感じた。いいじゃないか。付き合っていることを誰に知られても。男同士だからなんだ。俺は空のことが好きで、空は俺のことが好き。それを隠す必要なんてどこにもない。でも、やっぱり俺は素直じゃない。
「ってか、俺はものじゃねーからな!/////」と言うと、空はニヤリと笑った。そして、近くにあったペンで、「もの」という字に二重線を引き、「人」と大きく書いた。そして、テープを取り自分の胸に貼り付けた。聞こえないくらいの鼻歌を歌いながら空は、俺の右側に立った。「人」いう字の下には、右方向へ向かった矢印が書いてあった。
「これでいい?w」
「///////////はっっっず!!外せよ!」空の胸から紙を取り上げた。でも、俺は書き直してくれたことが嬉しかった。綺麗に折りたたんで、お守りかのようにポケットにしまった。 帰り道、空が「今日はこっちから帰る」と少し遠回りの道へ入っていった。人があまりこの道に入った時、スっと俺の右手を握ってきた。遠回りの意味がわかった。この日初めて、家まで手を繋いで帰った。
文化祭の借り物競走で、2人が付き合っていることはバレてしまった。だが、お互いの気持ちに変わりはない。遠回りをして、家まで手を繋いで帰ることができた。また、少し、恋人という時間が湧いた。 しかし、最近サッカーをのマネージャーが空に近ずいているという噂を聞いた。
「お!廉、お疲れ!空待ちか?もうすぐ来ると思うぞぉ〜」
「うん、ありがと〜」廉は、毎日教室で空を待っているから、前よりもサッカー部の人達と仲良くなった。また、文化祭を機に付き合っていることを知られてから、気まずく無くなった。みんな、否定しなかったし、変わらず接してくれる。 「あ、そういえばさ、知ってる?」
「何が?」
「最近サッカー部の中で、話題なんだけどさ、マネージャーの子いるだろう?やけに空に近ずいているよなって。」
「え、マジで?」
「まじまじ!空もさすがに気づいてはいると思うけど、どうなんだろうな。」確か、サッカー部のマネージャーは1年の隣のクラスと聞いたことがあった。空は、かっこいいし、スポーツできるし、勉強できるし、モテるに決まってる。でも、それは…嫌だ。束縛はしたくないけど、誰かに取られるのも、狙われるのも嫌だ。この噂が本当だとしたら、空は思っているのだろうか。
「どした?なんか元気ないよ?」
「いや、べ、別に?普通だけど。」
「そうか? 手、繋いでいい?」
「う、うん」俺ってそんなに顔に出やすいのかな?辺りは真っ暗で、該当もそんなに多くない帰り道。だからこそ、こうやって帰ることができる。
「どうした?なんかあったんじゃやないの?」 「……」空は、何も言わず手を繋いだまま歩くスピードを落とした。
「….最近、部活どう?」
「どう?って普通だけど?」
「サッカー部の人から聞いたんだけどさ…..マネージャーが距離近いって…..」
「そういうことね。確かに最近、近いなっては思ってる。はっきり言えば妬いてるんでしょ?」デリカシーというものは、この方には存在しないのだろうか?
「そ、そうだけど!わ、悪いかよ!俺だけだよ。こんなことで落ち込むのなんか。なんか悪かったな!」イラッとしたけれど、手を離さないのは空が好きだから。少し経ってから空が言う。
「俺も多分妬く….」え、今なんて?
「俺も多分、廉が他の奴と必要以上に近かったりしたら妬くと思う…////」照れた俺は、そっかと返すしかなかった。空もそんなこと思うのだとわかった。自分だけではないと分かって安心した。 数日後、お昼ご飯の前に廊下を歩いていると…
「私、今日告白しようと思って…」という声が聞こえて来た。その声は、隣のクラスのサッカー部のマネージャーだった。いてもたってもいられなくなった俺は、空を呼び出して2人で弁当を食べた。
「あのさ、ごめんね。呼び出して、2人でご飯とか。」
「なんでよwいいじゃん。廉と2人でお昼食べること最近なかったから嬉しいけど?どうした?なんかあったんじゃないの?おかず交換する?」
「いや、そうじゃなくて、そうじゃなくてさ、相談なんだけど…」
「うん」
「もし、今誰かに告白とかされたらどうする?」俺は聞いてもいいのか、分からない。でも、聞いてOKしないという回答をもらって安心したかったのだろう。
「え、断るけど?それ以外に答えなんてないでしょ。俺には、廉がいるんだから。」呼吸が楽になった気がした。安心したんだ。良かったと思う。
「気にすんなって。また、噂でも聞いたんでしょ?そんな簡単に気持ちは揺らがないから。」何かが引っかかった。でも、気のせいだと思うことにした。
「そうだよな。良かった…」 その日の放課後、空は本当にマネージャーに告白をされたらしい。でも、しっかりと断ったと夜にメールで教えてくれた。お昼に何かが心の中で引っかかった気がしていた。気のせいだと思うことにしたが思えなかった。空は、人気だから、モテるからこれから何度もこういうことがあるに決まっている。その度に、今日のように確認していたら、さすがに空だって俺を嫌がるのではないかと思ったのだ。そう思ってしまってから、空に対しての対応が1歩後ろに下がってしまった気がした。そこからなぜか、話しずらくなってしまい避けるようになってしまった。 何度も再確認してしまいそうな自分が嫌で、空と距離を取るようになってしまった廉。そんな2人を見て声をかけたのはある人物だった。
コンコンッ 廉は部屋のドアをノックする音が聞こえた。「はい」と返事をすると姉が入ってくる。最近、空となんかあったのかと聞かれた。焦った俺は、別に何も無いと乱暴に返してしまった。
「空の姉ちゃんもさ、空が最近落ち込んでるって言ってるけど。喧嘩でもしたの?」別にとして返せない。あまり喧嘩をしない俺たちだから、喧嘩をした今はすぐに気づかれるのだろう。すると、呆れたように姉が言う。
「何よ、喧嘩くらい。私たちなんか数えてらんないくらい喧嘩してるよwでも、早く仲直りしなよ。それがきっかけで話せなくなったら一生そのままになるよ?好きなんでしょ、空が」なぜ知っているのかは分からない。きっと女の勘とか言うのだろう。一生話せなくなるのは嫌だ。仲直り…どうすればいいのだろうか?
何も考えつかないまま、次の日の放課後になった。最近、一緒に帰っていなかったが
「今日、一緒に帰っていい?」と聞いてきた。俺はこれを逃したら一生このままなのではないかと思ってしまった。
「分かった。」とだけ返事をして。 いつもの道を歩いていると、空が人通りの少ない道に入っていった。すると、空が手を繋いで来た。そして、
「ごめん、この間の俺の言い方が悪くて怒らせたよね?ほんとごめん!」という。違うそうじゃない。謝って欲しいことなんて無い。
「違う違う、怒ってない。」
「じゃあなんで…」
「だから…」きっと素直に言っても空は嫌いにならず、受け入れてくれる。そう信じたい。
「空はこの先も、モテるからいろんな人から告白されると思う。その度に俺は、好きでいてくれるって信じてても、別の人に気持ちが向いてしまわないかって、好きなのって確認しそう。そんなんだったら、思いなって思われるんじゃないかなって、ウザイって思われるんじゃないかなって思って…」ただ思いを伝えただけなのに、俺の顔は涙でぐちゃぐちゃになっていた。空は、そんな俺を優しく抱きしめて、
「大丈夫。嫌いになったりしないし、他の人に気持ちが向くこともないよ。何回確認してきてもいいよ。何回だって、お互い好きなんだなって確かめ合おう?」こんなに優しい言葉が帰ってくると思っていなかった俺はさらに涙が溢れてくる。そうか、何回確認してもいいんだ。その度に、お互い好きだって確認し合えばいいのか。安心した。俺は、こんなに優しい空が昔から好きなんだろうな。
それから、少しずつ安心して何度も確かめることは無くなった。たまに確認しても空は優しい。俺を優しく抱きしめ、俺の好きなところを沢山教えてくれる。今までは自分からスキンシップをとる事ができなかったが、少しずつできるようになった。
これからも、俺たちに日常は続いていくのだろう…
コメント
2件