体調不良ネタ
9000文字程度
文才能力なし
「マジ…無理……」
多分俺の今日の星座占いは最下位なのだろう。何故か。無論、最悪な事しか起きてないからだ。
早朝に目を覚ますと、直ぐに体の異変に気づいた。体が重く、吐き気や頭痛も泣きそうなくらい辛い。オマケのつもりなのか喉の調子悪い方だった。体を起き上げるのも辛いほど、俺は風邪を引いていた。それだけだったらまあ人間だし仕方ないとも思う。しかし、今日は朝に幹部会議。そして、大事な商談やスクラップ案件があった。またもやいらないオマケが付いてきたのか、部下から「裏切り者が今朝逃げました…。」と最悪な連絡が来たのだ。俺はベッドに寝ながらスマホを見ていたのだが、思わず大きな溜息を吐く。溜息を吐くだけで俺は喉にピリッとした痛みが走った。今の時刻は7時30分ほど。会議は8時30分から。普通の場合、今から行ったら全然間に合う時間ではあった。しかし今日の俺は最悪なコンディション。とりあえず、布団から出ようとすると、急な頭痛に襲われ、床に転げ落ちてしまった。その反動なのか、吐き気も同様に襲ってくる。
「あ”ぅ……」
情けない声が出た。近くにあった棚に手を置こうと、震えた手を頑張って伸ばした。届いたは良いものの起き上がる気力が微塵もでない。しかし、行動しないと会議に遅れてしまうのは本当だ。俺は無理矢理力を出し、産まれたての子鹿のような脚で立った。その棚には一応何錠かの風邪薬が入っているのを思い出し、棚を開ける。あー、今日はやっぱりついてない。風邪薬を丁度切らしていたのだ。俺は本日二度目の溜息を出した。休もうかも悩んだが、俺はNo.2という称号を背負っている。そんな奴が体調不良ごときで気安く休んではならない。俺は無理矢理にでも行こうと、スーツに着替えようとする。しかし、それは叶う事がなかった。クローゼットに向かおうとするが、一歩歩くだけで辛かった。鉛のように体が重たい。俺は一応無事にクローゼットの前まで移動したものの、そこで倒れ込んでしまった。嫌いな汗が垂れてくるのがわかる。そのまま俺は瞑りたくない瞼を瞑ってしまった。
彼奴が遅い。あ、彼奴って言うのはここの梵天No.2の三途春千夜君ね?そいつはマイキーの忠犬みたいな奴で、多分だけど梵天の事で頭いっぱいだと思う。だからこそだ。今日、幹部会議があるはずなのに、いつも一着でいる三途の姿が何処を探しても見当たらない。サボりか?とは思ったけど、彼奴の場合はほぼあり得ないだろう。なら事故かな?いや、昨晩俺と三途が家に帰った後仕事の事で連絡とったわ。じゃあ何だよ。
「三途は?」
そう思っていると竜胆が俺の気持ちを運良く皆んなに三途の事を代弁して聞いてくれた。九井、鶴蝶、明司、望月共々「知らない」「誰も三途の事知らないのか?」と皆んなアイドントノー状態だった。流石に心配になったのか九井は三途に電話する。しかし、スマホからはプーップーッと不在着信の音が鳴った。
「えー、三途どうしちゃったんだろー。
蘭ちゃん心配。」
「兄貴、めっちゃ棒読みじゃん。」
俺らは勿論気が合うため、笑いながら会話をしていた。やれやれと九井と鶴蝶は俺らに呆れている。
「仕方ない、俺が見に行く。」
鶴蝶が持っていた資料を机に置き、椅子から立ち上がった。「おっけー」とも言おうと思ったが、ちょっと待てよと考え始める。三途は行方不明。んで、今から鶴蝶は三途の家に行く。ふむふむ。その役割、俺がやーろ。
「鶴蝶ー、俺らが見に行くよ。」
「いや、お前らだと心配なんだが。」
「だいじょーぶ、心配すんなって。」
グッと竜胆は親指を立て、グッドサインを出した。
「これでも俺ら大人だぜ?
その場でちゃんとした判断ぐらい余裕だからー。」
「だが…」
「鶴蝶はまだ仕事残ってんだろー?
そっち先にやれよ。」
「いや、お前らも残ってんだろ。」
「「ナンノコトデショウカ」」
「とりあえず、行ってくるね〜♡
会議の内容後でLI◯Eでおくってね」
「あ、おい!」
そう言い、俺らは足早にその場から立ち去った。まだまだ俺らは子供心を忘れていない。ならば、俺らはその子供心に従う。さぁて、遅刻者の三途君。俺らが迎えに行ってやるから星座でもして待ってろよー?
三途視点
どのくらい寝ていたのだろうか。瞼を開け、丁度近くにあった時計を見ようと目を凝らして見ると会議時間をとっくに過ぎていた。嗚呼、怒られる。まだ連絡したのなら良いのだが、眠ってしまったため連絡をするのを忘れてしまった。どうしようと思うと玄関の方からガンッッと何かを壊す音が聞こえた。敵か?と思ったが勿論動ける訳もなく、このまま死ぬ可能性が出てきた。足音が近づいてくる。一人…いや、二人か?ガチャッと此方と廊下を繋ぐ扉が開く音が聞こえた。音のする方を頑張って見るとそこには知り合いが二人いた。
「さーんず、いる〜?」
「あ、いた。」
紫髪の男達は俺の近くに来てどうしたー?と心の籠もっていない言葉をかけてきた。
竜胆視点
俺と兄貴はウキウキで三途の家に向かった。道中でいきなり古臭い不良に喧嘩売られたけど、懐かしーとか思いながら関節技決めて再び向かい始めた。
「えーっと、ここだよね。」
「コイツ、山田さんだってよ。」
三途はアパートに住んでおり、部屋番号の横には「山田」と三途とは違う苗字な書かれていた。まあ、これも一つの場所バレ防止だ。兄貴は持っていたバールで扉を無理矢理開けようとする。ガンッガンッと五月蝿い音が鳴るが三途は出てこないため、いないのかなと少々思った。
ガンッッ
「お、開いた。」
扉の鍵を壊し、開けることに成功した。扉を開き、玄関にある靴を見るとそこには三途がいつも履いている靴があり、一応いることが分かった。兄貴は土足で上がろうとしていたが、何か言われたらくっっっそ面倒くさいから俺は止めた。渋々兄貴は靴をポイっと脱ぎ、一番近くにあった部屋の扉を開ける。
「さーんず、いる〜?」
「あ、いた。」
なんと一発ビンゴ。そこには壁に寄りかかってる…いや、倒れているの方が正解か?三途は半目で俺らの方を見てきた。俺らは三途に近づき、どうしたー?と声をかける。しかし、返答はない。
「なんだ、お前。
また薬の新調でもしたの? 」
「う”ぅ〜……」
三途は唸り声しか出しておらず、立ちあがろうとしても力が入らないのか、直ぐに転び、最初と同じ状況になってしまう。俺はふと違和感に気づき、三途の額に手を置いた。
「あっっつ。
兄貴、コイツめっちゃ熱あるわ。」
「マジで〜?
ワンチャン風邪か。」
そう言い、俺らはめっちゃ優しいからとりあえずベッドに三途を運んでやった。ぐえっと情けない声を出し、そのままベッドに全ての身を委ねる三途。布団は転げ落ちた事が分かるように乱れており、俺らは布団も溜息を吐きながら直していた。
「おーい、三途くーん。
聞こえるー?」
「…あ”……ケホッ…ら”、ん…?」
「そうそう、蘭ちゃんだよー。」
「帰れ”っての…」
ガサガサな声で三途は精一杯声を出しているのが分かった。いつものような狂人はどこへやら。まるで別人のようだ。兄貴は近くにある棚を片っ端から探し、あったあったと体温計を取り出した。そして、無理矢理体温を測らせる。数秒後、ピピッと音が鳴り、取り出すと「39.1」とかなりの高熱が表示されていた。
「うわー、辛そ。」
兄貴はちょうど持っていた飲みかけのペットボトルの水を飲まそうとする。少し抵抗したものの、勿論この状況で三途は勝てず、飲まざるを得なかった。もう良いだろうと兄貴は言い、水を飲すのをやめる。三途は咳払いをし、あーと声を出す。さっきのガサガサ声よりかは良くなっていた。
「とりあえず、九井に連絡しとくわ。」
「ナイス兄貴。」
そう言い、兄貴はスマホをポケットから取り出し、九井に電話を掛けた。その間に俺は、三途が少々薄着だったためクローゼットからちょっとあったかそうな上着を取り出し、三途に着させようとする。
「三途ー、一旦上体起こせれるか?」
「……くそっ…」
俺も手伝いながら三途の上体を起こす。上着を着させようと思ったが、汗で衣類が濡れているのに気づき、俺は上着を着させる前に体を拭くことにした。しかし俺は両手塞がっており、どうしようか迷っている。
「兄貴ー?」
「ーー〜…なーにー?」
「何処のやつでも良いからさー、タオル持ってきてくんない?」
「りょーかーい……ー〜ーー」
兄貴は九井とスマホでやり取りをしながら手を動かし、タオルを探す。適当なタオルをいきなり俺に向かって投げ、俺はそのタオルをキャッチした。ガサツだなー、と思いながら三途にバンザイしてと声を掛ける。三途は嫌々俺の言う事聞いてくれた。顕になった肌は白く、筋肉もあまり付いていない。本当にNo.2か?って疑うほど。あー、やばいやばい、見過ぎだわ。俺は首を少し横に振り、三途の汗ばんだ体を拭き始める。スーツの厚さで気付かなかったが、隠されていた上半身がこんなにも薄いのかと気づくと少々心配になってくる。
体が拭き終わり、俺は三途に長袖の新しい服を着させる。次に上着。なんとこれであざとい成人男性の完成だ。ガチであざとい。ちょっとブカブカだし、萌え袖だし、風邪だし(?)。梵天の隠れ可愛い担当ってコイツだったんだ。少し俺は男である三途を可愛いと思ってしまった。
「電話終わったよー。」
「ん、ありがと。」
そう言い、兄貴は三途が寝ているベッドに腰掛ける。片方の手で三途の熱い顔を触り頬を撫でる。それに擦り寄るように三途は少々甘えた様な行動をしていた。
「はー、何コイツ。
いつもより可愛いじゃーん。」
「それな?
なんかいつもの姿何処ですか?って感じ」
「んぅ…」
「俺、風邪薬とかゼリー買ってくるよ。」
「んー。」
兄貴は風邪薬と食べられるものを買いに行った。俺と三途は取り残され、刻々と時間が経っていく。三途はいつもと違ってポヤポヤしていて、眠たそうだった。
「少し寝る?
兄貴が帰ってきたら起こすから。」
「…いい。
てか、お前ら帰って良いよ…。」
三途は力の入ってない手で俺の胸を押す。今、帰れと。答えは勿論ノーに決まっている。てか、なんでこう言う時にコイツは俺らを頼ろうとさねぇんだよ。普通に頼ってくれても構わねぇのに。
「看病してやるって言ってんだから甘えろって。」
「借りを作りたくねぇんだよ…。」
あ、そゆことね。コイツなら言うのも頷ける。しかし、俺の答えはさっきとは変わらない。俺は三途の頭を撫でると、手を払われた。痛くはないけど。
「なんかしてほしい事とかないの?」
「ないから…
もう出てけ。」
「うん、って言うと思う?
諦めろって。」
三途は俺のことを睨んできた。全く覇気が感じられず、微塵も怖いと思わない。やる事も無くなった為、ポケットからスマホを取り出し、弄り出す。帰れよ、と何か三途はほざいていたが、完全に無視した。
数分経ったけど、視線を感じる。目の前からな。いや、俺スマホいじってるだけですよ?何かしたかな、と俺は三途の方を見る。
「んだよ…。」
「いや、それはコッチの台詞なんですけど…なんかあった?」
「あ”?
なんでもねぇよ…。」
そう言って三途はやっと俺から目を離した。なんだ?と思っていたら玄関の方から音が鳴り「ただいまー」と聞き慣れた声がした。扉が開き、そこにいたのは勿論俺の兄貴だ。レジ袋を持っており、次々と風邪薬やゼリーを取り出した。
「三途くーん。
薬飲めるー?」
「…いらね。」
「ちゃんと飲まねぇと仕事できねぇそ?」
ぐっ、と眉間に皺を寄せる三途。コイツが嫌と言ったらとりあえず仕事の事とマイキーの事を言えば、心を揺るがす事ができる。三途の生きがいは多分その二つが中心だろう。それができないとなると三途は「そのためなら…」と思うはずだ。
兄貴は三途に薬とペットボトルを渡した。しかし、三途は頭痛が思っていたよりも酷いのか受け取ろうとした瞬間頭を抱えた。激痛が走ったのだろう。
「あー、飲めない?」
「くっ……」
「仕方ねぇなー。」
「は?何やってんの兄貴」
兄貴は薬とペットボトルを渡すのをやめ、逆に自分が飲み始めた。すると、三途の顔を自分の方に向かせ唇を重ねた。いや、何やってんの。状況がよくわからない。え、飲ませてんの?口移ししてるの?俺、今何見せられてんの。てか、ちょっとだけ、いや本当にちゃっただけ羨ましい。三途はヤバいほど抵抗していたが、ゴクッと口移しで貰った薬と水を飲んだ。それを確認した兄貴はぷはっと唇を離す。
「なに、してんだ!!
ゲホッ…ケホッ…!」
「いきなり大きな声出さねぇの。
お前が飲めねぇから蘭ちゃんが手伝ってあげたんだよ。」
ほんと、俺の兄貴は狂ってるわ。しみじみそう思う。
「ゼリー飲めそ?」
「今は食欲ねぇ…。」
「そ、なら、あとで食べれそうだったら食べろ。」
三途はそれに対して何も返事をしなかった。コイツ食べる気ねぇな。三途はベッドに寝転び、寝る準備をし始めた。俺が三途の額に手をやると、触るなと一言言われた。手は払われなかったけど。やっぱ熱いな。
数分後、三途は眠りについた。もうね、爆睡。子供の看病してる気分。
「あ、てかさ。
今日夕方に仕事なかったっけ?」
「え、そうだっけ。」
スマホを見て予定を確認する。今日の日付の所には仕事の予定がちゃんと入っており、俺は溜息を吐く。マジかよ。それもあのキモおじとの取引じゃん。きついって。三途の看病も(面白9割心配1割)したいが、今は気持ち良く眠ってるからそのままにした方がいい気もする。俺は嫌々三途の家を後にした。
三途視点
「ん…ぅ…」
瞼を開け、上体を起こす。いつの間にか俺はベッドの上で寝ていた。…いや、曖昧だが少しだけ覚えている。確か灰谷が来て、ここまで運んでくれた気がする。先ほどよりかは体調が良くなった。いや、ちょっとだけだけど。気持ち悪さや、頭痛はまだある。俺は先程起きた様に時計を見て、一息つく。さっきまでうるさかった奴らが居なくてホッとする。……時計のカチカチ音が脳に響く。静かな筈なのに煩く感じてしまう。俺は頭を抱えた。それと同時に何か心に穴が空いてる気分に陥った。何かが足りない。寂しい。早くいつもの様に煩く来いよ。物足りない。彼奴らの体温がほしい。今は確かに熱のせいで熱いけども、それでも彼奴らの体温を求めてしまう。
「らん…りんど…」
「春ちゃーん、ただいま〜」
玄関の方から微かに聞こえた。さっきと同じ足音が近づいてくる。蘭、竜胆。早くこっちに来て。頼むから、早く。扉が開き、蘭の姿が最初に視界に入る。
「春ちゃん、起きて…るね。
うん、全然起きてたわ。
体調だいじょbっ…⁉︎」
「ら、ん…」
俺は無意識に蘭に抱きついた。嗚呼、これだ。俺が求めていた心のピースはこれなのだ。蘭の胸板にスリスリと顔を擦り付ける。心が満たされるまで。頭は確かに痛い。しかし、今はそんなのどうだって良かった。蘭のスーツを力が弱くても精一杯握りしめる。
「ちょ、春ちゃん、どうしたの?
なんか嫌な事でもあったん?」
「…帰って来んの遅い……。」
「は…」
蘭の顔を見て言った。蘭は何故か顔を赤らめながらニヤニヤといつもの気味悪い笑顔でこちらを見ていた。蘭が俺の頭を動物を触るかの様に撫でてくる。蘭が人を撫でることなんて、竜胆以外滅多にない。セフレの女ですら、多分無いやつの方が多いだろう。俺は滅多にしない蘭の撫でで少々優越感に浸った。
「三途、なんか悪い物でも食べた?
てか、ゼリー食べてないじゃん。」
竜胆が先程蘭が買ってきたゼリーが置いてある机を見てそう言った。当たり前だ。あれから俺は一回も起きてないのだから、食べる隙なんてなかった。まあ、それを言っても多分何も変わらないと思うから竜胆の返答はしない。
「とりあえず、仕事帰りに食べもん買ってきたからそれ食べて。」
「あー、三途。
ゼリーとお粥どっちが良い?
お粥、俺が作るからあんま美味しくないかもだけど。」
「……お粥
竜胆の作ったお粥食べてぇ…。 」
「え、は…??」
竜胆は驚いた表情で止まっていた。蘭も同じ様に驚きながら俺を見てくる。なんだ?と思い、俺は首を少しだけ傾げた。何か変な事でも言っただろうか。竜胆はその場でしゃがみ、長い溜息を吐いた。
「……作ってくる。」
「あ、うん、いってら竜胆。」
キッチンに向かおうとしてる時、竜胆の後ろ姿を見ていた。よく見ると耳が赤い。気のせいか?俺は気づかない程度に手を竜胆に振った。しかし、どうやら蘭はその行動を見ていたらしい。まあ、見られて別に減る事は何もないから大丈夫だが。蘭はそれを見て何かを我慢する様に喋り始めた。
「春ちゃーん、あんま可愛い事しないでよ。 」
「なに、が…?」
「はー、無意識かよ。
罪深いNo.2様だな。」
罪深いのは当たり前だろ。てか、お前らも同じだろ。人殺してんだから。俺が蘭を見詰めていると、なんでもないよと言い頭を一回撫でてきた。竜胆がお粥を作り終わるまで俺らは待っていた。何で待っていたか。それは蘭のケアだ。蘭が俺の事を一旦離そうとしていたが、俺はまだ離れたくはなかった。まだ心が満タンになっていない。蘭は喉をゴクッと鳴らし、仕方なく俺を離さずにいてくれた。そのままで待っているのは蘭にとって退屈なのか、途中から頭を撫でたり、頬を触ってきたりとスキンシップをし始めた。それに心地よくなり、頬を触れられた手に擦り寄る様な行動をとった。蘭は可愛い〜と楽しそうな顔で続けて触る。蘭の匂いはそれほど嫌いではない。むしろ好きまである。確かに香水は付いてはいるが、メイクの濃い女の様なキツイ香水ではない。吸ってて心地の良い、中毒性のある匂いだ。…多分俺が言うと変な誤解が起きそうだな。しかし、それくらいに蘭の匂いは居心地が良い。ストレス解消にもなっていると思う。竜胆は蘭と匂いが違うが、同じ様に好きな匂いだ。後で竜胆にも抱きつこう。そう思いながら、蘭とスキンシップをしていると、竜胆がお粥を作り終えたらしい。竜胆がお粥を持って此方に持ってくる。
「一人で食べれるか?」
「ん……。」
俺は渡されたスプーンを持ち、お粥を掬う。ふーっと息で冷まそうとすると、その反動で喉を痛め咳を出した。
「あー、大丈夫か?」
「ケホッ…大丈夫。」
「俺が食べさせてやるよ。」
「えー、ずるい竜胆ー。」
それを無視して竜胆は俺が持っていたスプーンを取り、代わりに息をかけて冷ましてくれた。充分に冷めた頃、竜胆はあーん、と言い俺にお粥を食べさせようとする。俺は抵抗などせずに口を開けた。お粥が口の中に入ってくる。モグモグと小さく咀嚼をすると竜胆が美味しい?と聞いてくる。俺はそれに答えるかのように首を縦にウンウンと振った。お粥は好きか嫌いかで言うとまあ普通だ。しかし、竜胆が作ったお粥はいつも食べているお粥よりも数倍美味しく感じた。
「もう一口…」
「ん、わかった。」
そう言い、竜胆は再び食べさせてくる。美味しい。あまり食欲はなかったものの、これは普通に食べられた。思わず笑みを浮かべてしまう。竜胆はそれに気付いたのか、ふっと微笑んできた。
俺はもう満腹になり、口元に来たスプーンが来ても、口を開けずに首を左右に振った。それを理解したのか竜胆はスプーンを俺から離し、片付けようとする。離れていくと察知し、思わず竜胆の袖を弱い力で握ってしまった。竜胆はそんな弱い力も感知し、振り向いて俺の頭を撫でる。
「すぐに戻るから。」
「ん…。」
「その代わり、俺が相手してやんよ。」
ルンルンとした蘭が自分を指さしてそう言った。いつもなら「いらねぇ」と辛辣な事を言うが、今はそんな気力もない。俺は蘭をジッと見詰め、蘭の頬に触ろうと手を頑張って伸ばす。蘭はなぁに?と言いながら俺に近づき、膝を折って目線を合わせてくれた。俺は蘭の頬をやっとの思いで触り、スリスリと撫でる。蘭もそんな行動に驚いているのか目を丸くしていた。
「あったかい…。」
「あー、なにそれ、ガチで可愛いからやめてくんない?♡」
蘭はいつも綺麗にセットしている髪をクシャッと乱し、何か我慢している顔で俺を見てきた。俺はそんな事気にせず、やりたい事をやる。触っている手の上に蘭の手を重ねられた。
そんな戯れをしていると、竜胆が帰ってきた。今の状況を見て、なにしてんの?と言わんばかりに先ほどの蘭みたく目を丸くして立っていた。
「今日の春ちゃんガチで可愛いよね。」
「コイツが俺らの上司って思うと尚更な。」
竜胆は俺が寝ているベッドに腰掛けて、そう言ってきた。可愛い?春ちゃんって誰だ。あ、もしかして俺の事?働かない頭でそう考えていると、竜胆がそろそろ寝る?と提案してきた。
「…やだ。」
「なんで?
もう眠くない?」
「眠いけど」
「けど?」
「また、お前らがいなくなったら…いやだ。」
「「は?」」
竜胆と蘭はその場で口をポカーンと開けて固まっていた。何かまずい事でも言ったのかと、気まずさで顔を逸らす。流石に我儘すぎたか。そう思っていると、二人とも長い溜息を吐いた。
「…春ちゃんって可愛い製造マシーンだよ。」
「…???」
「本当に。
どんだけ俺らの心を遊べば気が済まんだよ。」
「…?????」
訳が分からずに俺は二人の言葉を聞いていた。それを察知し、蘭は頭を撫でてくる。
「離れたりしないよ。
今日の分の仕事はもう終わったからね。」
「ずっとお前の側にいるから安心して眠って。」
二人は微笑みながらそう言った。俺は急に恥ずかしくなったのか、布団をバッと顔が隠れるまでかけて、寝始めた。顔が熱いのは風邪のせいとそう思いきかせる。蘭と竜胆は無理に布団を退かさず、布団越しで俺の耳元に囁いてきた。
「「おやすみ、春ちゃん」」
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いやもうほんとに好きが止まらないですわ…😇😇😇😇😇😇ぽわぽわ春ちゃんほんとに愛してるし、春ちゃんに釘付けな灰谷ブラザーズもばちきゃわでございますッッッッッッッッッ💥💥💥💥💥💥💥💥💥
……好き♡♡♡ めっちゃいい〜 春様弱ってるの 可愛過ぎ♡♡♡( *´꒳`*) ホラー系かなっと思ったけど 全然ホラーじゃなかった笑 春様純粋? 最高でした߹ㅁ߹) ♡ 頑張ってください❣️